広くて快適ということは日本車の売れる要因であり続けています。これはある意味日本のクルマ界の不文律と言ってもいいでしょう。スーパーハイトワゴン軽自動車がウケているのはその典型と言えます。
しかし、これまでの日本車には広くて快適であり、なかには高級という要素が加わっても販売面で苦戦したクルマがあります。まさに日本車界の不文律が通用しなかったクルマともいえるでしょう。
今回取り上げるモデルに共通するのは、新たなジャンルへのチャレンジ精神にあふれていること、まじめさという点だろう。
せっかくの意気込みも結実はしなかったが、ユーザーのことを心底考えたクルマは今の時代に欲しい、という思いを込めて紹介していく。
写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA
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トヨタアバロン
販売期間:1994~2000年(初代)
北米で販売するフラッグシップセダンとして誕生したアバロンを1995年からアメリカから輸入するかたちで日本でも販売。
全長4845×全幅1785×全高1435mmというクラウンに匹敵する大型セダンで、最大のセールスポイントは2050mmという室内長にあった。
ほぼ同じサイズのクラウン(10代目)の室内長1990mmを凌駕し、セルシオ(2代目)の2095mmに匹敵する室内スペースを誇った。
クラウン、セルシオがFRなのに対しアバロンはFFだったため、センタートンネルがないぶん足下がすっきりとしていて、当時のトヨタのセダンで最も快適なリアシートを実現していた。
が、アバロンがデビューした当時はFRセダンではクラウン、マークIIの人気が高かったうえに、FFプレミアムセダンのウィンダムがあったため、広いというだけでアバロンを購入するユーザーは限られていた。
同じFFセダンのウィンダムとアバロンの明暗を分けたのがデザインで、シャープで質感の高いウィンダムに対しアバロンのデザインは地味だった。またアバロンの走りはスポーティとは言えず、大味な旦那仕様だったのも販売苦戦した理由のひとつだろう。
そのアバロンは2000年にフルモデルチェンジして、日本ではプロナードと車名を変更したが、販売は好転せず、2004年に日本での販売を終了した。
いっぽう北米では人気が高く、2018年に5代目がデビューし、昔のアバロンが嘘のように派手なデザインが与えられている。
トヨタラウム
販売期間:1997~2003年(初代)、2003~2011年(2代目)
ラウムは初代、2代目と販売されたが、ここでは2代目について考察する。
2代目ラウムは初代の『人に優しいコンパクトカー』というコンセプトをさらに徹底して、クルマに初めてユニバーサルデザインを採用した画期的モデルだった。
両側スライドドアを採用し、特に助手席側はセンターピラーレスの左右非対称ボディで開口部を広くして乗降性を高め、リアシートの居住スペースもコンパクトカーとは思えないほど広かった。
また、サイドウィンドウの下端を低くすることでサイド視界は良好だったし、全高が1550mmを切る1535mm(FF)だったので、立体駐車場も楽々と利用できた。
メーターは視認性に優れていて、スイッチ類も大きくデザインされていて、配列を含めて非常に使いやすいものだった。
日本車史上ラウムほど、ユーザーフレンドリーでまじめなクルマはないだろう。
使い勝手のよさだけでは売れない、というのはトヨタもわかっていたと思うが、デザインを含め実直でまじめさを貫いた姿勢は評価できる。ラウムを2台にわたり販売したのは、トップメーカーのトヨタの意地でもあり、トヨタだからこそ商品化でき。
SUVなど見た目の派手さはあるが、高齢ドライバーには乗り降りが困難なケースも出てくるので、ラウムのようなコンセプトのクルマが今後見直されるかも。
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