優秀な整備士を「下に見る」大きな誤解が招いた歪み
制度の正しい理解や運用はもちろんだが、真っ先に取り組みたいのは、整備士の地位改善だ。
4年制大学卒業の営業マンと、専門学校卒業が多い整備士では、入社時の年齢が違う。整備士は営業マンより年下で、同期とはいえ、年上の営業マンには気を使うだろう。入社時から、整備士は少し弱い立場に置かれてしまう。
また、一昔前の営業マンのなかには、整備士を下に見る人がいた。会社の利益は営業マンが出しているから、営業マンのほうが偉いという無茶苦茶なロジックが通用していたのだ。もちろん、このロジックは誤りであり、整備士は営業マン以上に会社に貢献していると筆者は思う。
「クルマを安心して売ることができるのは、整備してくれる人がいるからだぞ、覚えておけよ」これは、筆者が新人時代に、先輩営業マンから言われた言葉だ。
クルマの営業は、整備士の仕事が丁寧におこなわれているからこそ活きる仕事であり、整備士に活かされているのだと、筆者は教わってきた。
このような理解をする営業マンが増えていれば、今回の問題は、未然に防ぐことができたかもしれない。
整備士の処遇や立場の改善は、10年以上も前から問題視されていたことだ。不正車検という報道は社会に大きな衝撃を与えたが、自動車販売業の業務実態を知っている者からすれば、起こるべくして起こった問題だと納得してしまう面もある。それもどこか悲しいのだが。
不正車検を行った事実は許されない。しかし、当事者たちだけが悪いという結論だけでは、何も変わらないのだ。弱い立場に置かれた者に言葉を飲ませ、車両販売にだけ目を向けて、整備体制がおざなりになった。この結果をメーカー・販売店は認め、改善を図るべきである。
日本の整備士は、世界の中でもトップクラスの技能を持ち、非常に優秀だ。優秀な整備士が、自己防衛のために再び悪事に手を染めるといったことが絶対にないように、業界全体が自分事として問題解決を進めていってほしい。
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