シビック&CR-V復活の狙いとチグハグな販売戦略
この販売動向に向けた対策のひとつが、一度廃止されたシビックとCR-Vの復活だ。シビックが復活した背景には、セダンを国内の寄居工場で生産するようになったことも影響したが、軽自動車に突っ走り過ぎた国内販売を修正する意図もあるだろう。
ただし、少し身勝手にうつる。シビックはホンダにとって最初の量産小型乗用車で、1972年に初代を発売して以来、日本の多くのユーザーに愛された。ホンダはシビックを通じて、日本のユーザーに育てられたといっても大げさではない。
そのシビックを2010年の8代目で廃止して、10代目で「改めて買ってください」というのは、日本のユーザーとしては快くない。しかも10代目シビックは、日本市場を意識して開発された車ではなく、海外専用車として2015年に発売された後、2017年に国内導入された。
CR-Vも4代目で国内販売を終了させ、5代目を海外専用にして2016年に発売した。この後、国内では2018年になって8月31日にターボ、11月1日にハイブリッドを発売している。
いずれも場当たり的な印象が強い。特にシビックは2017年7月27日に発表、発売は9月29日だった。同時期にはN-BOXの発売、フィットやステップワゴンのマイナーチェンジも行われている。
フィット、ステップワゴンともに販売台数の多い車種だから、販売店は多忙になる。せっかくシビックを発売するなら、この時期は避けて、腰を据えて取り組むべきだった。
それでもシビックの売れ行きは、1か月にタイプRを含めて1500~1600台で推移している。ホンダはユーザーに感謝すべきだろう。
CR-Vも含めて、愛車が国内から撤退して海外専用車になると、ユーザーは他メーカー車に乗り替えることも多い。販売店とユーザーの関係が途切れやすいから、シビックが月販1500~1600台なら成功と見るべきだ。
しかし、ホンダが喜ぶのは早い。シビックが堅調な背景には、300万円以下で買える運転の楽しい車が減った影響もあるからだ。
以前はトヨタならアルテッツァとそのワゴンになるアルテッツァジータ、アベンシス、日産はプリメーラと同ワゴン、三菱はギャランとレグナムという具合に車種を豊富にそろえ、ホンダのアコードもミドルサイズのスポーティなセダン&ワゴンだった。
ところが、今はこれらの大半が廃止されたり肥大化して、300万円以下で買える相応に設計が新しいスポーティな車種が減った。インプレッサ、アクセラ、カローラスポーツ、レヴォーグ程度しかない。
このうち、インプレッサは動力性能が大人しく、6速MTの採用を含めてシビックを選ぶ余地が生じた。車好きに向けた手頃な(といっても上限価格は300万円だが)セダン/ワゴン/ハッチバックが減ったことで、シビックが売れている面もある。
競合車より「高い」CR-Vのなぜ
ならばCR-Vはどうだろう。カーナビが標準装着されるものの、価格の最も安いターボのEX(5人乗り)は、2WDが323万280円、4WDは344万6280円だ。少し高めの設定になる。
今はSUVが人気のカテゴリーになり、販売増加に伴って価格競争も生じてきた。エクストレイル、CX-5、フォレスター、エクリプスクロスでは、2WDが260~280万円、4WDは280~300万円付近に、機能や装備の割に価格の安い主力グレードを設定する。
そうなるとCR-Vは、25万円相当のカーナビが標準装着されると考えても、ライバル車に比べて価格が20~30万円は高い。競争関係を考えれば、もう少し安く抑えるべきだ。
ユーザーの心証を考えると、せめてカーナビはディーラーオプションにすべきだった。標準装着は良心的ともいえるが、ライバル車がオプション設定にして価格を安く見せていると、ユーザーは第一印象でCR-Vが割高だと受け取ってしまう。見積書でライバル車と比較される段階に至らない。
先に述べたシビックの発売時期、CR-Vの装備と価格など、販売会社の意見を聞き、国内市場にもう少し目を向けて欲しい。N-BOXも生産初期の段階では、助手席にスーパースライドシートを装着した仕様の供給が過剰気味になったりした。
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