クラウンにも新しい戦略が必要
ただ、現時点では新型車効果で売れ行きが好調だが、それが一巡する1年後以降、どのような販売動向になるか注目だ。
セダン市場そのものは冬の時代から脱していないので、新しい商品戦略を講じることが必要になる。
参考になるのはベンツやBMWのような商品ラインアップの充実整備である。ベンツ EクラスやBMW 5シリーズは、クラウンのように4ドアセダン1ボディのラインアップではない。
ベンツ Eクラスは、4ドアセダンの他ステーションワゴン、クーペ、カブリオレなど多くのボディタイプがあり、パワーユニットも1.9、2.0、3.0、4Lなどを搭載し、幅広いユーザーニーズに応えられる、豊富なバリエーションを揃えている。
BMW 5シリーズも4ドアセダン、ツーリング(ステーションワゴン)があり、パワーユニットは2.0、3.0、4.4Lを搭載するワイドバリエーションとなっている。
対するクラウンは、4ドアセダンのみでパワートレインは2.5&3.5ハイブリッド、2Lターボのラインアップであり、4ドアセダンだけでは幅広いユーザーニーズに応えられない。
クーペやステーションワゴンがあれば、若い層へのアピールももっと可能になるといえるだろう。
■販売現場の声は? 首都圏トヨタ店の証言
新型クラウンのできは良く、滑り出しは今のところ好調といえるが、果たしてどこまで続くか不安部分はある。
80%以上に達している代替え母体は大きいが、かつてに比べるとかなり小さくなっている。レクサス、ベンツ、BMW、アウディに流れているケースも多い。
トヨタ店、トヨペット店の一部はレクサス店を事業部として抱えており、新型車が発売になると紹介する。
歴代クラウン(のオーナー)はLS、GS、ISに流れる。こうした場合、レクサスブランドの方がクラウンよりもステータス性が高いので、クラウンが新型車になったからといって、格下のクラウンに戻ることはあまりしないので、その分クラウンの代替え母体は小さくなる。
若返りは本当に必要? クラウンに求められる価値
ここまで遠藤氏のレポートと販売現場の声を中心に書いてきたとおり、クラウンユーザーの若返りはそれほど進んでいないが、それ自体は大きな問題ではない。
クラウンは、日本の社会を反映した高級車だ。日本では年齢とともに所得が上がるのが一般的だが、将来的にみればその傾向は徐々に弱まっていくだろう。さらに、高級車の選択肢も多様化している。
とすれば、クラウンに求められるのは「若返り」ではなく、年齢に限らず経済力を持つユーザーに訴求できる“日本の高級車”であり続けることだ。
そう考えた時に、ベンツやBMWという輸入車や同グループのレクサスにない魅力が、クラウンにあるかどうかが鍵となる。
だからこそ重要なのは、これまでクラウンを乗り継いできたユーザーを如何に繋ぎ止め、他の高級車と比較するようなユーザーを新規に獲得できるかだ。それにはバリエーションの拡充も必要だろう。
受注台数を見ても、新型クラウンが一定の評価を受けていることは間違いないが、需要が一巡した1年後は果たしてどうか?
その売れ行きとそれを踏まえたトヨタの戦略が、クラウンの本当の評価を決めることになるだろう。
【編集部】
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