新たに導入した「統合パワートレーン」
いっぽうパワートレーンとしては新開発のS13型エンジンを中心に、トランスミッション、排ガスの後処理装置まで一体開発した「S13統合パワートレーン」が新型LTのオプションに指定された。従来車のと比較で、15%もの燃費向上を謳っている。
(インターナショナル「LT」2021年モデルのA26型エンジン+エアロパッケージとの比較)
このS13統合パワートレーンについては、LTの刷新と同日に別々に発表する力の入れようで、ナビスターがトレイトングループに入ったことの成果を強調している。トレイトンはマンやスカニアなどが属するフォルクスワーゲンの商用車部門で、日本では日野自動車と戦略提携している。
そのトレイトンでは、スカニアが2012年に開発を開始した13L級エンジンをベースに、グループの共通エンジンプラットフォーム「コモン・ベース・エンジン」(CBE)を開発しており、既にスカニアのDC13型がCBEベースになっている。
ナビスターとトレイトンが北米市場向けに共同開発したS13型エンジンも、同様にCBEのモジュラーシステムを採用して設計したものだろう。モジュラーシステムはカスタマイズにより大量の派生モデル生み出すことができ、競争上の長期的なアドバンテージがある。
すなわち開発の速度を上げコストを下げるという効果と、トレイトングループのように傘下の企業が多い場合は、ブランドを横断するクロスブランドの開発・製造を容易にし、地域ごとに適応が可能となるという効果だ。
ナビスターがトレイトングループとの共同開発に加わったのは5年前だという。S13統合パワートレーンでは、エンジンの他にトランスミッション、後処理装置もまったくの白紙から開発した。
この3つのコンポーネントを統合してシステムに組み込むために、すべて並行して設計・開発し、互換性を高めた。
流行りの「ゼロ・エミッション」ではないが、パワートレーンの統合は高い運行効率とパフォーマンスを通じて多くのメリットを提供する。13L級エンジン+AMTの組み合わせとしては市場で最も軽く、15%の燃費向上はインパクトが大きい。
新型エンジンの特徴
パワートレーンの中核となるインターナショナルS13型エンジンは、単体でも燃焼の改善とフリクション低減、ポンピングロスの低減により優れた効率とパフォーマンスを実現した。
排ガス浄化のためには尿素SCR技術(尿素水によるNOx=窒素酸化物の還元)のみを使用し、EGRによる排ガス再循環(酸素濃度を低くすることで燃焼温度のピークを下げ、NOxの発生を抑制する)を行なわない。
代わりに通常時は排気の100%をターボチャージャーに流すことで高出力を実現した。EGRを排したことでより完全燃焼に近くなり、煤の堆積を軽減した。低回転から高トルクを発揮することで燃料消費も少なくなる。
また、サブコンポーネントを排除したことも稼働率の向上につながっている。S13型エンジンで、可変容量ではなく固定ジオメトリのターボチャージャーを採用したのは複雑なシステムをなくすことで信頼性を高めるためだ。
ダウンストリームの燃料噴射も廃止し、高圧ポンプの噴射圧を1800バールまで低圧化した。またデュアルオーバーヘッドカムと鋳造アルミによるカムカバーなどにより圧縮比を高め(23:1)、圧縮開放式のエンジンブレーキの性能も向上している。
エンジンブロックの素材は圧縮グラファイト鋳鉄(CGI、バーミキュラ黒鉛鋳鉄)とし、アルミ部品と併せて北米の13L級市販エンジンとして最軽量を実現した。
エンジンのレーティングは7つで、最大515hpと、2000rpmで1850lb-ft(約2500Nm=255kgm)を発揮する。