『1日70件超の落下物捌く』 首都高 パトロール隊に潜入!! 【道路を支えるプロの仕事】

『1日70件超の落下物捌く』 首都高 パトロール隊に潜入!! 【道路を支えるプロの仕事】

 日々我々が走っている道路には、その裏で安全を支えている仕事が多くある。東京の大都会を駆け巡る首都高を支える仕事人に迫る本企画。第一弾は首都高パトロール隊員を密着取材。

文/写真:WEB編集部


巡回車ランドクルーザーに秘密あり

 晴れ渡った5月下旬のある日、筆者は東京都足立区にある首都高の『加平基地』に赴いた。

 この『加平基地』、簡単に言うと首都高三郷線の加平出入口の真横にある。第一印象は「こんな所にパトロール隊の発着基地があるのか」という感じだ。

 「おはようございます!」。いかにも体育会系といった感じで挨拶をしてくれたのは、首都高パトロール株式会社の交通業務員、堀将広さん(副班長)、小川俊介さんのふたりだ。

 そんなふたりの“パトロール業務”に欠かせないのが、こちらの黄色いランドクルーザー。「この車両を首都高で見た」という方も多いはず。

 かつては一部に日産サファリなども使用されたというが、現在は全パトロール車両にランドクルーザーが採用されているという。その秘部は車内にあった。

左上から時計回りに、多様な情報を扱うモニター。事故時などに後方車両に注意を促す起伏式表示装置。サイレン、赤色灯などを操作するインパネ周りのスイッチ
 
左上から時計回りに、多様な情報を扱うモニター。事故時などに後方車両に注意を促す起伏式表示装置。サイレン、赤色灯などを操作するインパネ周りのスイッチ  

 写真(左上)のように、助手席側の足もとには一台のモニターが設置されている。

 「交通管制室からの無線で、事故や故障車、落下物などの連絡を受け、一般車両へ車線情報や落下物回収中などの細かな情報を選択できるようになっています」

 モニターから目線を右上に動かすと、インパネ上部には何やら見慣れぬボタン類が! 

 こちらは、緊急時に使うサイレンや灯火類を操作するボタンの数々(写真左下)。落下物や事故が発生した際は、これらのボタン類で赤色灯を点灯させ、サイレンを鳴らしながら緊急走行で現場へ直行するのだ。

 そして、事故発生時などはルーフ上に起伏式表示装置を立ち上げ、後方車両に注意喚起(写真右)。ちなみにこの車両は、最新式のLEDタイプを搭載している。

パトロール隊の1日はこうなっている!!

 さて、パトロール隊はどんなスケジュールで1日の業務を行っているのか? この【表】がそのスケジュールである。

【表】首都高パトロール隊の1日
 
【表】首都高パトロール隊の1日  

 このスケジュールは午前中のものだが、午後も基本的な巡回ルートは同じ。

 午前の勤務終了(11:30)後、昼食等を挟み、13:30から午後の勤務が開始。大きなトラブルがなければ16:30にはふたたび基地に戻る。

 日勤勤務はパトロール前後の朝礼、夕礼、車両点検、引き継ぎ等も含めて8:45〜17:15まで。夜勤は16:30〜9:30までで、日勤・夜勤をシフトで回していく。

 基本的には昼夜それぞれこうした勤務時間で動くが、そういかない時もあるのだという。

『大雪で12時間パトロール』安全を担う仕事の難しさ

 「一番大変だったのは、数年前に大雪が降った日でしたね。この時は事故や立ち往生車両が多発して、パトロールを終了できず、12時間のパトロールになってしまいました」

 副班長を務める堀さんは、最も大変だった勤務を振り返る。事故が発生すると、パトロールを終えて基地に戻った後も書類作成などに追われ、退社は22時を過ぎることもある。

 決まった時間になれば交代のパトロール隊員が待機している。それでも大規模な事故や交通障害があれば、「なかなか引き継げない状況の時もある」というのが、安全を担う仕事ゆえの難しさだ。

パトロール中の一コマ。助手席の隊員は、後方確認・合図などを担当するほか、PAなどでの停車時は、車を降りて誘導をおこなう
 
パトロール中の一コマ。助手席の隊員は、後方確認・合図などを担当するほか、PAなどでの停車時は、車を降りて誘導をおこなう  

 そんな堀さんはなぜ、首都高パトロール隊という仕事を選んだのだろうか?

 「入社してから20年経ちますが……何でしょうね。(助手席の小川さんのほうを見ながら)君、もっといい意見あるだろ!?」

 照れ隠しで後輩に話を向ける堀さんに、「僕ですか!?」と答える入社3年目の小川さん。そんなやりとりに、息のあったチームというか、いい意味での上下関係のような雰囲気を、そこはかとなく感じる。

 その後、入社理由を2人に聞いていくなかで共通していたのは、「事故や故障車などで困っている人の役に立ちたい」との思いだった。

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