パワフルな船舶で30分の船旅
初島航路は富士急行(富士急マリンリゾート)が運航していて、熱海港からは30分の船旅だ。運賃は大人往復で2640円。さまざまな割引込みのセット券もあるので、初島に渡る目的により検討すると良い。記者が乗船した「イルドバカンス3世号」はコラボ装飾が施され「ピングー号」として運航される。
本船は292総トンで最大速力は18.6ノット。旅客定員868名のフェリー型の高速船だが、フェリーではないので車両航送はできない純粋な客船だ。船舶の総トン数とは質量のことではなく容積のことなので、壁で囲まれた船室が大きいほど総トン数は大きくなる。
また船舶のスピードは「速力」と表現し単位はノットを使用する。1ノットは1時間に1海里を進む速度で、1海里は1852m。よって18.6ノットは時速に換算すると約34.4km/hとなり、ローカル航路の船舶としてはなかなかの俊足だ。
出航したピングー号はカモメが追いかけてくる中で富士山を背に一路、初島を目指す。スマホでもシャッタースピードをマニュアルで早めに切ればデッキからカモメを撮影可能だ。
バス停のはずだったのに!
初島に到着して最初に出迎えてくれるのがウェルカムゲートだということは、あらかじめ情報として知らされていたのだが、何を置いても「バス停」を探さなければならない。ところが、探すも何も船の目の前にバス停ポールが立っており、そこにバス待ちの人がかなり多く並んでいたのですぐにわかった。
よく見ると「熱海行」と書いてある。初島から熱海行きのバスがあるわけがないし、岸壁にバスが乗り入れられるわけがない。しかし「バス停」にはちゃんとダイヤが書かれており、待っている人がいるのだから、ただのモニュメントではない。
しばらく見ていると、我々が下船し終わったピングー号に並んでいる人たちが続々と乗り込んでいく。そう、これは「バス停」ではなく立派に機能している「船停」だった。
バス停だったはずが船停だったので勘違いにより取材終了!というわけにもいかず、初島の自然や海岸や楽しみの食事を取材するために歩き回った。当然ながらコミュニティバスはないので、自分の足だけが唯一の交通機関だ。
トンビに注意!
とにかく釣り客が多く楽しそうだ。ふらっと行っても釣り具一式を貸してくれるお店もあるので海釣り挑戦も可能だ。海岸は波うちが美しく写真でも動画でも楽しめる。
ちなみに島内での「買い食い」は構わないがトンビには注意だ。トンビは身近な鳥だがタカ科の猛禽類なので、何かを食べていると急転直下、突進してきて奪われてしまうのでなかなかスリルがある。
トンビが上空にいればスマホでも撮影可能だが、降下中は速すぎて追えないので無理にズームにせず後でトリミングすればよい。そして港から何件も連なる食堂では海の幸が堪能できる。代表的なのはやはり刺身定食だが、店によっても異なるので歩きながら物色すると良い。
さて、島から離れる時刻が迫ってくるとウェルカムゲート付近に子供たちがたくさん集まっていて、にぎやかだ。熱海港で見送ってくれたピングーがここにも登場し、子供たちが記念撮影を楽しんでいた。しかしちょうど強風が吹き荒れる海象となり、運航できるかどうかも怪しい風速になってきた。
それでも船は出港し、何度かキャビテーション(空転)を起こしながらもフルパワーで横風にならないように針路を取っているようだった。バスの運転も高度な技術が必要だが、船の場合も同様に船長の的確な判断が安全運航の要だと感じた。
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