クルマに限らず製品開発する際には「○○を上回る性能を目標にする」というベンチマーク(基準)が設けられるケースが多い。
国産車も過去、現在ともにそのような過程で開発されたクルマがある。それらは主にドイツ車をはじめとする輸入車の作りこみなどをベンチマークにしていることが多い。
今回の記事ではベンチマークにした車種に追いついたのか、それともまだまだだったのか「ベンチマーク達成度」で分析したい。
文:永田恵一/写真:ベストカー編集部
■セルシオの登場は日本車の躍進だった
【トヨタ 初代セルシオ】ベンチマーク達成度 150
まずこの手の企画で筆頭に挙げるべきは初代セルシオだろう。
当時のベンツSクラス、BMW7シリーズをベンチマークに「日本車初の世界に通用する高級車」というコンセプトで開発されたモデルであった。
初代セルシオが掲げた開発目標は以下のとおり。
・4リッターV8という当時の高級車の世界基準としては比較的小排気量のエンジンで250km/hの最高速と加速力に加え低燃費をバランスする
・源流主義と呼ばれた「各部分の音をはじめからから出さない」というコンセプトによる徹底的な静粛性や滑らかさの追求
・乗り味や装飾など全体的なクオリティの高さ
どれを見ても、それまでの日本車とはレベルのまったく違う高度な内容であった。
こうして誕生した初代セルシオは、アウトバーンのペースでのハンドリングやブレーキ性能こそ 、ベンツSクラスやBMW7シリーズに見劣りするところがあったも。
しかし前述した開発目標をほぼ達成した上に、ずば抜けた静粛性などベンチマークとした2台とは違ったキャラクターを持つ高級車だったことも世界で高く評価された。
さらに初代セルシオの価格は当時のベンツミディアムクラス(現在のEクラス)、BMW5シリーズ級と内容を考えれば激安だったのも名声を高めるに大きなアドバンテージとなった。
特にアメリカ市場ではベンツもBMWもキャッシュバックキャンペーンを行い、ベンツはミディアムクラスにレクサスLS400(セルシオのアメリカ名)対策のV8エンジン車を設定するほどの影響を与え、世界の高級車マーケットを震撼させるほどの成功を納めた。
■ポルシェを超えよ!! 日本の雄 GT-Rが目指したもの
【日産スカイランGT-R(R32)】ベンチマーク達成度 120
1980年代後半の日産車の黄金期に登場したR32スカイラインはファンからの期待も大きいクルマだった。
旧型となるR31が「スカイラインなのに当時のマークⅡの影響を強く受けている」などとも言われ、ブランドイメージを落としていたからだ
そんなR31の汚名を返上すべく、スポーツセダン&スポーツクーペという本来のスカイラインらしさの追求をした。
16年振りとなるGT-Rの復活は大きな出来事で、その圧倒的な強さは並々ならぬ意気込みのもと開発されたモデルであった。
さらに当時日産はプロジェクト901と呼ばれる「1990年に走りの性能で世界一になっている」という活動を行っていた。
特にR32スカイラインGT-Rは当時のポルシェ944ターボの性能を大きく上回ることをベンチマークに開発された。
レーシングエンジンをそのまま市販車に搭載したようなRB26DETTエンジン。さらにトルクスプリット4WDのアテーサE-TSを持つGT-Rは、ニュルブルクリンク北コースのラップタイムで944ターボの8分40秒より20秒(1kmあたり1秒)も速い8分20秒を記録。
当時のグループAレースでの大活躍や未だに伝説的なインパクトを感じる点も含めれば、R32スカイラインGT-Rがベンチマークとした944ターボを上回ったと言っていいだろう。
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