WRCへの復活の可能性は?
WRC時代の栄光を知る世代としては、SUVではなくロードゴーイングスポーツモデルによるスプリントラリー出場の夢も見たい。活動予算を考えるとかなり難しい選択肢ではあるが、クルマの条件面では来年からハードルがやや低くなる。
トップカテゴリーであるWRカーは、2022年より「ラリー1」と名を変え、ハイブリッドエンジンに変わる。つまり電動化を果たすわけで、その点では三菱の目指す方向と合致する。
また、ベース車両の選択肢も広がり、いわゆるパイプフレームの使用が許されることによってプロトタイプ色が強まり、スケーリング規則の採用によりベース車の形状を大きく変えることもできる。
実際、一時期Mスポーツ・フォードは、コンパクトカーのフィエスタではなく、クロスオーバーのプーマをベース車にすることも検討していたようだ。
つまり、無理やりではあるがエクリプスクロスをベースにすることも不可能ではなく、また、SUVというキーワードからは外れるが、ミラージュをラリー化することはさらに自然にできる。
トヨタのGRヤリスのようなハイパフォーマンスコンパクト4WDが「ミラージュ・エボリューション・RALLIART」として誕生したら、それこそ多くの人がミツビシに対するイメージを一気に改めるだろう。
4WDでこそなかったが、2006年に登場した「コルト・RALLIARTバージョンR」はまさにそのようなクルマだったし、その再来を望む人は自分を含めて少なくない。
ただし、前述のように、活動予算を考えると三菱のWRC復活は、少なくとも現時点ではあまり現実的ではないといえる。
ほかにも、電動車、SUVというキーワードに合致するモータースポーツはある。それは、2021年から始まったEVによるオフロードレースシリーズ「エクストリームE」だ。
いわばフォーミュラEのオフロード版であり、約550馬力を発生するモーターを搭載する、バギータイプのマシンによるレースである。開催場所は世界各国の砂漠、氷河、熱帯雨林、北極圏と、環境問題への配慮が最大のアピールポイント。
また、ルイス・ハミルトン、ジェンソン・バトン、ニコ・ロズベルグといったF1王者たちがオーナーを務める超一流チームが多く参戦し、セバスチャン・ローブやカルロス・サインツがドライバーとして名を連ねる。
世界的に見ても大きな注目を集めるシリーズであり、三菱とRALLIARTが何らかの形で関与すれば素晴らしいプロモーションになるだろう。
ダカールラリーへの参戦は?
最後に、電動車によるオフロードイベントという意味では、ダカールラリーも可能性はゼロではない。2020年12月、アウディは2020年のダカールラリーに、電動ドライブトレインを用いたプロトタイプマシンで出場することを発表。
長年力を入れてきたフォーミュラE参戦を止め、それに代わるプロジェクトであることも大きな注目を集めた。近年はややトピックスの少ないダカールラリーだったが、アウディが電動車で参戦することにより、再び活気を取り戻すに違いない。
そして、もしかつての絶対王者である三菱がRALLIARTの名のもとに復帰してアウディと優勝を争うことになれば、それはブランドと電動化イメージの訴求に関して、最高のプロモーションになるだろう。
現在、ダカールラリーはサウジアラビアの砂漠が舞台であり、中東エリアでの販売促進という意味でも有効なはずだ。
以上のように、夢は果てしなく広がるが、まずはアジアのオフロードラリーでRALLIART復活の礎を固め、それから徐々に活動を広げていくというのが現実的であり、リスクも少ないだろう。新生三菱RALLIARTの活動に期待したい。
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