今や冬場の必需品でとなっているスタッドレスタイヤ。ウィンターシーズンに向けて、新品を購入した人、以前購入したものをキャリーオーバーで使う人などさまざまだろう。
降雪地域などの場合は、前もってスタッドレスタイヤに交換するだろうが、非降雪地域、特に都市部などでは、雪が降ってからスタッドレスタイヤに交換するケースが多い。
サマータイヤでは慣らし運転が常識となっているが、スタッドレスタイヤも慣らし運転は必要なのか?
スタッドレスタイヤはサマータイヤよりもトレッド面が柔らかいなどデリケートな扱いが必要になるが、慣らし運転の有無で性能が変わるといったことがあるのだろうか?
スタッドレスタイヤの慣らし運転は必要なのかについて、タイヤのスペシャリストである斎藤聡氏が、自らの経験談を交えながら考察する。
文/斎藤聡、写真/TOYOTA、平野学、池之平昌信、中里慎一郎、Adobe Stock、ベストカー編集部
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ホイールとタイヤを馴染ませる
スタッドレスタイヤも慣らし運転が必要なのか? と聞かれれば、結論から言うと、2つの理由で慣らしは必要です。
その理由について説明していきましょう。
ひとつ目の理由は、ホイールとタイヤをなじませるためです。
これはスタッドレスタイヤに限ったことではありませんが、新たにホイールにタイヤを組む時、タイヤとホイールが噛み合うビード部にビードクリームといわれるものを塗って、タイヤのホイールへの組み込みをスムーズにしています。
このビードクリームは、一般には石鹸水のような成分が主流で、油脂類ではありませんが、タイヤにホイールを組んだばかりだと、強いブレーキや強い加速でタイヤがホイールの上を滑って(ちょっと大げさですが)組付け位置がずれてしまうことがあります。
これにはいろいろな理由があって、使うタイヤクリームの成分や、ホイールの精度、タイヤとホイールの相性などにもよりますが、いずれにしてもホイールのリム部とタイヤのビード部の噛み合った部分の水分がなくなるまで、なるべく強い力をかけないほうがいいのです。
ハンドルから伝わってくる振動がサイン
リムの上をタイヤが回ってしまうと、せっかく取ったホイールバランスが台無しになってしまい、振動も出てきてしまいます。
ちなみにホイールバランスが狂った時の振動は、80km/hくらいで走行しているときにピークになります。
50km/hくらいではあまり気にならないことが多いのですが、速度を上げていくにしたがってハンドルから”ぶるぶる”といった振動が感じられるようになります。
振動の大きさは、ホイールバランスが狂っているタイヤの位置やバランスのずれ量(重さ)によって異なります。
前輪の左右どちらかのタイヤバランスが狂ってしまったときは、ハンドルに直結しているので割とはっきりと”ぶるぶる”といった振動が出ます。
リアタイヤの場合はボディを振動が伝わってくるので、振動がちょっと小さめなことが多いです。
前述のとおり、ホイールバランスが狂っているときの振動は80km/hくらいでピークになり、120km/hくらいで小さくなります。
50km/hくらいから振動が明確に出ていたり、120km/hを超えても振動が収まらない場合は、別の理由で振動が出ていることが考えられるので、しっかした点検が必要です。