R32GT-Rのパーツ代は?維持費は?オーナーの生の声は?「名車を維持するための処方箋」

 昭和から平成、新元号になっても乗り続けていきたい名車があります。その名車を健康的に乗り続けていくためには、どうすればいいのでしょうか? 現代のクルマに比べると、やはり維持費がかかりますし、欠品パーツも出てきます。それでも乗りたいという人も多いことでしょう。

 そこで、名車を維持するための最適な方法を「処方箋」として紹介していきたいと思います。また乗り続けているオーナーさんの生の声を聞いて、大変ためになる維持する秘訣も聞いています。

 第1回目は、絶大な人気を誇るR32GT-Rです。さて、どんな処方箋を出しましょうか。

文/松村 透(クルマ業界に精通するディレクター、ライター)
写真/松村 透
初出/ベストカー2018年12月10日号
取材協力/日産プリンス東京モータースポーツ室


■BNR32GT-R(1989~1994年)

1989年5月22日発表、8月21日発売。「GT-R」の名を冠したモデルとして16年ぶりに復活。直6ツインターボエンジン「RB26DETT」は2568㏄の排気量から280ps/36.0㎏mを発生。全長4545×全幅1755×全高1340㎜。開発責任者は櫻井眞一郎氏の後を継いだ伊藤修令氏

 R32型スカイラインGT-Rは、16年ぶりにGT-Rの名が復活したことで、1989年5月22日に発表した際には、スカイラインファンだけでなく、日本中のクルマ好きがよろめきたった。1990年〜1993年にかけて、全日本ツーリングカー選手権での26戦全勝という偉業ももはや伝説である。

 しかし、アメリカでは、製造から25年経ったクルマを排ガス検査なしで輸入して走れることができる「25年ルール」により、その多くが輸出され、中古車価格が高騰しているのは周知のとおり。

 そのいっぽうで、日産が「NISMOヘリテージパーツ」としてR32型GT-R用純正パーツの再生産を決断したことは、多くのオーナーに喜びをもって迎え入れられた。

■R32GT-Rオーナーの生の声

■一ノ瀬憲人さん(53歳)「新車で手に入れて28年間乗り続けています」

R34GT-Rのホイールを履く一ノ瀬さんのR32GT-R。ブレーキローターも大型化している

●所有車:1990年式スカイラインGT-R
●購入時期:1990年(新車購入)
●所有年数:28年
●走行距離:28万㎞
●購入価格:約500万円

 まずはR32GT-Rの生の声を聞いてみた。ひとり目は1990年に新車で購入してからなんと、28年、28万km乗り続けている一ノ瀬憲人さん。

「当時、スカイラインGTS(R31型)に乗っていました。箱根の芦ノ湖スカイラインに行った時にGT-Rを見かけて、それが格好よくて……。その帰りに、お世話になっているディーラーに寄って契約してしまいました」

 と語る一ノ瀬さん。念願だったGT-Rのオーナーになってみて感じたことは?

「GT-Rを通じて、たくさんの友人ができたことです」

 愛車がコミュニケーションツールとして重要な役割を担っているようだ。ただ、年数が経過しているクルマだけに、維持するための苦労もあると思うが……。

「なじみのディーラー(日産プリンス)やショップ(目黒メンテナンスサービス)が頑張ってくれるので、大きな苦労はありませんが、古いクルマでも不安なく乗っていける体制を、もっと整えてほしいとは思いますね」

 人間同様、頼れる主治医の存在は心強い。では28年間向き合ってきて感じる、R32型GT-Rの魅力とは?

「現代のクルマにも見劣りしない動力性能、日常使いもできる万能性、絶妙なボディサイズ、30年近く所有しても飽きないことです」

 最後にR32GT-Rの購入を考えている方へメッセージを。

「本来の性能を発揮できれば、ノーマルでももの凄く楽しいクルマです。ただ、アテーサE─TS、スーパーHICASなど、ほかのクルマと比べて部品点数が多いので、メンテナンス費用はそれなりに確保しておいたほうがいいと思います」

センスが光るキャメルレザーの内装。シートが擦れてきたのを機にロブソンレザーに張り替えた

■大澤哲也さん(52歳)「発売当時から欲しかったクルマを手に入れた喜び」

ブレンボ製の大型ブレーキキャリパーと、BBS製のメッシュホイールがVスペックの証だ

●所有車:1993年式スカイラインGT-R Vスペック
●購入時期:2000年
●所有年数:18年
●走行距離:18万㎞
●購入価格:約380万円+諸経費

 続いて、前の愛車もスカイラインだったという大澤さん。しかしR32型には特別な思いがあったようだ。

「発表当時から欲しかったのですが、4ドアが必要な事情があり、R32のタイプM、そして4ドアのR33GT-Rと乗り継ぎました。ですがR32GT-Rへの思いが募り、縁もあって、今のクルマを手に入れることができました」

 念願のR32型GT-Rを手に入れた率直な気持ちは?

