「自動運転」とは何か? 【自律自動運転の未来 第2回】

■完全自動運転はいつ実現するの?

 ところで、自動化レベルの定義付けではレベル5の段階でもっとも高度な自動走行ができると示されています。そうなると気になるのが、「いつ、レベル5が実現するのか?」。

 最初に結論ですが、すでにレベル4以上の技術を実装した自動車は存在しますので、その意味では実現しているといえます。ただしそこには、研究段階のプロトタイプという限定条件がつきます。

 運転操作のすべてをシステムが行なうレベル5は、技術単体でみれば1980年代から存在しています。2000年代に入ると完成車として日/米/欧の各自動車メーカーから発表され、現在はサプライヤー企業やベンチャー企業も参画し、テストコースだけでなく公道での実証走行も頻繁に行なわれています。

 筆者は2015年にはじめてレベル4の技術を公道で体感(システムによる運転での同乗試乗)しました。同乗試乗車であるメルセデス・ベンツの自律型自動運転リサーチカー「F 015 Luxury in Motion」は、(米)サンフランシスコ市内を走る自動車や路面電車、自転車や歩行者との混合交通を見事にやってのけたのです。同年、メルセデス・ベンツ傘下Freightliner Trucksの大型トラック「Inspiration Truck」では、レベル3~4の技術を公道で体験しています。

メルセデスベンツが2015年に米国の国際家電見本市(CES)で世で初めて披露した字度運転車両「F 015 Luxury in Motion」。2030年のモビリティ社会を想定して開発された
メルセデスベンツが2015年に米国の国際家電見本市(CES)で世で初めて披露した字度運転車両「F 015 Luxury in Motion」。2030年のモビリティ社会を想定して開発された
車内にはいちおう運転席はあるが、ハンズオフ&アイズオフが可能。フロントガラスもすべてモニターであり(カメラで撮影した画面を投影)、外からは見えない
車内にはいちおう運転席はあるが、ハンズオフ&アイズオフが可能。フロントガラスもすべてモニターであり(カメラで撮影した画面を投影)、外からは見えない

 さらに2018年には、フォルクスワーゲンが開発した「SEDRIC」(セルフ・ドライビング・カーの略)でレベル5の技術を搭載したプロトタイプにも同乗試乗を行ないました。この頃、トヨタや日産、ホンダ、BMWやアウディ、GMなどもレベル4以上のプロトタイプを次々に発表しています。
(2021年3月4日、ホンダは国土交通省より自動運行装置として型式指定を取得した自動運転レベル3:条件付自動運転車(限定領域)に適合する先進技術「Honda SENSING Elite」を搭載したレジェンドを発表(販売計画は100台限定)。高速道路渋滞時など一定の条件下で、システムがドライバーに代わって運転操作を行うことが可能となる。この技術と車両についても、本稿で順次紹介していきます)

2021年3月4日、ホンダは「レベル3」に相当する自動運転技術「Honda SENSING Elite」を搭載したレジェンドを発表、限定100台で発売開始した。近々本稿で紹介します
2021年3月4日、ホンダは「レベル3」に相当する自動運転技術「Honda SENSING Elite」を搭載したレジェンドを発表、限定100台で発売開始した。近々本稿で紹介します

 これらの経験を通じて感じたことは、公道でレベル4以上の技術を使いこなすルールづくりの必要性でした。日本では道路交通法や道路運送車両法などにはじまる法律の改正、さらには自動運転を行なう車両との既存車両とのコミュニケーションが課題として挙げられます。

■「自動運転車両」と「人」と「非自動運転車両」との意思疎通

 具体例で考えてみます。狭い道でのすれ違い(離合)シーンに直面した、または信号のない横断歩道を渡ろうとしている歩行者を発見した、こう想像してください。ほとんどのドライバーは、対向車のドライバーや歩行者とのアイコンタクトを通じて意思の疎通を図っているはずです。無意識に行なっている場合もあるでしょう。

 レベル4以上が大多数となる自動運転社会が訪れた場合、対向車のドライバーや歩行者は、自動運転のシステムと意思の疎通を図ることになります。この克服は難題です。仮に、レベル4以上の自動運転車両に同乗者がいたとしても、運転操作のほぼ100%を、緊急時を除いてシステムが行なうため、オーバーライドが行なわれるまでには、やはりシステムが意思の疎通相手となるわけです。

 とはいえ、いつでもどこでも、レベル4以上の車両が機能をONにして走行しているとも限りません。また、仮に20年後にレベル4の技術が法的に認められ、公道走行が可能になったとしても、現状8000万台以上存在する日本の自動車社会にあって、レベル4以上の車両と遭遇する確率はとても低いと想像できます。

 その上で、逆算すれば2021年はレベル3以上の車両とのコミュニケーション方法を考え始める絶好のタイミングです。

 技術は進化を続けます。しかし、使いこなす側の我々には技術レベルの向上と共に、自動運転システムとの共通言語の構築や運用していくためのルール作りに取り組んでいく必要性があるのです。

「もっと便利に、快適に、そして安全に」。

 真の自動運転社会が目指す世界がここにあります。

自動運転技術での「日本」の現在地 【自律自動運転の未来 第1回】

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