樹脂製PPバンパーはなぜ劣化すると白くなる?
バンパーなどクルマの外装部品としてPPは広く採用されている(クルマだけではない、生活用品の多くにPPは素材として用いられている。なにしろプラスチックでは最も生産量が多い素材なのだ)。
特に近年のクロスオーバーSUVブームは、精悍な印象を与えるために黒い外装パーツを多用しているため、PPの素地仕上げの採用を増やすことにもつながっている。
プラスチックに共通する問題として、紫外線によって劣化するという弱点がある、しかもPPはプラスチックの中でも劣化しやすい素材というのは前述した通りだ。
そのため樹脂の中には紫外線吸収剤や酸化防止剤なども添加されているのだが、それでも劣化を完全に食い止めることはできない。
劣化すると表面の分子結合が切れ、細かなクラックが発生してしまう。これが少し大きくなると、光が入り込むようになって反射するために白く見えるようになってくる。これが白化と呼ばれる現象だ。
新車時には黒、もしくは濃いグレーで引き締まった精悍な印象を与える部分が、劣化により白化してしまうと、なんとも締まらない、くたびれた印象になってしまうのである。これはオーナーにとっては何とも残念な部分だろう。
どれくらいで白化するかは、クルマを駐車している環境や使い方によっても左右するが、前述の通り、紫外線吸収剤などが練り込まれているので、3、4年は変化を感じにくい。
また真っ黒よりも若干グレーになっている方が白化が目立ちにくい。白い商用車でPPバンパーがグレーなのは、汚れや劣化を分かりにくくするための対策でもあるのだ。
理屈から言えば、紫外線を浴びた瞬間から劣化が始まるので、新車購入の1年目から劣化は進んでいると表現することはできる。
言い方を変えれば、新車購入後から劣化を防止するメンテナンスをすれば、PP素地仕上げのバンパーでも、長い間美しい状態を保つことができるのだ。
PP素地仕上げの白化を復活させる手段は、いくつもある。そのなかにはバーナーで炙ったり、ヒーターガンで暖めるというものもある。PPは熱可塑性樹脂なので、熱を加えると溶けることを応用したものだ。
しかし、この方法は熱を加え過ぎるとシボが溶けてなくなってしまうため、かなり技術が要求される。失敗してもいいようなクルマで試して練習できるような環境のヒトはいいが、自分のクルマだけで試すのはリスクが高そうだ。
専用ケミカルの汎用保護剤を使って効果を比較
それより今は専用のケミカル剤も揃っている。それらを使うことで、手軽に確実に白化を復活させ、劣化の進行を抑えることができるようだ。という訳で、今回は様々な方法で復活術を試してみた。
まず一番最初に試したのは専用のケミカル品を使う、という方法だ。今回はイエローハットで販売されていた3、4種類の商品のうち、ソフト99の「ブラックパーツワン」という商品をチョイスしてみた。ちなみにソフト99の公式オンラインショップでは1352円。
実験台となったのはホンダの初代CR-V、大ヒットしたクルマでパールホワイトの塗装はまだ傷みを感じさせないほどキレイ。
パワートレインもまったく問題なしという良好なコンディションのクルマだ。しかし、初年度登録から17年も経過しており、さすがにフェンダーアーチやワイパーカウルなどのPP素地部分はかなり白化が進んでしまっている。
まず使用方法の通りに使って効果を見てみることにした。リキッドバインダーを専用クロスに含ませ、白化した部分に塗り込むようにして磨く。
すると白い専用シートにはかなり汚れが付着しており、劣化したPPをある程度除去していることが分かる。
シボの奥までしっかりと塗り込んでやることで仕上がりのムラを防ぐようにする。これだけで白化は解消されて、黒く引き締まった印象になった。
次に専用スポンジを1回分切り離し、ハードクリアコートを含ませてリキッドバインダーで黒くなった部分に塗り込んでいく。
こちらもムラがないように塗り込むのだが、ハードクリアコートは量が少ない(8ml)のでスポンジに一気に含ませるのは躊躇してしまう。
全体の面積を考えて使用量を配分するべきだが、車種によってはバンパー全体など広い面積に塗り込む必要がある。その場合は複数個用意するか、量の多い製品を購入することで対処するしかないようだ。
塗り込んでから乾いたウエスで拭き上げると、黒々艶々とした印象に仕上がった。まるでこの部分だけ新車状態に戻ったように思えるキレイさだ。
しかもこのコーティングは6ヵ月間効果を持続するというから、効果が切れる前にまたコーティングしてやれば、このキレイさはずっと保たれることになる。
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