自動運転はトラックと物流業を救えるか? 【自律自動運転の未来 第10回】


■「物を作り、運び、届ける」までの一元管理

 国土交通省では2020年6月に道路行政が目指す「持続可能な社会の姿」と「政策の方向性」を発表しました。

 ここでの要は自動運転技術を活用した配送業務と、情報化社会ならではの高度な管理業務の連携です。

 自動運転技術によるODD(Operational Design Domain/運行設計領域)に、小~大型トラックを活用する物流業ならではの特異性を組み込み、IoT(Internet of Things/物のインターネット化)の促進と、BD(Big Data/量・質ともに多彩な情報)、AI(Artificial Intelligence/人工知能)などから得られる高度な情報を一元化することで、物流業が抱える課題の克服を目指します。

 本連載でたびたび紹介してきたODDは、乗用車と商用車で大きく異なります。大型トラックでは走行する道路の過半数が走行速度の高まる高速道路であることから、車両特性を鑑みたゆとりある制御の介入を組み合わせるなど専用の設計思想が求められます。

 IoTの促進やBD、AIの活用は、これからの物流業にはなくてはならない領域です。高度な情報化社会においては情報セキュリティの観点が重要視されますが、IoTの促進やBD、AIの活用によってそれらが護られ、同時に「物を作り、運び、届ける」までの一元管理がわかりやすくデータベース化されるため、安全で確実な管理業務にも期待がもてます。

■「トラックの後続無人隊列走行」実現まであと20年

 また、こうして誕生する新たな物流は自動運転技術によって下支えされます。

 国土交通省では2040年までに日本において実現させたい世界として、まずは高速道路や自動車専用道路などの限定した道路において、自動化レベル4以上の自動運転技術を活用した「トラックの後続無人隊列走行」の構想を示しました。

 ここでは先頭車両にのみドライバーが乗車して部分的な自車の運転操作を行います。同時に後続車両とは、高速かつ大容量、そして遅延の極めて少ない5G回線や、ITS専用に設けられた周波数帯の電波(760MHz)を使ったリアルタイム通信が行われます。

先頭車両だけドライバーが運転して、後続車両は(先頭車両に追従するかたちで)自動運転化。この仕組みが成立するためには「車車間通信」が重要になる。5Gの普及が後押しする

 各車両に搭載されたミリ波レーダーや光学式カメラなど各種センサーを通じた情報は、先頭車両のドライバーによって監視され、それらが正しく機能していることを条件に、後続車両ではシステムによる運転操作が行われます。

 いわば電子的な車両同士の連結(電子けん引システム)により、最終的にこうした隊列走行が実現すれば、ドライバーあたりの純流動量を増やすことができます。

 また、長距離輸送を行うドライバー不足の解消にも効果が見込めるため、日本自動車工業会では2025年以降の早期実装を目指し開発を後押ししています。

 物流業は安定した経済活動や日々の繁栄にとって欠かせない存在です。いわゆる「人の移動、物の移動、お金の移動」を基本に、これまで多くの人々に支えられ物流業は成り立ってきました。

■ドライバーの不足と高齢化の対策にも

 振り返ってみると2020年は新型コロナウイルスに翻弄され、いまだ終息の兆しはありません。また、感染拡大防止策を受け、我々の生活は一変、経済活動の根幹であるこうした物流業のあり方にも変化が訪れました。その一例が個人向け小口物流における取扱い数の増加です。

 国土交通省「物流政策課」の最新調査によると、2019年と2020年の同時期における宅配便取扱個数は最大で148.0%と大幅な伸びを示しています。これはリモートワークなど在宅率の高まりにより、インターネット経由によるショッピングである「eコマース」の利用率が一気に上昇したことが主な要因です。

 足元では、物流業界を支えるプロフェショナルドライバー不足への対策も不可欠です。

 同じく国土交通省「物流政策課」の最新調査によると、2019年10~12月期では運送業を営む企業の64%が「不足」、もしくは「やや不足」と訴えています。

 2020年1~3月期では46%と一時的な改善がみられましたが、コロナ禍の影響を本格的に受け始めた2020年4月以降は前述したeコマースの増大をきっかけに再びドライバー不足に転じています。

トラックドライバーの不足や高齢化は、(宅配便が大好きな)日本でこそ大きな問題となっている。少なくともドライバーの業務が楽になるような技術が、はやく普及してほしい

 高齢化対策も重要課題です。全産業における就業者の平均年齢は42.2歳ですが、大型トラックドライバーでは47.5歳(+5.3歳)、中小型トラックドライバーでは45.4歳(+3.2歳)と、いずれも高齢化が顕著です。

 長時間労働への対策も求められています。そのひとつが荷役作業における待ち時間の解消です。待ち時間は平均して1時間45分で、2時間以上の待機も物流全体の28.7%を数えます。結果的にトラックドライバーの平均的な業務時間は13時間27分(1時間23分の休憩含む)と長時間にわたります。

 このように、小口物流の増加対策や深刻化するドライバー不足への対応、さらには高齢化対策や長時間労働の解消に加えて、運送業務中に発生する交通事故の削減も物流業界が直面する喫緊の課題です。

 これら諸問題に対して商用車に特化した自動運転技術で抑制を図る……。これこそ日本が目指す物流業の未来です。

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