マツダが海外専売車として北米とオセアニアで販売する3列シートSUV「CX-9」の2021年モデルがアメリカで発表され、9月末からデリバリーが開始される。
当記事ではCX-9のポジションや成り立ち、2021年モデルでの変更点に加え、アメリカ市場ではCX-9との競合車が多い3列シートのラージSUVを紹介していく。
文:永田恵一/写真:MAZDA、TOYOTA
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■CX-9のポジションと成り立ち

日本では馴染みの薄いCX-9だが、実は現行型は2代目モデル。2007年に初代CX-9が登場した際、マツダには日本でレクサスRXになる前の2代目ハリアーをターゲットにした、CX-7というSUVがあった。
初代CX-9は、アテンザなどが採用していたプラットホームを使ったCX-7を大幅に拡大して3列シートの7人乗りSUVとしたモデルだった。
2016年登場の2代目CX-9もコンセプトは初代モデルに近いが、エクステリアなどはより3列目やラゲッジスペースの広さを重視した方向となった。
CX-9は、現在のマツダ6などが使うプラットホームをボディサイズの拡大や重量増に対応した各部を強化したものというのがザックリとした成り立ち。
パワートレーンは2.5L直噴直4ターボエンジン(レギュラーガソリン使用時/227馬力&42.8kgm、ハイオクガソリン使用時/250馬力&44.2kgm)+6速ATを搭載、駆動方式はFFと4WDいうものだ。
また、現在は日本で販売されるマツダ6やCX-5、CX-8にも搭載されるこのエンジンは、3.5L級V6の後継としてCX-9で初搭載されたため、CX-9の登場時はこの点が日本でも若干話題になった。

3列シートSUVということで気になるCX-9のシート配列はグレードによって異なるところもあるが、2-3(ベンチシート)-2の7人乗りと2-2(独立したキャプテンシート)-2の6人乗りで、最上級グレードは2列目がキャプテンシートで中央に固定されたアームレスト&収納が付く。
シート配列に関しては日本で販売されるCX-8と共通だ。
なお日本における3列シートSUVに対する注目を高める大きなきっかけとなったCX-8は、エクステリアが似ているのと全幅がCX-5と同じ1840mmということもあり「CX-5の拡大版」と思われがちだ。
しかし、実際にはCX-8はCX-9のプラットホームを使い(ホイールベースも同じ2930mm)、ボディサイズを日本向けに縮小したという成り立ちで、その意味では思っている以上に贅沢なクルマといえる。
■最新の2021年モデルはグリルデザインも一新

CX-9の2021年モデルはフロントグリルを一新。2017年登場の現行CX-5あたりから採用され始め現在のマツダ車に浸透したメッシュ部分に三角錐をかたどった精緻なパターンのものになった。
いっぽう、これ以外の変更点は比較的小規模で、
・ナビなどを表示するマツダコネクトのモニターを9インチから10.25インチに拡大
・スマホを使い、車外から自分のCX-9の監視や操作が可能となる「マイMazdaアプリ」に対応
・「カーボンエディション」を追加。エクステリアではポリメタルグレーのボディカラー、ブラックアウトされたドアミラー、グリル、20インチホイールを纏い、インテリアではレッドの革シート、パドルシフトなどが付く
というのが主なものだ。
アメリカでのCX-9の価格は3万3960ドル(約359万3000円)~4万6605ドル(約493万1000円)となる。
■日本における最上級SUV「CX-8」どう違う?

CX-9は、全体的に見ればCX-8に対して、半車格くらいのグレードアップといったところで、具体的には以下の5つが主なポイントだろう。
・上級グレードではローズウッドや削り出しのアルミパネルの採用といったインテリアの高級感向上
・ボディサイズ拡大による室内幅、3列目の前後方向、ラゲッジスペースの広さ
・エンジンラインナップは、CX-8が2.5LガソリンのNA/ターボ、2.2Lディーゼルターボの3つなのに対し、CX-9は2.5Lガソリンターボのみ
・タイヤサイズが17インチと19インチのCX-8に対し、CX-9は1インチアップの18インチと20インチ
・ボディサイズ拡大などもありCX-9の車重は2.5Lガソリンターボの最上級グレード同士だと、CX-8の約100kgプラスとなる1990kg
といったことが挙げられる。
■CX-9のアメリカでのライバルSUVは?

「3万ドル台前半から4万ドル台前半の価格帯が中心で、ボディサイズが全長5m級×全幅2m級の乗用車ベースかつ3列シートを持つラージSUV」というスペックがCX-9のライバル車となるのだが、アメリカでこのジャンルは日本におけるミドルSUVのように車種が多い。
国産ではトヨタのハイランダーや日産 パスファインダー、ホンダ パイロット、スバル アセントなどが該当。
ハイランダーは、かつて日本で販売されたこともあるクルーガーの現代版で、RAV4を拡大したようなモデル。3.5L V6エンジンに加え、2.5Lハイブリッドも設定している。
アセントは、スバル新世代のSGPプラットホームを使い、エンジンは2.4L直噴水平対向ターボを搭載する海外専売SUVだ。
輸入車ではシボレー トラバース、フォード エクスプローラー、VW アトラス(パサートをベースにしたラージ3列シートSUV。エンジンは2Lターボと3.6L・V6)などが競合。
また、韓国勢の現代 パリセードと起亜 テルライドも該当。現代と起亜はプジョーとシトロエンのような関係なので、テルライドとパリセードは共通する部分が多いが、テルライドはSUVらしいワイルドなキャラクターを持つ。
この関係はハリアーとRAV4にも似ている。
ライバル車が多いなかでのCX-9のアドバンテージは質感の高いインテリア、つまり最近のマツダ車が目指している方向、部分ということだろうか。
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CX-9が日本に導入される可能性はCX-8があることもあり、ゼロに近いだろう。しかし、マツダはミニバンから撤退したという事情もあるにせよ、CX-9を日本向けとしたCX-8をラインナップしている。
これは大変立派なことで、新鮮さがあったのも後押しして、登場からもうすぐ3年となる現在も堅調に売れているのもよく分かる。
それだけに現在3列シート車がないスバルは難しいところもあるにせよ、ミニバン代わりにもなるアセントの日本導入を考えてもいいのではないだろうか。