「自動運転」とは何か? 【自律自動運転の未来 第2回】


■実際にはレベル2でも「自動運転」だと思っている状況

 ここまで話を整理すると、レベル1~レベル2までは運転支援、レベル3以上が自動運転となったわけですが、世間ではレベル2までの技術であっても「自動運転である」と思い違いをされている方が相当数おられます。

2019年、日産スカイラインに搭載された「プロパイロット2.0」。世界最先端技術のひとつではあるが、これも「レベル2」であり、国土交通省の規定によると「自動運転技術」とはいえない

 筆者はここ10年以上、自動運転技術や先進安全技術を紹介する講演会での講師を拝命しつつ、全国の高等学校において自動運転をテーマした課外授業を担当しています。 

 その経験からすると、運転経験の長く、運転操作に自信があるドライバーほど、運転支援技術を自動運転技術であると誤解される傾向が強いようです。たとえばレベル1に相当するアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)機能がついているから自動運転車だ、といった具合です。

 具体的に、ACC機能の物理的な限界点を考えてみます。一般的にACCのシステムは、車載センサーであるミリ波レーダーや光学式カメラから得られる限られた認識範囲からの情報をもとに前走車への追従走行を行なっています。よって、隣車線からの割り込みなど突発的な事象には十分対応できない場合があります。現時点、ACCの使用が高速道路や自動車専用道路でのみ許されている理由は、歩行者や自転車などの急な飛び出しがないからです。

 確かに、自動運転技術は運転支援技術の精度が高まることで実現することから、誤解を招いてしまうのかもしれません。

 しかし、運転支援技術と自動運転技術の間には、求められる車載センサーの精度やシステムの冗長性(≒複数経路による確実な実行が期待できる能力)に簡単には超えられない、とても高いハードルがあります。

 大まかにいえば、レベル3ではレベル2の能力の10~100倍の精度や能力が求められ、このことはWP29(自動車基準調和世界フォーラム)の枠組みでも定められているのです。

 こうした技術への正しい理解は、ベテランドライバーよりはむしろ、これから交通社会に羽ばたいていく高等学校の生徒さんのほうが柔軟です。こちらから技術のできること/できないことを動画や表組みを交えてしっかり伝えると素直に受け止めてくれます。

■完全自動運転はいつ実現するの?

 ところで、自動化レベルの定義付けではレベル5の段階でもっとも高度な自動走行ができると示されています。そうなると気になるのが、「いつ、レベル5が実現するのか?」。

 最初に結論ですが、すでにレベル4以上の技術を実装した自動車は存在しますので、その意味では実現しているといえます。ただしそこには、研究段階のプロトタイプという限定条件がつきます。

 運転操作のすべてをシステムが行なうレベル5は、技術単体でみれば1980年代から存在しています。2000年代に入ると完成車として日/米/欧の各自動車メーカーから発表され、現在はサプライヤー企業やベンチャー企業も参画し、テストコースだけでなく公道での実証走行も頻繁に行なわれています。

 筆者は2015年にはじめてレベル4の技術を公道で体感(システムによる運転での同乗試乗)しました。同乗試乗車であるメルセデス・ベンツの自律型自動運転リサーチカー「F 015 Luxury in Motion」は、(米)サンフランシスコ市内を走る自動車や路面電車、自転車や歩行者との混合交通を見事にやってのけたのです。同年、メルセデス・ベンツ傘下Freightliner Trucksの大型トラック「Inspiration Truck」では、レベル3~4の技術を公道で体験しています。

メルセデスベンツが2015年に米国の国際家電見本市(CES)で世で初めて披露した字度運転車両「F 015 Luxury in Motion」。2030年のモビリティ社会を想定して開発された
車内にはいちおう運転席はあるが、ハンズオフ&アイズオフが可能。フロントガラスもすべてモニターであり(カメラで撮影した画面を投影)、外からは見えない

 さらに2018年には、フォルクスワーゲンが開発した「SEDRIC」(セルフ・ドライビング・カーの略)でレベル5の技術を搭載したプロトタイプにも同乗試乗を行ないました。この頃、トヨタや日産、ホンダ、BMWやアウディ、GMなどもレベル4以上のプロトタイプを次々に発表しています。
(2021年3月4日、ホンダは国土交通省より自動運行装置として型式指定を取得した自動運転レベル3:条件付自動運転車(限定領域)に適合する先進技術「Honda SENSING Elite」を搭載したレジェンドを発表(販売計画は100台限定)。高速道路渋滞時など一定の条件下で、システムがドライバーに代わって運転操作を行うことが可能となる。この技術と車両についても、本稿で順次紹介していきます)

2021年3月4日、ホンダは「レベル3」に相当する自動運転技術「Honda SENSING Elite」を搭載したレジェンドを発表、限定100台で発売開始した。近々本稿で紹介します

 これらの経験を通じて感じたことは、公道でレベル4以上の技術を使いこなすルールづくりの必要性でした。日本では道路交通法や道路運送車両法などにはじまる法律の改正、さらには自動運転を行なう車両との既存車両とのコミュニケーションが課題として挙げられます。

次ページは : ■「自動運転車両」と「人」と「非自動運転車両」との意思疎通

最新号

ベストカー最新号

【新型プリウス デザイン判明!!】 EVスポーツで「セリカ」復活|ベストカー6月10日号

集中BIG特集「ホットハッチ世界大戦」。カラー14ページでド~ンと!  季節は初夏。「ホット」なハッチで熱く走ろう!実用性と走りの楽しさを兼ね備えたクルマ、ホットハッチ。マルチな性能だっていかんなく発揮します。そんなホットハッチを取り上げる…

カタログ