再復活した新型インサイトはプリウス以上の出来?
2回目の復活で3代目モデルとなったインサイトは、北米をメインターゲットとしたシビックベースのハイブリッド専用ミドルセダンというポジションとなった。
ハイブリッドシステムは、先代アコードで登場した、エンジンは発電を中心におこない、流れの速い幹線道路以上の速度域ではエンジンとタイヤをクラッチで直結して燃費低下を抑える「e:HEV」。2モーターのシリーズハイブリッドで、1.5Lガソリンエンジンを組みわせたものだ。
現行インサイトは、2020年5月に上級グレードの「EX」へ「プライムスタイル」というバリエーション追加を中心としたマイナーチェンジを行い、現在に至る。
ターゲットとなる現行プリウスと比べても、燃費はカタログ燃費通り少々劣るものの(それでも常時リッター20km超は確実なので、大きな問題ではないだろう)、1.5Lエンジンながらプリウスよりモーターの存在感が強く、動力性能や静粛性は優勢だ。
また、ボディサイズが現行プリウスに対し大きく、ヘッドクリアランスが充分確保されていることから、リアシートは快適で、乗り心地もしなやかかつ良好。クルマ自体は現行プリウスと比べてもそれなりのアドバンテージを備えている。
■クルマは良いのになぜインサイトは売れない?
【1】1800mmオーバーの全幅が敬遠されている?
現行プリウスの全幅が1760mmなのに対し、現行インサイトは1820mmと大きい。この点が問題にならない人も多いとは思う。
しかし、全幅1850mmまでのパレット式駐車場にクルマを停めているような人だと(筆者もその1人だ)、数値だけではないにせよ全幅が1820mmになると駐車の際のプレッシャーは小さくなく、このことで現行インサイトを敬遠する人もいるかもしれない。
【2】価格の高さ
現行インサイト不振の最大の理由はやはり価格の高さだろう。
現行インサイトはベーシックなLXグレードでもカーナビ&ETC2.0、自動ブレーキ+運転支援システムのホンダセンシング、斜め後方を監視するブランドスポットモニター(以下BSM)が標準装備と、装備内容は非常に充実しているが、価格は335万5000円である。
現行インサイトLXに装備内容が近い現行プリウスは上級のAグレード(291万円)で、カーナビとETC2.0 を加えて装備内容を揃えても315万円というところだ。
さらに現行プリウスのAグレードには約36万円からのメーカーオプションでテスラやプリウスPHVのような縦長の大型モニターを加えるという選択肢もあり、それでも現行インサイトLXより安い。
さらに現行プリウスには標準的なSグレードにボディカラーの選択肢が制限されるものの、カタログモデルのSグレードにはオプション設定のないBSMなどが装備されるSセーフティプラスⅡ(275万5000円)という特別仕様車があり、この特別仕様車にカーナビとETC2.0 を加えると295万円程度である。
同じ車格かつ大きなアドバンテージもなければ、ほとんどの人が現行インサイトではなく現行プリウスを当然だ。また車格が若干下でリアシートが狭いため直接的なライバル車とはならないにせよ、プリウスの特別仕様車より10万円ほど安いカローラハイブリッドという選択肢もある。
さらに2020年5月のマイナーチェンジも、マイナーチェンジというには内容が薄かった挙句、マイナーチェンジを期にしたプロモーション活動もなく、これだけ負の要素を重なれば現行インサイトが売れないというのも無理はない。
現行インサイトは幸い内容が悪くないだけに、定価を妥当なものにすれば浮上のチャンスはあると思う。
しかし、ホンダのラインナップを見るとシビックの5ドアハッチバックがカーナビなしで294万8000円、昨年絶版となったシビックセダンもカーナビなしで276万1000円と、ホンダのラインナップだけで見れば現行インサイトの価格は妥当である。
そのため現行インサイトを妥当な価格にすると、465万円のアコードを含めたホンダの中での価格の整合性がおかしくなるという問題が起きそうだ。
つまりホンダがここ3年ほどで出した300万円級以上のモデルは抜本的な価格の見直しやラインナップの再構築が必要ということなのではないだろうか。
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