■ブレーキパッドは5mm以下になったら交換を検討したい
さて、ブレーキの効きが甘くなる原因はさまざまで、ほかにも多々ある。そのなかでも乗りっぱなしでメンテを怠ると確実に問題となるのが「ブレーキパッド」だ。
フロントブレーキに採用されているディスクブレーキはホイールとともに回転する「ブレーキローター」を、その「ブレーキパット」で両側から強くはさみ込むことで制動力を発生させている。このため、使用しているとローター共に確実に磨耗してくる。
■欧州車はブレーキダストが凄い!
ホイールが汚れる原因も、実はここにある。汚れの正体は制動時にパッドとローターの両方から削れた粉(ダスト)で、ホイールに付着するダストの大部分は比重の重い鉄粉。
つまり、ブレーキローターの削りカスで、日本車に比べてローターの消耗が激しい欧州車ほどホイールの汚れが激しく、放置するとサビてくる。欧州車は「ブレーキパッド」とともに「ブレーキローター」も消耗品という考えで、ローターも定期的な交換が当たり前となっているからだ。
一方、国産車は「ブレーキパッド」の摩耗のほうが顕著で、ローターにも摩耗限界はあるものの大衆車クラスで通常の走りの範囲であればローター交換が必要となるケースは少ない。10万kmは余裕で、丁寧に扱えば20万kmも夢ではない。
その「ブレーキパッド」、複数の摩擦材を樹脂で焼き固めた「ライニング」がベースの鉄板に貼り付けられた構造で、ローターに擦りつけられた時に摩耗することで焼き付くことなく制動力を発揮する。ところが、制動時には高温(100〜300℃)にさらされ、停車時には外気温度まで下がるという温度変化を繰り返すことで、使用していると次第に焼き締まって硬くなってくる。そうなると摩耗しにくくなり、食いつきが悪くなることでブレーキの効きが悪くなるのだ。
このため、残量が少なくなってくると効きがあまくなる。確実にμ(ミュー/摩擦係数)が低下しているからで、新品時の厚みは約10mmで摩耗限界は2mm前後だが、半分を切っていたら交換を検討したい。
また、「ライニング」の厚みが半分以上あるから大丈夫というものでもない。例えば、5年間で1万kmしか走らなかったとしたら、やはり交換がベスト。
年数が経過した物は硬化してμが低下している可能性大だからで、ベースの鉄板がサビることで「ライニング」が剥がれてしまうことも……。
もしも、駐車場が屋根なしの雨ざらし、かつ日当たりが悪く、路面が湿気が溜まりやすい未舗装だったら要注意だ。
■ブレーキローターを傷つけないように注意!
ところで、その「ライニング」が摩耗してなくなったり、脱落してベースの鉄板がむき出しになった状態でブレーキをかけてしまうとどうなるのだろうか。
これはレールと車輪の間の粘着力(摩擦力)で制動力を得ている電車を模写した、いわゆる「電車ブレーキ」と呼ばれる状態で、かなり危険な状況となる。
クルマのブレーキは電車のようにレールと車輪という鉄同士を擦り合うことは前提とはしていないからで、制動力は半減。摩擦熱でパッドベースの鉄板がローターに焼き付き、「ブレーキローター」を深く傷付ける結果となる。
場合によってはローターが破損することもあり、摩擦熱がブレーキフルードに直に伝わるため「ベーパーロック」も起こしやすくなる。
このため、初期の段階だったとしてもパッドとともにローター交換が必須で、むやみにブレーキをかけ続ければそれ以上の大きな修理費が必要な状況に陥る。破損して飛び散ったパーツや異常な発熱によって、周囲や足回りにまで被害がおよぶ可能性があるからだ。
そこで、純正パッドには使用限界に達すると「ディスクローター」に接触して「キーキー」という警告音を発する「パッドウエアインジケーター」が組み込まれている。もしも、ブレーキング時に「ブレーキ鳴き」とはあきらかに異なる金属音が聞こえたときは、ただちに「ブレーキパッド」の残量をチェックしたい。
また、「ライニング」が限界まで摩耗すると、その前段階としてブレーキ警告灯が「パッパッ」と点灯したりもする。パットの摩耗分、ブレーキキャリパーのピストンが押し出されるため、そこへ「ブレーキフルード」が移動することでマスターシリンダ上に設置されている「リザバータンク」の液面が下がるからだ。
つまり、リザーバータンクの液面はパッドの摩耗量に応じて下がっていくわけで、定期的にチェックすることで減り具合を推測することもできるのだ。
そんなに難しいことではないので、たまにはボンネットを開けてチェックしたい。そして、もしも半分以下まで下がっていたなら、ただちに「ブレーキパッド」の残量確認を!
コメント
コメントの使い方