販売店に聞く今後の三菱販売戦略
このあたりを三菱の販売店ではどのように考えているのか、問い合わせると以下のような返答だった。
「パジェロミニを使うお客様は今でも少なくないが、メーカーから復活させる話は聞いていない。当分の間、三菱の軽自動車は、eKクロスとeKクロススペースが柱になる。この2車種は、パジェロミニのような本格的な悪路走行には向かないが、フロントマスクはダイナミックシールドのデザインでSUVに含められる」
軽自動車は無理でも、コンパクトサイズのSUVは登場しないのか、という点も尋ねた。「コンパクトSUVのRVRは(発売が2010年だから)古くなったが、先ごろ改良を実施したから当分の間はフルモデルチェンジしない。
ミドルサイズのエクリプスクロスは、2020年10月頃に受注を一度打ち切った後、マイナーチェンジを行ってPHEV(充電可能なハイブリッド)を加える。その代わりクリーンディーゼルターボを廃止する可能性もある。
アウトランダーも2020年の終盤から2021年に掛けて、現行型の生産を終える。この後、次期型にフルモデルチェンジする」。
三菱の「2020-2021中期経営計画」によると、2020年度中(2021年3月まで)にエクリプスクロスにPHEVを加え、2021年度中(2022年3月まで)にアウトランダーを次期型へフルモデルチェンジする。
2022年度(2023年3月まで)には、新型アウトランダーPHEVも投入する予定だ。このようにエクリプスクロスとアウトランダーの刷新は明らかだが、コンパクトなRVRは不明で、パジェロミニの復活はプランに入っていないらしい。
しかしスズキハスラーやダイハツタフトに相当する実用性とSUV感覚を兼ね備える軽自動車として、eKクロスとeKクロススペースは用意した。
堅調に売れているから当面はこのラインナップで十分だろうが、三菱が往年の存在感を取り戻したいなら、老舗のメーカーとしてSUVに一層の力を入れる必要がある。
そこまで考えると、eKクロスとeKクロススペースだけでは弱い。またエクリプスクロスとアウトランダーは、ボディサイズが重複している。ホイールベースは、RVRまで含めて全車が同じ数値だ。
三菱はどう軽自動車を販売していくべきか
今のクルマの価格が全般的に高まった状況も考えると、三菱としては、価格を200万円以下に抑えたジムニーとライズに相当する車種が必要だ。それが新しいパジェロミニとRVRになる。
まず新しいパジェロミニを軽自動車のイメージリーダーに据えて、eKクロスとeKクロススペースは、実用性を高めた売れ筋路線に位置付ける。そうなればパジェロミニの車名も「ハイパークロス」などに変えると良い。
軽自動車よりも少し大きなコンパクトSUVのイメージリーダーは、新型RVRだ。スズキソリオのOEM車となるデリカD:2にも、SUV風の仕様を加えて(デリカを名乗るなら本来SUV風は不可欠だ)、新型RVRと併せてコンパクトSUVの足場を固める。
このように軽自動車とコンパクトにそれぞれSUVを2車種ずつ設定すると、国内の販売戦略としてはバッチリだ。
軽自動車サイズのSUVを企画した場合、日産と合弁で立ち上げたNMKVが開発を受け持つから、必然的に日産ブランドも用意する。
軽自動車が新車販売されるクルマの40%近くを占める今、三菱と日産の両方で開発と販売を協力すれば、商品として成立するだろう。
ただし、以前のパジェロミニのように、軽自動車のサイズで、後輪駆動ベースの4WDを開発することは難しい。
今では軽自動車専用の後輪駆動プラットフォームを開発するのは、コストを考えると吊り合わないからだ。海外モデルにも、軽自動車に使える小さな後輪駆動プラットフォームはない。
デリカD:2やミニキャブバン(スズキエブリイのOEM車)の供給を受ける絡みで、スズキジムニーのプラットフォームと駆動系、あるいはエンジンまで含んで利用する方法もあるが、これではジムニーの着せ替え商品になってしまう。
現実的なのは、eKシリーズやデイズ&ルークスと同じ前輪駆動のプラットフォームを使った新しい軽自動車SUVの開発だ。
1998年にスズキが発売したKeiのような5ドアハッチバックで、少しサイズの大きなタイヤを装着することにより、最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)を180mm前後に拡大する。
そのいっぽうで全高を1550mm以下に抑えれば、立体駐車場を使いやすい。なおかつeKクロスに比べて全高が約100mm下がるため、走行安定性と乗り心地のバランスも向上させやすい。
今はハスラーやタフトのようなSUVスタイルの軽自動車が人気だから、背の高さに応じて選べる3車種を用意すると、「クロスシリーズ」として販売促進も図りやすい。
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