復活を後押ししたランクル70の再販
2014年、1年限定で復活を果たしたクルマがある。ランドクルーザー70だ。ディーゼルエンジンではなくハイオク仕様のガソリン車、トランスミッションは5速MTのみで、ワゴンタイプとダブルキャブのピックアップトラックを用意した。
この仕様で売れるのだろうかと、筆者を含め、全国の販売店スタッフは疑心暗鬼だっただろう。しかし、ランクル70はよく売れた。特にワゴンだけでなく、ピックアップトラックにも注文が集まっていた点は、大方の予想を覆すことになる。
ランクル70の復活を機に、ピックアップトラックが再注目された。そしてこれは、ハイラックスの復活が現実味を帯びた瞬間でもある。ピックアップトラックの国内需要が、ある程度見通せるようになったのは大きい。
そして2017年にハイラックスは復活した。しかし、復活を待望していた北海道ハイラックスユーザーにとっては、残念な部分も多い。
ハイラックス復活にあたっては、小型ピックアップトラックを新規に開発することはできず、フルサイズピックアップトラックの8代目ハイラックスを、日本の法規に合わせて、導入することとなる。希望のクルマが復活とは、言い切れない状況だ。
しかし、販売は順調に推移した。年間の販売計画は2000台と控えめに見積もられたが、販売初月で2300台の受注となる。トヨタとしてはうれしい誤算だろう。
日本市場でピックアップトラックを販売する価値はあるのか。
復活したハイラックスの購入層は、2004年までのユーザー層とは大きく違う。実際に、6代目以前のハイラックスから、現行型への乗り換えは進んでいない。現行型は全く新しい層のユーザーから支持される存在となった。
2種類あるグレードのうち、約8割の注文が上級グレードに集まる。ユーザーの年齢は20代~30代が中心だ。若者のクルマ離れと騒がれているが、稀有な新型ピックアップトラックに、熱い視線を注いだのは若者だった。
ハイラックスは乗り出し価格で450万円程度であり、若年層の中でも比較的所得が高い層が購入している。新しい価値観を持つと言われる若年層に対して、日本で受け入れ難いと考えられていた、大型ピックアップトラックが意外にも刺さった。
復活から4年が経過した現在でも、購入層は若年層が多く、次いで60代以上の男性に人気があるようだ。ハイラックスは、小さな市場にしっかりとリーチし、ピックアップトラックという異例のカテゴリーで、安定的に販売台数を伸ばしている。
クルマの価値や、所有に対する考え方が変わっていくなかで、これまでの大衆に受け入れられるようなクルマ作りでは、新しいユーザー層を取り込むのは難しい。今までの正解を捨て、狭く深くリーチするクルマも必要となるのだろう。ハイラックスは、現代における、クルマの新たな形を提案した存在となっている。
ハイラックスの復活は、旧ユーザーの声と新ユーザーの新しい価値観に支えられている。ランクル70復活のタイミングも絶妙な後押しをした形だ。
日本唯一のピックアップトラックは、自分だけの小さな市場に支えられながら、今後も独自の価値を追求していくに違いない。
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