日産は「日本」を諦めていなかった…新スカイライン・エルグランド・新コンパクトで挑む「母国再建」の可能性

「55万台」の重さ——数字が語る険しい現実

 ここで、浮かれてばかりもいられない数字を直視しておく必要がある。

 日産が今回打ち出した日本での目標は、2030年度までに55万台販売。一見するとスケールの大きな目標だが、実態はどうか。前身となる経営計画「The Arc」(2024年策定)では、2026年度に60万台という目標を掲げていた。今回の55万台は、その目標を縮小・先送りした形だ。

 さらに肝心の足元の実績がある。国内販売台数(軽自動車含む)は、2024年が約47万5000台、2025年は約40万3000台まで落ち込んでいる。つまり55万台とは、2025年実績比で約14万7000台増、およそ36%増という挑戦目標なのである。

 この数字を文脈に置くと、今回の発表の本質が見えてくる。これは余裕が戻ったからの”ご褒美的な日本重視”ではない。リストラ(2026年度末までに工場を17から10へ、従業員を2万人削減)のさなかにあっても、それでも日本を捨てず、むしろ再建の土台に日本を使う——という、切迫した意思表示なのだ。

 日本市場の現状について、日産自動車CPO(チーフパフォーマンスオフィサー)ギョーム・カルティエ氏は「日産の販売は昨年夏に底を打ち、回復兆しを見せはじめ、2026年3月はマーケットシェア約11%になった」と語る。日本を「ベンチマーク」、「ホームマーケット」と語る日産が、国内市場重視に回帰することを、自動車専門メディアとしては強く応援したい。

「日産らしさ」の再定義が、日本から始まる

 長期ビジョンのキーワードをあらためて並べると、AIドライブ、電動化、若年層、スカイライン、新型キックス&新型ムラーノ、そして新型コンパクトカー……これらはすべて「日本で本気の勝負する」という構造と言える。

 日産がいま再定義しようとしているのは、”技術の日産”というかつてのブランド像だけではないはずだ。日本の道で走り、日本の家族に選ばれ、日本の若者に憧れられるクルマをつくれるか——その問いに向き合うことが、グローバルでの再建の一歩になる。

「国内55万台」という数字は、いまの日産にとって簡単な数字ではない。だが今回の発表が示したのは、日産が日本市場を「やさしく扱う場所」から「本気でぶつかる場所」へと変えた、ということだ。その覚悟のほどは、新型スカイラインのティザー映像に確かに滲み出ていた。

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