■悪循環に陥る販売状況 ホンダの戦略にも問題あり
現在のステップワゴンの売れ行きは、新型コロナウイルスの影響を受けているから差し引いて考える必要があるが、2019年度の月販平均は3935台だ。7004台のセレナ、6829台のヴォクシーに比べると50~60%にとどまる。
販売低迷の一番の理由は、特徴が分かりにくいことだ。安全装備など商品力を強化しながら、背の高いボディに地味なフロントマスクを組み合わせるなど曖昧さが目立つ。2020年1月の改良では、自慢のわくわくゲートを装着しない仕様もレスオプションで用意したが、非装着にしても価格は下がらない。
現行ステップワゴンの走行安定性、乗り心地、荷室のアレンジ、ハイブリッドの燃費や動力性能は、ライバル車と比べても優れているが、デザインやグレード構成などで損をしている。
低迷するふたつ目の理由は、今のホンダ車のイメージと売り方が、小さなクルマに偏っていることだ。2019年度に国内で売られたホンダ車の36%がN-BOXで占められた。軽自動車合計の国内販売比率は52%に達する。さらに軽自動車+フィット+フリードでは75%だ。
つまりステップワゴン、オデッセイ、ヴェゼル、シビックなどの小型/普通車は、すべて残りの25%に含まれてしまう。2011年末に「先代(初代)N-BOX」が登場して売れ行きを伸ばし、そのあとに「N-WGN」や「N-ONE」も加わり、2017年にN-BOXが現行型にフルモデルチェンジすると、軽自動車の比率が一層高まった。そのいっぽうでフリードも堅調に売れ続け、フィットもフルモデルチェンジしたことで「ホンダは小さなクルマのメーカー」というイメージが定着している。
最近のステップワゴンが迷走気味なことは確かだが、機能は低くない。軽自動車に偏りすぎた商品開発がホンダのイメージを変えて、ステップワゴンの売れ行きも下げてしまった。今のステップワゴンは、標準ボディの改良をしていないので、販売力を補うにはフリードやフィットのようなSUV風のクロスターが必要だ。
今のうちにステップワゴンに効果的なテコ入れを行わないと、先に挙げた軽自動車+フィット+フリードの国内販売比率が80%を超えてしまう。そうなるとホンダは、ミドルサイズとLサイズモデルの国内投入にますます消極的になり、売れ行きを下げる悪循環に陥る。
販売会社も低価格車ばかりになれば疲弊する。ホンダは国内市場を守るためにも、その象徴とされるステップワゴンの販売回復に全力を注ぐべきだ。
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