■アクアは「トヨタらしいクルマ」
で、そのヤリスとアクアはどう違うのか。そこを知るべく両車のスペックや仕様を見比べてみますと、アクアがしっかりとヤリスのネガを潰していることがわかります。プラス50mmのロングホイールベース化による恩恵は前後席間や荷室の長さに現れていますし、後ドア開口部形状は乗降性に大きな違いとして現れます。
逆にいえば、ヤリスは開口面を小さく上縁を短くしてでも走りの質感を高める剛性や空力にこだわったとみることも出来なくはありません。シフトレバーがバイワイヤー式になっている点は賛否が分かれそうですが、売りのひとつであるアドバンストパークがノータッチで完遂できるなどのメリットもあります。
そして1500Wが取り出せるAC電源を標準装備とした点は、トヨタ自動車東日本の発足とともに生産を開始し、東北復興の象徴と位置づけた初代アクアからの意思の継承というトヨタの想い入れを感じるところです。
これらをもってヤリスよりも高い月販目標が掲げられた、言い換えれば日本のコンパクトカーとして作り込まれた新しいアクアは、走ってみればまさに「ザ・トヨタ」でした。スカッと軽い操作系や情報量薄めの操舵感、ふんわり柔らかい乗り心地など弛緩系のドライブフィールです。
■グローバルなヤリスとローカルなアクア
クルマ好きに刺さる要素といえば、電気の出し入れ量マシマシを可能にしたバイポーラ型バッテリーによるモーターアシスト領域の拡大や速度コントロールのしやすさでしょうか。
骨格刷新で本質的な運動性能は初代から大きく格上げしていますが、それを如何に押し出すかという点で、アクアはヤリスと明確な差別化を果たしています。果たしてこれは当初から想定された棲み分けなのか。
開発陣曰く、ヤリスの企画時からアクアの存続は決まっていたとのことでしたから、おそらくローカルモデルであるアクアは、昔からトヨタに親しむ日本のお客さんにしっかりとフォーカスすることを前提としていたのでしょう。
思えばここ数年のトヨタ車は、出てくるクルマの多くがTNGAによってもたらされた伸びしろを運動性能に多く費やしていたような気がします。それはそれでトヨタらしからぬ変化として注目されたものの、いっぽうでクルマ好きには退屈云々と非難されがちなトヨタライド、例えば静かさや乗り心地のよさが気に入っているという多くのトヨタユーザーにとってこの変化は嬉しいものだろうかと、個人的にはちょっと疑問に思うところもありました。
新しいアクアはそこにビシッと明快な答えを示してくれています。プリウスに取って代わらんという国民車の最右翼としての自覚は月販目標台数が物語っていますが、淡々と万の位を売り続け、油断すればヤリス軍団を脅かす存在になり得るのではないでしょうか。
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