これぞ予想外のヒット? ハスラー誕生の意外な秘話
スズキの会長を務める鈴木修氏が、知り合った人から「私はスズキKei(1998年に発売されたSUV風の軽自動車)に乗っているが、乗り替える車がなくて困っている」と言われた。
普通の人なら聞き流すかも知れないが、鈴木修氏は開発の指示を出した。その結果、商品化されたのが、軽自動車のSUVとなるスズキハスラーだ。
発売は2014年1月だが、この時点の月販目標は5000台で、生産が受注に追い付かない。納期は最長で約10か月まで遅延した。今のジムニーに似た状況だ。
そこで生産ラインを増設し、2014年6月までの届け出台数は最大で約7900台だったが、同年7月には1万4000台を超えた。
人気の理由は、SUVの外観に、背の高い軽自動車の優れた実用性を組み合わせたことだ。2014年はSUVが急速に人気を高めた時期で、ホンダ ヴェゼル、日産 エクストレイル、トヨタ ハリアーなどが好調に売れていた。ハスラーの発売はタイムリーで、一気に人気車種となった。
外観は適度に野性的で可愛らしさも併せ持ち、インパネにはステッカーを貼れる処理も施した。遊び心を上手に表現して、嫌味を感じさせないことも魅力だ。
その一方で、車内の広さ、シートのサイズと着座姿勢、シートアレンジなどは先代ワゴンRと同じだから実用性も高い。価格がエアロパーツを備えた先代ワゴンRスティングレーと比べて割安だったことも、人気を得た秘訣だ。
初代CX-5が強豪ひしめくSUVでトップになれた理由
2012年2月に発売された初代CX-5は、全幅が1800mmを大幅に超えるSUVだ。本稿のほかの車種と違って、日本向けの商品ではない。
しかし、ヒット作になった。発売直後はSUVで販売1位になり、2013年3月には6000台以上を登録した。同じ月のデミオとほぼ同じ台数だった。
マツダ初代CX-5が好調に売れた背景には、複数の理由がある。まずは魂動デザインとSKYACTIV技術をフルに使った最初の車種だったことだ。今に通じる新世代商品群の第1弾だからインパクトも大きい。特に魂動デザインのカッコ良さは話題になった。
CX-5が人気急上昇中のSUVカテゴリーだったことも奏効した。現行アテンザは先代CX-5の9か月後に発売されたが、順序が逆だったら、CX-5、魂動デザイン、スカイアクティブ技術はここまで人気を得られなかった。
メカニズムでは、新開発されたクリーンディーゼルエンジンが人気を呼んだ。ディーゼルの実用回転域における高い駆動力と低燃費は、ボディが重く長距離移動の機会が多いSUVとは相性が良い。ディーゼルとの組み合わせも人気の理由だ。
価格も割安で、先代CX-5「25S」(4WD)は、先代フォレスター「2.0i-Lアイサイト」(4WD)、現行エクストレイル「20X」(4WD)などと同程度だった。
登録車No.1!ノート大人気の理由はe-POWERだけじゃない?
日産ノートは先代型も含めて堅調に売れたが、2016年11月にe-POWERも加わって売れ行きに弾みが付いた。2018年上半期(1~6月)の小型/普通車国内販売ランキングでは、ノートが1位に輝いた。
好調に売れる理由として、まずは商品力がある。全長が4100mmのコンパクトなボディは、視界が良くて運転しやすい。全高は1550mm以下だから立体駐車場を使いやすく、ホイールベースは2600mmと長いため、後席の足元空間にも余裕がある。
その上でハイブリッドのe-POWERが人気を高めた。エンジンは発電、駆動はモーターが受け持つことで加速が滑らかで燃費も良い。
アクセルペダルだけで速度を幅広く調節できる回生充電機能も人気を得た。「電気自動車の新しいカタチ」という誇張を伴ったCMも人気を呼んだ。
さらに日産車のラインナップもノートe-POWERの売れ行きに大きく貢献した。今ではティーダやデュアリスが廃止され、ブルーバードシルフィは3ナンバー車のシルフィになり、キューブは発売から約10年を経過している。
それなのに国内市場に適した新型車は投入されず、既存の日産車に乗る人達が、新たに買う車に困っている。そこにノートe-POWERが発売されて需要が集中した。
ティーダ/キューブ/デュアリスなどから普通のノートに乗り替えるのでは満足できないが、ノートe-POWERであれば、どうにか我慢できる。
つまり、人気車に乗るすべてのユーザーが、高い満足感を得ているとは限らない。ほかの車種の魅力が低いために、人気車が生まれることもあるのだ。
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