■各トラックメーカーが本気で取り組み中
過去、メルセデス・ベンツの乗用車部門と商用車部門は旧ダイムラーAGグループであったことから、可能な限り車載センサーは同じ種類に統一していた経緯があります。
2019年11月にダイムラーAGグループは分社化され、現在、大型商用車は独立したダイムラー・トラックAGが担っていますが、今でも技術者の行き来は乗用車を担うメルセデス・ベンツAGとの間で行われています。
ところで、スバルの「アイサイト」で知名度が上がり、その有用性から主流センサーのひとつになった2眼式の光学式カメラ(ステレオカメラ)ですが、メルセデス・ベンツの乗用車ではS/E/Cクラスを筆頭に、短/中/長距離用のミリ波レーダーセンサーと組み合わせた「フュージョンコントロール(融合型センシング)方式」として2013年から市場に導入しています。
このフュージョンコントロール方式というセンシングの考え方は、単眼式光学カメラへの変更を受けながら商用車(大型トラック)にも受け継がれました。
欧州地域ではメルセデス・ベンツ「アクトロス」、北米地域ではフレートライナー「カスケディア」、そして日本を含めたアジア地域では三菱ふそう「スーパーグレード」にフュージョンコントロール方式が用いられ、世界初の大型トラックにおける自動化レベル2技術「アクティブ・ドライブ・アシスト」(2019年)として実装されています。
そしてダイムラー・トラックAGでは、これまで培った高度運転支援技術をベースに、2029年までには自動化レベル3を飛び越えて(=レベル3は実装せずに)、自動化レベル4の技術を搭載した大型トラックを世界で販売すると明言しています。
一方、日本の商用車における自動運転技術の開発はどうでしょうか?
■「物を作り、運び、届ける」までの一元管理
国土交通省では2020年6月に道路行政が目指す「持続可能な社会の姿」と「政策の方向性」を発表しました。
ここでの要は自動運転技術を活用した配送業務と、情報化社会ならではの高度な管理業務の連携です。
自動運転技術によるODD(Operational Design Domain/運行設計領域)に、小~大型トラックを活用する物流業ならではの特異性を組み込み、IoT(Internet of Things/物のインターネット化)の促進と、BD(Big Data/量・質ともに多彩な情報)、AI(Artificial Intelligence/人工知能)などから得られる高度な情報を一元化することで、物流業が抱える課題の克服を目指します。
本連載でたびたび紹介してきたODDは、乗用車と商用車で大きく異なります。大型トラックでは走行する道路の過半数が走行速度の高まる高速道路であることから、車両特性を鑑みたゆとりある制御の介入を組み合わせるなど専用の設計思想が求められます。
IoTの促進やBD、AIの活用は、これからの物流業にはなくてはならない領域です。高度な情報化社会においては情報セキュリティの観点が重要視されますが、IoTの促進やBD、AIの活用によってそれらが護られ、同時に「物を作り、運び、届ける」までの一元管理がわかりやすくデータベース化されるため、安全で確実な管理業務にも期待がもてます。
■「トラックの後続無人隊列走行」実現まであと20年
また、こうして誕生する新たな物流は自動運転技術によって下支えされます。
国土交通省では2040年までに日本において実現させたい世界として、まずは高速道路や自動車専用道路などの限定した道路において、自動化レベル4以上の自動運転技術を活用した「トラックの後続無人隊列走行」の構想を示しました。
ここでは先頭車両にのみドライバーが乗車して部分的な自車の運転操作を行います。同時に後続車両とは、高速かつ大容量、そして遅延の極めて少ない5G回線や、ITS専用に設けられた周波数帯の電波(760MHz)を使ったリアルタイム通信が行われます。
各車両に搭載されたミリ波レーダーや光学式カメラなど各種センサーを通じた情報は、先頭車両のドライバーによって監視され、それらが正しく機能していることを条件に、後続車両ではシステムによる運転操作が行われます。
いわば電子的な車両同士の連結(電子けん引システム)により、最終的にこうした隊列走行が実現すれば、ドライバーあたりの純流動量を増やすことができます。
また、長距離輸送を行うドライバー不足の解消にも効果が見込めるため、日本自動車工業会では2025年以降の早期実装を目指し開発を後押ししています。
物流業は安定した経済活動や日々の繁栄にとって欠かせない存在です。いわゆる「人の移動、物の移動、お金の移動」を基本に、これまで多くの人々に支えられ物流業は成り立ってきました。
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