国交省も通知「HVでもEVでも覚えておくべし」正しいエンジンブレーキの使い方とリスク

エンジンブレーキが必要な理由

制御不能に陥る前に!! 今一度見直すべき正しいエンジンブレーキの使い方
ブレーキペダルを踏むと車軸に装着されたブレーキが作動してクルマの減速→停止が行われる。これがいわゆるフットブレーキだが、それだけに頼るのは危険だ

 フットブレーキを連続して使用すると摩擦による発熱が大きくなり、ブレーキの利きが悪くなるフェード現象が発生する。また、フェード現象とは別に、ブレーキフルードが発熱してフルード内に気泡が発生し、この泡によってブレーキに油圧が伝わらなくなるベーパーロック現象が起きることもある。

 フェード現象やベーパーロック現象によって制動力の落ちたクルマで急な下り坂を走るのがいかに危険なことかは容易に想像できるだろう。

 そこでフットブレーキだけに頼らず、エンジンブレーキも併用することによって安全運転が可能になる。「エンジンブレーキ使用」の注意喚起があるのはこのため。

 エンジンブレーキが有効なのは下り坂だけではない。高速道路を走行中、前車との間隔が詰まった際にむやみにフットブレーキを多用してブレーキランプを点灯させると、後続車もこれにつられてブレーキを踏み、それが事故や渋滞の原因となることもある。こんな時にエンジンブレーキで適切な減速をすれば、トラブル防止になる。とはいえ、常に安全な車間距離をとって走っていれば、アクセルを少し緩めるだけでいいのだが……。

エンジンブレーキの使い方

制御不能に陥る前に!! 今一度見直すべき正しいエンジンブレーキの使い方
マニュアルトランスミッション車の場合は、素早くシフトダウンを行うことによってエンジンブレーキを利かせられる。だが、オートマ車ではそうもいかない

 ここからは実際にどうやってエンジンブレーキを利かせるのかを紹介していこう。

●オートマチックトランスミッション車

 現代の日本で最もポピュラーなのが“オートマ車”だが、オートマはシフトチェンジが自動的に行われ、走行中に使っているのはその速度域で最も高い(高速側)のギヤだ。このため減速しようとアクセルを戻してもそれほど大きく減速できない。

 そこで通常走行で選択しているDレンジよりも低速側の2(セカンド)や1(ロー)に切り替えればギヤ比が変更され、タイヤの回転数がエンジンよりも速くなってエンジンブレーキがかかる。だが、この場合は急減速しすぎてかえって危険な場合もあるので注意が必要だ。

 かつてのオートマ車にはO/D(オーバードライブ)ボタンが装備されていて、このボタンを押してオーバードライブを解除することでもエンジンブレーキをかけることができた。これは高速道路で巡航している際に、フットブレーキを踏まずに軽く減速したい時に便利だった。

 だが、技術の進化によってO/Dボタンを装備しないオートマ車が増え、現在この方法はできないケースが多い。

●CVT車

 段階的に変速を行うオートマに対して無段変速が可能なのがCVT。厳密に言うとCVTもオートマの一種ではあるが、ここでは違うものとして扱いたい。

 CVTでもエンジンブレーキを効かせることは可能だ。Dレンジでのアクセルオフでも減速が十分でない場合、「Sレンジ」を選べば減速比が変わってエンジンブレーキが可能になる。

 Sレンジの「S」は「スポーツモード」を意味し、Dレンジよりも加速特性を重視した変速比になる。つまりオートマのセカンドやローと同じように、Sレンジにすることでエンジンブレーキが利くようになる。

 車種によってはSレンジを装備していないものもあるが、その場合でもDレンジより低い変速比になるモードは装備されている。車種によってはこれを「B」や「M」と表記しているが、基本は同じものと考えていい。

●マニュアルトランスミッション車

 マニュアル車の場合は比較的簡単にエンジンブレーキを使える。これは現在選択しているギヤより1段低いものに落としてやればOKだ。もちろん変速の際にエンストさせてしまう可能性もあるが、マニュアル車に乗りなれている人であればこの心配は少ないはずだ。

 問題はマニュアル車が現在希少になっていること。実際、生涯に渡って一度もマニュアル車を経験しない人も増えていて、その意味ではエンジンブレーキ本来の効き方を体験できない(=使いこなせない)のは残念でもある。

●EVにおける“エンジンブレーキ”

 伝統的な内燃機関(エンジン)を持たないEV(電気自動車)も、フットブレーキだけに頼っていては急勾配の走行に対応できなくなる。もちろん、そんなことにならないように配慮されている。

 EV車の走行中にアクセルを戻すと、まるでエンジンブレーキがかかったかのようにグッと車速が落ちる。これはEVに搭載されている回生ブレーキによるものだ。

 回生ブレーキとは、車体の慣性を利用してアクセルオフ時にモーターを回して発電を行い、それをバッテリーに送って蓄電するシステムだ。エンジンで動くクルマでは減速時のエネルギーは熱となって放出されるだけだが、この回生ブレーキはエネルギーが再利用できるのが魅力。

 また、これまでエンジン車両での運転に慣れている人に向けて、アクセルオフの際に違和感のない減速を行うようプログラムされているEVも多い。こうした機能も擬似エンジンブレーキとして活用できる。

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