名車の衰退がSUV人気を呼んだ!? 伝統の国産車が滅びゆく理由

 “普通の人が買える新車”のボリュームゾーンが、およそ200万円台前半から350万円までという価格帯であることは、ここ30年ほど大きく変わっていない。

 かつて、その価格帯にはマークII、スカイライン、レガシィ、オデッセイなど、伝統ある車たちが揃い、ジャンルも個性豊かであった。
 
 しかし、現在この価格帯ではミニバンが大きな勢力を持つのに加えて、C-HRやハリアー、ヴェゼル、CX-5といったSUVの勢いが強烈だ。

 その一方で、前述した伝統ある車たちの衰退が、SUVブームを後押ししていることも事実だろう。では、なぜ伝統ある車は衰退したのか? その背景を探ると、単にSUVがヒットしたから売れなくなったとは言えない事情が見えてくる。

文:永田恵一、写真:編集部


5つの“伝統ある車”が衰退した理由

■トヨタ マークII→マークX

マークX/価格帯:265万6800~385万200円。チェイサー、クレスタとともにマークII 3兄弟と称された人気ブランドはマークXへと発展したが、現行モデルは生産中止も囁かれている

 5ナンバー+αのボディサイズでクラウンに近い豪華さを備えた標準モデルやMTも設定したスポーツモデルまで幅広く揃えた“マークII三兄弟”は、強力なブランド力を持ち1990年代中盤まで日本において盤石の地位を築いていた。

 しかし、1996年登場の100系と呼ばれるマークIIでは8代目モデルあたりから、それまで勢いに陰りが見え始めた。

 理由としては、日本人の車に対する価値観が「車=ステータスシンボルの1つ」というものから「車=ライフスタイルを豊かにするツール」といった方向に変わったことが大きい。

 マークII三兄弟のポジションは、後述するレガシィやオデッセイといった当時のRVに移行したという事情もあり、マークII三兄弟は、チェイサー・クレスタを廃止。

 2004年にマークXに移行してからはクラウンをベースに300万円以下で近い機能を持つなど、それなりに魅力のある商品に路線を変更した。

 しかし、如何せん現行モデルは登場から約9年が経っていることもあり古さは否めず、SUVブームに太刀打ちできない状況が続いている。

■日産 スカイライン

スカイライン/価格帯:416万4480~584万640円。現行型は通算13代目。20年前、1998年発売のR34型は209万8000~320万5000円という価格帯だった

 スカイラインは振り返ると振れ幅の大きいモデルながら、モータースポーツでの活躍などを大きな武器にしたマークII三兄弟と双璧を成すスポーツセダン&2ドアクーペであった。

 しかし、1993年登場の9代目と1998年登場の10代目モデルでスカイラインは安易な大型化や肝心要のスポーツ性がマークII三兄弟に劣る時期があったこと、マークII三兄弟と同様に車に新しさが感じられなくなってきたことを原因に衰退。

 2001年登場の11代目モデル以降、伝統の直6エンジンをV6エンジンに変えるなど、国際的に通用するスポーツセダン&クーペに性格をガラリと変え、スカイラインの名を存続。

 しかし、RVの台頭や現行の14代目モデルでは400万円を超える価格となったこともあり、マークX以上に日本での販売は低迷している。

■ホンダ オデッセイ

オデッセイ/価格帯:306万6400~415万円。1994年発売の初代は179万5000~269万5000円という価格帯だった

 マークIIとスカイラインの凋落で1990年代中盤からボリュームゾーンに台頭した1台がオデッセイである。

 1994年登場の初代オデッセイはミニバンでありながら、走りや雰囲気が乗用車的だった点や価格の安さで大ヒット。

 キープコンセプトの2代目を経て、2003年登場の3代目モデルでは全高を機械式立体駐車場に入る1550mmに抑えながら7人がちゃんと乗れるというミニバンとステーションワゴンをミックスしたようなモデルに移行し、当初大人気を集めた。

 しかし、3代目のモデルサイクル中盤以降、全高の高いボックス型のミニバンが台頭し、徐々に販売台数は減少。

 3代目のキープコンセプトとなった4代目モデルの後、2013年登場の現行5代目モデルでは4代目オデッセイと当時のエリシオンを足して2で割ったようなミニバンに姿を変え、まずまずの販売をキープしている。

■スバル レガシィツーリングワゴン

5代目レガシィツーリングワゴン/2014年時点での価格帯:259万2000~358万5600円だった。このモデルが国内仕様のレガシィとしてツーリングワゴンが設定された最後のモデルとなった

 レガシィは、1990年代以降オデッセイと並ぶボリュームゾーンの主役であった。

 レガシィツーリングワゴンは、1989年登場の初代モデル以来新しいライフスタイルを感じさせるスタイルや使い勝手のよさ、2Lターボエンジンを搭載するGT系のスポーツワゴンとしての魅力で長く大人気となった。

 そして、2003年登場の4代目モデルでは欧州のプレミアムブランドをターゲットにした各部のクオリティの高さも備え、未だに多くのファンを持つ存在に成長した。

 しかし、4代目はスバルのメインマーケットであるアメリカ市場ではキャビンの狭さを理由に成功せず、レガシィは2009年登場の5代目モデルでプレミアム路線からアメリカ向けの実用車にコンセプトを転換。

 結果、アメリカ市場では大成功を収め、スバルの経営立て直しに大きく貢献し、日本でもそれなりに売れたものの、ファンは離れる結果となった。

 レガシィは次の6代目モデル(2014年登場)でもアメリカを見た車作りを継続しているが、その代わり2014年には4代目レガシィツーリングワゴンの直接的な後継車となるレヴォーグが登場し、現在でも堅調な販売を推移している。

伝統ブランド衰退の功罪は?

レガシィツーリングワゴンのポジションを引き継いだレヴォーグ。伝統の名こそ冠していないものの、大型化し、ワゴンが消滅したレガシィの日本におけるニーズを反映したモデルだ

 SUVがブーム化する一方で、日本車ではよくある「売れるジャンルはドンドン改良され、モデルも増えるけれど、売れない車は放置されてしまう」という循環も起きている。

 そのため人気SUVやミニバン以外は結果的に魅力を失い、その象徴が伝統あるブランドの衰退やユーザーのSUVへの流出を招き、魅力あるセダンやハッチバックを求めるユーザーは、買いやすくなった輸入車も選択肢に入れているというのが現状ではないだろうか。

 SUVがセダンやハッチバックをベースに作られていることを考えれば、4代目までのレガシィのポジションがレヴォーグやインプレッサに移行したように、伝統ある車が必ずしも存続する必要もないと思う。

 SUVブームの今も、“SUVやミニバンを求めないユーザー”はきっと少なくないだろう。そうした層に向けた魅力ある乗用車の開発も必要不可欠なのではないだろうか。

最新号

ベストカー最新号

【新型アルファード2022年登場】新型フェアレディZ初公開!!|ベストカー10月26日号

 ベストカーの最新刊が本日発売! 最新号では、トヨタ高級ミニバン、アルファードの最新情報をお届け。  そのほか、新型フェアレディZプロトタイプ、新型レヴォーグ、新型ヤリスクロス、ボルボXC40マイルドハイブリッドなど注目車種の情報から、3列…

カタログ