普通の救急車と見た目も違う? 日本初の日産製EV救急車が稼働
赤と白に配色されたおなじみのカラーリングでも、見慣れない顔つき? 日産の新型EV救急車が、ついに稼働開始!!
皆さんはこのメイン写真のクルマに見覚えがあるだろうか? そう、これが日産の新型EV救急車なのだという。
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日産は5月18日、「東京消防庁池袋消防署へ納車した日本初のゼロ・エミッション(EV)救急車が稼働を開始した」と発表。
日本初となるEVの救急車――というだけでも、充分物珍しいのだが、そもそも写真のクルマにはどうも馴染みがない。
日産製の救急車としては、NV350キャラバンをベースとした「パラメディック」がおなじみの存在。
同車は、NV350キャラバンのバンに設定されるスーパーロングボディ/ワイド幅/ハイルーフ仕様がベースで、2018年11月に20年ぶりのフルモデルチェンジを敢行したことでもささやかな話題となった。
この他、街で見かける救急車としては、トヨタがハイエースをベースに開発した「ハイメディック」などもポピュラーな存在だろう。
新型EV救急車の気になる中身と見慣れない理由は?
一方で、本題の新型EV救急車は全く見慣れない顔つき。それもそのはずで、こちらは日本未発売の大型商用バン「NV400」をベースに開発されたものだからだ。
今回の導入は、東京都が推進する「ゼロエミッション東京」の取り組みの一環で、東京消防局に初のゼロ・エミッション(EV)救急車を導入。池袋消防署のデイタイム救急隊で運用される予定という。
当然、日本で売っている車種ではないので、法規対応などが必要になってくるが、こちらはパラメディックで豊富な実績をもつ「オートワークス京都」が救急架装も含めて手がけているという。
車両のポイントとしては、まずはEVであることがあげられる。33kWhと8kWhの2つのリチウムイオンバッテリーを搭載し、日産は「電装機器やエアコンをより長時間作動させることが可能で、停電時や災害時には移動電源としても活用できる」としている。
日産はEVの救急車を採用するメリットについて、(患者や隊員の身体的な負担軽減や精密医療器具を搭載する観点から)静粛性が高く、振動の少ないことをあげているが、たしかに既存の救急車における振動はやや厳しいものがある。
筆者自身、実際に救急車に乗った際、思った以上の揺れの大きさに驚いた経験がある。
その意味では、救急車のEV化は量産車以上のメリットがあるはず。より安静に患者を搬送できることは、精神的な面を含めて大きな利点だと思う。
ちなみに、モーターの最高出力は55kW、最大トルクが220Nmというスペック。航続距離は1充電で最大130km(JC08モード)だという。
ただ、やはり気になるのは、ベースがなぜ日本で売っていないNV400なのか? ということだ。この点、日産自動車広報部にさっそく聞いてみた。
正真正銘世界に一つ! NV400を採用した背景とは
日本では売っていないNV400を採用した背景には、こんな理由があるという。
「ヨーロッパの救急車の多くは、NV400をベースとしております。NV400には、さまざまなボディタイプとサイズ(長さ/高さ)があるため、適切な寸法と低床など、選択する理由が多くありました」(日産自動車広報部)
たしかに、欧州日産の公式ページを見ると、全長・全高とも3タイプほどのパターンがあり、豊富なバリエーションを有していることがわかる。
今回の救急車仕様として公開されたサイズは、全長5548mm、全幅2070mm、全高 2499mmというもので、これがちょうど3つのうち中間の仕様になる。
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ちなみに現時点での納入台数は「1台のみ」(日産自動車広報部)とのことで、今後の導入に関しては、「今後も東京消防庁と連携して、EV救急車の性能を評価しつつ、さらなる決定を行う」(同)という。
実際に使用して得られたフィードバック次第で、さらなる導入を行う可能性は充分にあるだろう。
実は欧州で販売されているNV400の量産車、ディーゼルエンジンのみでEVはない。これについても質問すると、「NV400は元々、欧州で救急車のベースになっているので、その知見を活かしつつ架装し、EVに仕立て上げています」(同)との回答が。
そう、この新型EV救急車は、日本初となるEVの救急車というだけでなく、量産車にないワンオフの特別仕様という意味でも、正真正銘、世界に一台しかない救急車なのだ。
東京の街でもし出会ったら、他の救急車と同じく、“命を守る働くクルマ”に敬意を払いつつ、この珍しい救急車を眺めてほしい。
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