【マツダ車デザイン大絶賛 連戦連勝の理由】あのセンター廃止から大躍進

■あまり評判がよくなかったNAGARE(流れ)

マツダは昔から傑作デザインの多いメーカーだ。最初の4輪車・マツダR360クーペをはじめ、コスモスポーツ、歴代RX-7、5代目ファミリアなど、記憶に残るカッコいいクルマが多い。ただし凡作も多く、デザインにはばらつきがあった。

現在は、ばらつきも最小になり、どれを見てもしっかりカッコいいデザインになっているが、つい10年ほど前は、小さな低迷期にあった。

先代デミオが発表された年(2006年)に、オランダ人のローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏がデザイン本部長に就任。

彼はコンセプトカーの「NAGARE(流れ)」シリーズを主導した。どれも、枯山水のような水の流れを表現したデザインだったが、いかにもデザインのためのデザインで、彼の元で作られた2代目アテンザや3代目プレマシーのデザインはパッとしなかった。

「流」は、カリフォルニアにあるマツダのデザインセンターで生まれたもので、動きやエネルギー、軽やかさを感じさせるFlow(フロー、流れ)を造形やラインで表現しているという

当時、『ベストカー』連載の「デザイン水かけ論」でも、アテンザやプレマシーは前澤義男氏に酷評されていた。

この「NAGARE」に対して、当時部下だった前田氏は「薄っぺらな日本的なデザインだ」と猛反発していたという。

前田氏は、ヴァン・デン・アッカー氏が2009年に退任した後を継いで、デザイン責任者となった。そして世に出したのが、「魂動(こどう)」というデザインコンセプトだ。現在のマツダ車のデザインは、すべてここから生まれている。

マツダは2010年より「魂動(こどう)-SOUL of MOTION」というデザイン哲学のもと、生命感あふれるダイナミックなデザインのクルマを創造。日本の美意識を体現し、マツダらしい「エレガンス」を追求する深化した魂動デザイン。ここから、マツダデザインの新たなステージが始まった。魂動デザインの象徴であるオブジェを「金型と同じ材料の鉄」で再現。マツダは「魂動」の定義を「チーターが獲物を狙って力を溜め、飛びかかる一瞬」の動きと説明している

その特徴は、生命感を重視していること。小手先ではない、骨太な躍動とでも申しましょうか? そして、賞味期限の長いデザインであること。つまり時間的耐久性だ。このふたつを必須としている。

また、マツダのデザイン部門は、「前田育男独裁体制」と言われている。前田氏がダメと言えばすべてダメ。前田氏をウンと言わせない限り世に出ない。この独裁体制がデザインテイストを揃え、レベルも揃えた。

マツダの現行ラインナップは、すべて前田育男体制下で生まれたものに切り替わっているので、完全なブランド統一デザインが完成している。

■デザインクリニックの廃止が躍進の鍵だった!

前田育男氏と協議するデザイナーたち

前田氏が行ったデザイン改革で最もわかりやすいのは、デザインクリニックを廃止したことだ。デザインクリニックとは、事前にさまざまなユーザーにデザイン案を見せ、評価してもらうこと。ユーザーの反応を見ることで、ハズレをなくす効果がある。

しかし、一般ユーザーに判断をゆだねると、どうしてもデザインが無難になってしまう。デザイナーにすれば、「ユーザーが評価したのだから」という言い訳にもなりやすい。

前田氏はこのデザインクリニックを思い切って廃止し、芸術家のように、自信のある作品を世に問う形に変えた。

これは、マツダのような比較的規模の小さい自動車メーカーだからこそできた面がある。規模が小さいから、それほど広い層に訴求する必要はない。10人にひとりのクルマ好きが「すごくいいね!」と言ってくれればいいのだ。

逆にマツダくらいの規模だと、広く浅く訴求してもダメ。狭く深く訴えようという割り切りが、玄人好みの傑作を次々と生み出した。

次ページは : ■現行マツダ車のデザイン採点簿

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