「小学生の頃から『大人になったらGT-Rを買おう』と心に決めていました。念願だったR32型GT─Rを手に入れる夢が叶い、すべてに満足しています」

 入手から18年とのことだが、純正部品の入手状況についてはどうなのだろうか。

「現時点では、ディーラーや専門のメンテナンスショップのおかげでなんとかなっていますが、シート、シートベルト、ガラス、アテーサ関係の部品が欠品しています。メーカーには、純正部品のさらなる拡充と値下げをお願いします」

 大澤さんにとって、R32型GT-Rの魅力とは?

「グループAのレーシングカーと同じ目線でドライブができること、そしてRB26エンジンのサウンドです」

 今後、手に入れたいという方に向けてメッセージを……。

「新車から30年近く経っているクルマです。歴代オーナーがメンテナンスに手間とお金をかけているかでコンディションが異なります。多くの個体をチェックしてください」

 中古車を手に入れる際、焦らずにじっくりと時間をかけて探してみるのがよさそうだ。

隅々まで手入れが行き届いたエンジンルーム。大澤さんのR32GT-Rへの愛情が伝わってくる

■プロが教える、このクルマの実情

グループAマシンと比べてもまったく見劣りしない。後世に乗り継がれていく名車だ

 現オーナーの声を聞いてみたところで、ここではその道のプロ「日産プリンス東京モータースポーツ室」の小山氏に取材を行った。R32型GT-Rのタマ数や、すぐに乗れるような個体は見つけられるのだろうか。

「年々、状態のよい中古車が減っていることを実感しています。しかし、リフレッシュすることを前提で購入すれば、長く乗っていくことは可能だと考えております」

 では、購入時や維持していくうえで気をつけることは?

「高年式車両や低走行車両であっても必ず修理が発生することを念頭に置いて購入・維持してください。そして、車両本体+メンテナンス代に回せるよう、予算に余裕を持たせておくように心がけてください」

 気になる純正部品の供給状況についても伺ってみた。

「ヘッドライトや外装部品のほとんどがすでに製造廃止となっています。エンジン本体も製造廃止ですが、現在は中古部品なども利用してメンテナンスを行っています。純正部品がないために修理できないという状況ではありませんね。今後は再生産やヘリテージパーツでの復刻が予定されていますけど、オーナーさんや今後手に入れる予定の方は、どうか大切に乗ってほしいですね」

 ズバリ、R32型GT─Rの魅力とは?

「純然たるGT─Rのフィールが色濃く残るクルマです。速いだけではなく魂を感じさせてくれます。これほど潔く『勝つことだけを追い求めているクルマ』はこの先生まれてこないと思います」

 プロさえも魅了するGT─Rは本当に偉大な存在だと改めて実感する。では、最後に購入を検討されている方へアドバイスを……。

「古いクルマだけに、見えない場所(下回りから見た錆)は特に念入りにチェックしてください。また、ご購入を検討されていらっしゃる方は、私どもが用意しているリフレッシュプランも視野に入れてみてください」

 極上車であるように見せかけて、実は錆だらけというケースも少なくない。プロのアドバイスを参考に、程度のよい個体を見極める目を養っておくべきだろう。

再生産やヘリテージパーツでの復刻も予定されているというから期待して待とう

■R32型GT-Rの今後はどうなる?

海外へ流出していったGT-Rも少なくない。1台でも多く国内に留めておきたいところだ

 今後、1台でも多くのR32型GT-Rを後世へと受け継いでいくには、パーツの再生産や、ヘリテージパーツの復活が鍵になることは間違いない。

 しかし、多くのオーナーにとって部品の価格高騰は避けてほしいというのが偽らざる本音だろう。中古部品やリビルト品を駆使してやりくりしていくノウハウの蓄積や情報の共有、同じクルマを所有する者同士のネットワークも重要だ。

 メーカーやプロショップとユーザーが手を携えてこのクルマを維持していくことが一層求められている。

 次回は初代NA型ロードスターをお届けします。お楽しみに!

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