『1日70件超の落下物捌く』 首都高 パトロール隊に潜入!! 【道路を支えるプロの仕事】

事故より多い落下物。なかには特大案件も!?

 その事故や故障車はどれくらいの頻度で発生しているものなのか。首都高によれば、平成28年度の首都高全体のデータは次のとおり。

・事故/1万973件(1日平均/約30件)

・故障車/1万377件(1日平均/約28件)

・落下物/2万6519件(1日平均/約73件)

 じつは、事故・故障車以上に最も多いのが落下物=落とし物なのだ。

 落下物は、原則パトロール隊員などが拾って基地に持ち帰り、一定期間保管される。

こちらのバンパーと思しき物体も道の“落とし物”。落下物は可燃物、不燃物、事故時の回収物など分類されて保管される
 
こちらのバンパーと思しき物体も道の“落とし物”。落下物は可燃物、不燃物、事故時の回収物など分類されて保管される  

 写真のとおり“落とし物”は多種多様。毛布や何かの梱包材といったものもあれば、脚立や車のバンパー(事故時に回収したものも含まれる)など、それが道路上に落ちていると考えると、身の毛がよだつモノも多い。

 なかでも、堀さんがこれまでで最も驚いたのは、体操競技などで使う「エバーマット」だという。

 「大きな落下物があると聞いて。『1mくらいの物だろう』と考えていましたが、普通車よりも大きいであろう緑色の“物体”が、右車線を完全に塞いでいました」

 「よく見ると、走り高跳びなどで使う分厚いエバーマットでした。非常駐車帯まで運ぶのも大変でしたが、固定ロープが切れて、トラックの荷台から落ち、反対車線から中央分離帯を乗り越えて落下したと後で判明した時はさらに驚きましたね」

こんな巨大なマットが道路上に落ちていたら……。落下物回収はなかなかの大仕事だ。<br>写真/shutterstock.com  
こんな巨大なマットが道路上に落ちていたら……。落下物回収はなかなかの大仕事だ。
写真/shutterstock.com  

『車線を抑える』落下物回収法

 こうしてパトロール隊の2人に同行取材を続けていると無線が入る。

 「高速箱崎より高速212。……一件、落下物の回収お願いします」

 箱崎交通管制室からの無線だ。どうやら落下物は毛布だとのこと。現場へ急行だ。

 時刻は15時を過ぎた頃。冒頭で紹介したボタンを操作し、赤灯を点灯。サイレンを鳴らしながらの緊急走行で、外部のスピーカーを使い「落下物の回収をおこないます。

 少しの間、ご協力をお願いします」といったアナウンスをしながら、一般の通行車両に避けてもらいつつ、現場へ向かう。

 そして、現場付近へ到着。助手席の隊員は、このように誘導棒でお客様車両が落下物に接触しないよう『先頭固定』をおこないながら、到着したらセーフティコーンを立てるなどして現場で作業を行う。

写真左のように後続の一般車両を誘導。すると、右のように車線を抑えることができる。このようにして落下物回収の現場で作業をおこなうが、周囲の流れが速い時などは、車線を抑えるのも難しく、経験と技量が求められる
 
写真左のように後続の一般車両を誘導。すると、右のように車線を抑えることができる。このようにして落下物回収の現場で作業をおこなうが、周囲の流れが速い時などは、車線を抑えるのも難しく、経験と技量が求められる  

 車線を封鎖することを『抑える』というのだが、何車線を抑えるのかは、その事象や場所によってまちまち。

 今回は、現場に到着すると落下物はなく“空振り”に終わってしまったが、こうした手順で安全を確保しながら迅速に落下物を回収するのが、パトロール隊の腕の見せどころだ。

こちらは定点監視中の様子。事故時や落下物発生時も、こうしたセーフティコーンなどを使い、現場を安全に規制する
 
こちらは定点監視中の様子。事故時や落下物発生時も、こうしたセーフティコーンなどを使い、現場を安全に規制する  

【一問一答】なぜランクル? 緊急時の最高速は? 首都パトの疑問

 最後に、首都高パトロール隊=通称“首都パト”にまつわる気になる疑問に、一問一答形式で回答!

Q1.パトロール車両はなぜランドクルーザーなのですか?

A1.車両総重量4t程度の車両を、道路の起伏に関わらず、余裕を持って牽引できるパワーを備え、長年の使用に耐えうるフレーム構造であることに加え、自転車程度の大きな落下物でも、荷室に積載可能なスペースを備えているため。

……回答にもあるとおり、ランドクルーザーは本当に壊れにくく、信頼性が高いというのが、1車種独占採用となっている理由といえそうだ。

Q2.パトロール車両は、緊急時に法定速度を超える速度で運転することもあるのですか?

A2.あります。ただし、その場合でも緊急車両の法定速度(80km/h)を超えて走行することはありません。

……例えば、60km/h制限の道路であれは、緊急時に80km/hまで速度を上げることが可能。80km/h制限の区間では、パトロール車両といえども、一般車両以上の速度は出せない。

Q3.夜勤のパトロールはどのようなスケジュールで勤務をおこなっていますか?

A3.日勤は午前・午後で2回の定期パトロールを行いますが、夜勤は3回おこないます。勤務時間は16:30から翌9:30まで。パトロールが終了すると、『有事待機』となり、その間に事故などの書類作成をおこないます。

Q4.首都高全体では、どのくらいのパトロール車両が走っているのですか?

A4.首都高は、東京西局、東京東局、神奈川管理局の3つの管轄エリアに分かれています。日勤時間帯では、首都高全体で33台、夜勤時には25台のパトロール車両が稼働し、24時間の総走行距離を合計すると、約1万1000km余りになります。今回取材を行った東京東局では、日勤時11台、夜勤時8台のパトロール車両が走行しています。

Q5.パトロール車両の通行料金は無料なのですか? また、どのように料金所を通過していますか?

A5.現在は業務用ETCカードで、通行しています。ETCがなかった頃は、業務用通行券などを使い、通行していました。


 普段、ドライブ中に見かける首都高パトロール隊は、影に日なたに、道路の安全を支えている“仕事人”たちなのだ。

 ……ちなみに、首都高パトロールでは交通業務員を募集中(2017年6月現在)。

 応募にあたっては、『高卒以上、32歳迄』、『応募時点で運転記録証明書における行政処分の前歴が0回かつ交通違反累積点数が2点以内の方』などの条件がある。

 パトロール隊になりたいと思った方は、ぜひ応募してみてはいかが?

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

不死鳥のごとく蘇る! トヨタS-FR開発計画は再開していた! ドリキンこそレジェンドの土屋圭市さんがトヨタのネオクラシックを一気試乗! GWをより楽しく過ごす情報も満載なベストカー5月26日号、堂々発売中!