「タクシーはその国の顔」とも言われる。日本ではJPNタクシー登場までの約60年間、車名だけで見れば”クラウン”が顔。そのタクシー事情が世界で変わりつつあり、電動化と脱セダンの波が押し寄せている。世界を3つのエリアに分け、レポート!
文/小林敦志
※ベストカー2021年5月10日号より転載
【画像ギャラリー】ニューヨーク、アジア、東南アジアで走るタクシーはコレだ
■ニューヨーク 多数派は今でもセダン
かつては、チェッカー社のタクシー専用セダンも走っていたニューヨーク。やがてGM、フォード、クライスラーなどのアメリカン・フルサイズセダンに取って代わられるようになり、さらに、フォードが最後のアメリカン・フルサイズセダンである、クラウンビクトリアの生産を終了するタイミングで、プリウスが幅を利かすようになった。
ニューヨークタクシー組合では、タクシー車両としての推奨車種をリスト化している。その多くはHEV(ハイブリッド車)となり、プリウス系(含む日本名α)、カムリ、RAV4などのトヨタのほか、日産やフォードなどのハイブリッド車もラインナップされている。そのなかで、現状はカムリがメインとなっている。
バイデン政権は電動車普及を進めるようだが、アメリカではガソリン価格が安めで安定していることもあり、HEVが自家用としてはなかなか売れず、ニューヨークに在庫が流れて、タクシーになっているともいわれている。クルマのタイプはセダンのほか、SUVやミニバンなどボディタイプは多彩なものとなっている。
ほかの全米主要都市ではタクシーの主流はプリウスとなっており(一部カムリ)、セダンは多い。これはニューヨーク市で使ったものが中古として流れているとの話もあるが、電動化は全米レベルでも進んでいるといえよう。
■アジア 中国は中華系メーカー車に一気にシフト
中国では“脱セダン”の前に、EV(純電動車)タクシーの普及により、中華系メーカー車に一気にシフトした。
かつて北京では、北京ヒュンダイ、東風シトロエン、一汽VW(フォルクスワーゲン)、上海では、上海VWなど外資系がメインとなり、中国全土でも上海VWや北京ヒュンダイ車が圧倒的に多かった。
しかし、今では、上海汽車や広州汽車、BYDなど中華系が増え、リチウムイオン電池を脱着して充電する、北京汽車のEVセダンタクシーが華南地区の広州市でも目立つようになっている。深セン市はBYD、広州市は広州汽車など、地元メーカー車と並び普及が進んでいる。
現状もセダンがメインだが、MPV(多目的車)や、ステーションワゴンなどのEVタクシーも走っている。
台湾は’40年までに「販売車両を電動車のみにする」と発表。タクシー車両は、“トヨタウィッシュを世界一愛する地域”とされていた台湾なので、かつてはほぼウィッシュだらけ。台湾でのノックダウン生産が終了すると、さまざまな車種がタクシーとして登場したが、メインはシエンタになろうとしているようだ。ただ、路線バスではすでに中華系BYDのEVバスが台北市内などを走っている。
日本車のタクシーではEV化はなかなか進まないので、この先日本車が排除される可能性も考えられる。
韓国もソウル市内ではEV路線バスが目立っており、EVタクシーも走っている。EV路線バスでは中華系車両が走り出しているようなので、EVタクシーも目立ってくるかもしれない。もともとセダン型がメインで、中華系EVタクシーもセダンメインなので、“脱セダン化”は進まないかもしれない。ヒュンダイがあるのだが、コストの前には中華系に頼らざるを得ないともいわれている。
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