かつて安いグレードのクルマには無塗装の樹脂製バンパーが装着されていたが、今ではタフさを演出するために欠かせないSUVのアイテムとして、ジムニーやスバルXV、マツダCX-5、CX-30といったSUVのほか、フィットクロスターやタフトといったクロスオーバーSUV風のクルマにも積極的に採用されるようになってきた。
さて、この黒い樹脂製バンパーには問題点もある。そう、経年変化して白くなってしまうのだ。
そこでなぜ樹脂製バンパーやフェンダーアーチは白くなるのか? また白くなってしまった場合にどうすれば復活するのか?
モータージャーナリストの高根英幸氏が実際にケミカル剤を使って、テストしてみた。さて、白くなった樹脂製フェンダーは見事復活したのか?
文/高根英幸
写真/ベストカーWeb編集部 高根英幸 トヨタ ダイハツ
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無塗装の樹脂製PP製バンパーが採用されてきた理由
無塗装の樹脂製バンパーは、かつてのような安いグレードに採用されるよりも、今流行しているクロスオーバーSUVに多く採用されている。
無塗装の樹脂製のバンパーやフェンダーアーチ、サイドガーニッシュを装着することで、オフロード車が持つ無骨さやワイルド感を出すために装着されているのだ。塗装バンパーに比べて傷がついても目立たないし、再塗装する必要もない。しかも価格が安い。
マツダCX-5やCX-30、スバルアウトバックやXV、ボルボXC、ジムニーといったSUVから、クロスオーバーSUVのフリードクロスターやフィットクロスター、アクアクロスオーバー、さらにハスラーやタフトまで、無塗装パーツが装着されているのだ。
クルマのバンパーにPP(ポリプロピレン)が使われるようになったのは、トヨタがAE86/AE85型カローラレビン、スプリンタートレノをデビューさせた1980年代半ばからだ。
クルマのバンパーが進化し始めたのは北米市場での安全基準として5マイルバンパー(5マイル=約8km/hまでの衝突時はバンパーだけで衝撃を吸収できるモノ)が導入された1970年代半ばから。
最初は鉄製のバンパーをスプリングを介してマウントすることで衝撃吸収性を高めていたが、その分ボディからバンパーが出っ張ることになり、なんともカッコ悪かった。
1980年代に入って発泡ウレタン製のバンパーエレメントをPU(ポリウレタン)製のバンパーカバーで覆ったウレタンバンパーが登場する。
これはまだ造形に限界があったのだが、当時は角張ったデザインが流行っていたので、それほど問題にはならなかった。
そのうち造形技術も向上し、滑らかで複雑な形状も可能になる頃、バンパーカバーをボディカラーと同色に塗装したカラードバンパーが登場する。これは高級車の象徴の1つでもあり、憧れの装備の一つだった。
だがウレタンバンパーは構造が複雑でコストがかかるうえに、ウレタンスポンジが結構な重量があった。
そこで1980年代半ばに登場したのがPP製のバンパーだったのだ。PPは粘り強く丈夫な素材なので、それ自体をバンパーにできる。軽くて成形性に優れ、しかも素材の単価も安いため、クルマへの採用も急速に進んだ。その代表的な部品がバンパーなのである。
ハチロク(初代)が軽くて良いクルマに仕上がったのも、エンジンが軽量になっただけでなく、ボディ剛性を高めるために鋼板をしっかりと使いながらも(先代のTE71型はペラペラに薄かった)、バンパーをPPにすることなどで軽量化を図れたことも大きかった。
しかしPPにも弱点はあって、素材としての表面張力が弱いため、接着剤の使用や表面に塗装をするのが難しい。
接着剤は専用のモノが開発されているし、専用のプライマーなどを使って塗装もされているが、当然コストがかかる。
そこで基本的にPP製は黒やグレーの素材色をそのまま使い、表面にシボ(細かい凹凸)をつけることで無塗装のままでも全体の質感を損なわないよう工夫されているのだ。
もう一つの弱点は劣化しやすい、ということだ。分子構造的に結合が切れやすく、紫外線や高温により分子結合が壊れて、目には見えないほど微細なクラックが発生してしまう。
そのまま放っておくとクラックが大きくなって全体として脆くなってしまうので、部品としての寿命は他の樹脂より短命になってしまう傾向があるのは否めない。
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