2020年に登場した話題の新車を従来モデルからの進化度で比較! トヨタ ヤリスと同様、国産コンパクトの雄として君臨するホンダ 新型フィットの評価は?
フィットはコンパクトカーの代表車種だ。最近のホンダでは軽自動車のN-BOXが好調に売れて、フィットは押され気味だが、商品力は充分に高い。2020年2月に新型へフルモデルチェンジされたので、改めて先代型からの進化度を考えたい。
【画像ギャラリー】新旧でまるで違う!? 新型フィットと旧型を写真で徹底比較!
文/渡辺陽一郎、写真:編集部、HONDA
居住性は同等ながら視界の良さは大きく改善
新型フィットのボディサイズは先代型とほぼ同じだが、外観はかなり変わった。先代型はサイドウインドウの下端を後ろに向けて持ち上げ、スポーティな躍動感を演出したが、現行型は水平基調だから雰囲気は大人しい。
その替わり現行型は視界を大幅に向上させた。運転席に座ると、インパネの上面が平らで前方が見やすい。左右のピラー(柱)形状も工夫され、斜め前方の視界も良い。
さらにサイドウインドウの下端が後方まで水平に伸びているから、側方や斜め後ろ、真後ろの視界も優れている。先代型やほかの車種に比べて周囲が見やすく、視界は数ある日本車の中でも最高水準だ。視界の良さは、安全性と運転のしやすさを向上させる。
内装も変わった。インパネの上下幅が薄型になり、スッキリとシンプルに仕上げた。好みの分かれるところだが、先代型に比べると馴染みやすい。
居住空間の広さは先代型と同等だが、全高を立体駐車場が使いやすい高さに抑えたコンパクトカーでは、最大級のスペースを備える。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先には握りコブシ2つ半の余裕を持たせた。ミドルサイズセダン並みの広さだ。
ただし、後席側のドアは、開口部の上端を先代型に比べて10mm下げた。そのために乗降時には、頭を少し下げなければならない。乗降性は現行型になって退化した。
荷室の広さは先代型と同等だが、燃料タンクを前席の下に設置するから床が低い。荷物の収納がしやすく、ボディサイズの割に、積載容量にも余裕がある。
一新されたハイブリッドはモーター主体の走りに進化
メカニズムでは、ハイブリッドシステムをe:HEVに刷新した。オデッセイやインサイトに使われるタイプと基本的に同じで、エンジンは主に発電機を作動させ、駆動はモーターが担当する。従って通常の走行では、エンジンは速度の増減や負荷に左右されにくく、常に高効率な回転域を使える。
効率を追求したことで余剰な電気が生じた時は、駆動用電池に蓄えて、エンジンを停止させた状態で走る距離を伸ばす。そうすれば燃料消費量を抑えられる。高速道路などの巡航では、エンジンがホイールを直接駆動する場合もある。これも効率を高める秘訣で、ノートなどのe-POWERには採用されていない機能だ。
e:HEVはモーター駆動が基本だから、加速が滑らかでノイズは小さい。モーターは瞬発力が強いため、アクセル操作に対する車両の動きは機敏な印象だ。一般的なガソリンエンジンに置き換えると、2L以上の余裕を感じる。
また、フィットのe:HEVでは、アクセルペダルを深く踏み込んだ時は、エンジンも同期して回転を高める。
前述の通りモーター駆動だから、発電用エンジンの回転数を走行状態に合わせる必要はないが(そのために高効率も追求できる)、状況によってはドライバーに違和感を与えてしまう。そこでアクセルペダルを深く踏むと、エンジン回転数を高める制御も採用した。自然な感覚で運転できる。
先代型のネガだった乗り心地もソフトに
走行安定性と乗り心地の向上にも注目したい。プラットフォームは先代型と共通だが、ボディやサスペンションの取り付け剛性を高めた。
最も大きく変わったのは、大きめの段差を乗り越えた時だ。カーブを曲がっている最中に段差を乗り越えると、先代型では突き上げるようなショックが生じた。ボディが瞬間的に跳ねるため、進路も乱された。
現行型ではこういった不快な挙動を抑えている。危険を避けるため、下り坂のカーブでブレーキを作動させた時も、先代型に比べて不安定になりにくい。
乗り心地はグレードと装着されるタイヤで異なる。指定空気圧が前輪:240kPa、後輪:230kPaに高まる低燃費指向のグレードは少し硬いが、SUV風のクロスターは大幅に快適になった。タイヤサイズを185/60R16とした効果もあり、路面からのデコボコを柔軟に吸収する。
装備では衝突被害軽減ブレーキと運転支援機能のホンダセンシングを刷新した。先代型のセンサーは、単眼カメラとミリ波レーダーを併用したが、現行型では視野の広い単眼カメラのみだ。高速画像処理チップを使い、歩行者や自転車を含めて対象物を正確に測定する。
正式には公表されていないが、ホンダでは「右左折時に直進車や歩行者を検知して、衝突被害軽減ブレーキを作動させる機能も備わる」という。車両の前後に各4個(合計8個)の超音波センサーも備わり、誤発進抑制機能も前後両方向で作動する。
【総合評価】新型フィットの進化度は?
以上のように現行フィットは、先代型に比べると、視界、ハイブリッドのe:HEV、走行安定性、乗り心地、安全装備まで機能を幅広く進化させた。
しかも価格は、1.3Lノーマルエンジンを搭載する「ホーム」が171万8200円、「e:HEVホーム」は206万8000円だ。機能の充実も考えると、先代型と比べてほとんど値上げされていない。現行型は先代型よりも割安と受け取られる。
そして、フィットはヤリスやノートに比べて後席と荷室が広く、シートアレンジも多彩だ。価格は割安に抑えたので、ライバル車と比べても買い得感が強い。従って進化度数も大きくなった。
◆現行型を100点とした場合の新型の進化度:140点