元中日ドラゴンズの山﨑武司さんが、昨シーズンかぎりで引退。野球解説者の道を歩み始めたが、なんとレーシングドライバーに転身するという。山﨑さんは現役時代から無類のクルマ好きで有名だったが、まさかレーシングドライバーへ転身するとは仰天。
そこでさっそく、その心境を探るべく、1月30日に行われたトヨタモータースポーツ活動発表会会場にて突撃インタビューを行った。
編集部
86/BRZレースに出るのにあたって苦手意識はありますか?
山﨑
やっぱりケツがグーと滑っていくイメージがあまりないことですね。カートはいくら滑っても身体とほぼ一体ですから、滑ってもハンドルでヘタなりにもいけるんですが、はたしてあの大きいクルマを手なずけられるのか、ぜんぜんイメージが湧いてこないですね。
鹿島
これはいい機会ですよね。アヴェンタドールで試すのはいろんな意味でリスクがありますけど、のレーシングカーでちょっとくらいスピンしてもぜんぜん大丈夫だと思います。
山﨑
レースをしている仲間から「サーキットは意外と簡単にスピンするから。視界が広いから思った以上のことを自分でやっちゃうからスピンしちゃうんだよね。でも絶対スピンするから」といわれて、ちょっとビビっています。
鹿島
ボクだけでなくレーシングドライバー仲間が、山﨑さんに注目しているのは動体視力のよさです。あんな小さいボールが150km/hで飛んできて、それを打つわけですからね。
編集部
しかも至近距離に球が向かってくるわけですからね。
鹿島
レーシングカーって350km/hで走っていても一緒の方向で走っているのでアメリカのオーバルでも、隣のクルマがスピードが同じだと思うとスピード差を感じないんです。山﨑F1マシンが鈴鹿のストレートを走っているのを見た時「別にぜんぜん大した速くねえ」と思っちゃいました。
鹿島
レースって同じ方向に走りますよね、こっちに向かって来ませんよね。前にスピンしているクルマがいるとドキッとします。ボールが150km/hで向かってくるわけですから、ボクらに見えていないものが見えるので新しい境地があるんじゃないかと期待しています。
山﨑
いやいや〜。
鹿島
どうやったらボールが止まって見えるんですか?
山崎
止まって見えないですよ。〝だいたい〟で打っていますから。
編集部
ストレートとカーブやシュート、緩急がありますよね。見極めていないんですか?
山﨑いいピッチャーだと30km/h違います。見極めて打っていると、よく言われますけど、ボールを打つ時って、〝だいたい〟なんですよ。こんなところを見て打つなんて人間の目の反応は無理なんです。
だいたいこのへんだと思って振りにいってボールが曲がった時に身体が自然に動いてたたんだりするわけです。慣れですよね。ピッチャーの腕の振りの感覚とか、あ、緩くなったと思ったら身体が自然に変化球で反応するとかこういう感覚です。意外と〝だいたい〟なんです。
編集部
そういう鋭い感覚をもっていれば、コーナリング中にリア右タイヤの接地が少しなくなったとか、細かい挙動がわかるのでは?
山﨑
いやあ〜、まだ走ったことがないもので……(笑)
鹿島
実はボクより速くぶち抜かれるのではないかと心配しています。
山﨑
カートでは小学生にかぶされ、軽く抜かれます。イライラしますよね。中嶋一貴選手に「別にぜんぜんたいして速くね「レースは我慢ですよ」と言われました。冷静さを失わずにやっていきたいですね。スポーツは全部一緒だなあと思いました。
編集部
レースに出るからには優勝を狙っていますか?
山﨑
生半可なことでは勝てないでしょう。まったくどうなるかわかりませんので優勝なんてとてもとても。山野直也選手からも「自分を見失うな」とアドバイスを受けましたが、その言葉どおりにしたいと思います。
四輪の友達では、松田次生君とは一番仲がよくて、カートを教えてもらったり、これまで多くのレースを見に行っていました。あ〜、もうダメだ、もう身体がきつい、熱くてダメだ、もういかん。というふうに、ボクらスポーツ選手って苦しい、つらいを受け入れて、凄い感触がいい。
つまりランナーズハイのようにハイになるところがあるんですが、こんな心境でやっているんだとか、息が吸えないけどボーッとしてくるけど、そうやって立ち直るんだとか。
ただ、乗って楽しかったんじゃなくて、やるからにはこういうことを考えてレーサーってやっているんだとかそういうマニアックなこと、人間の限界を見て考えてやっていきたいですね。
鹿島
凄いですよね、やっぱり。考えているレベルが高いです。
編集部
最後に意気込みをお願いします。
山﨑
「争う」、そういうと聞こえが悪いですが、戦うことを遊びにするのは楽しいです。最近、日本人が忘れかけていますよね。ボクも45歳になって、野球選手を引退したので人と競争するとか順位を付けられること、ドキドキすることはないのですが、この86/BRZレースは、どんな年代の人でもやろうと思ったら勝負ができる。
ボクは、野球をやめても勝負ができるという喜びを感じながらやっていくのがいいと思っています。それに、ちょっとレースに興味がある、レースに出ようかと迷っている人はぜひ参加してください。ボクが出ることによって、レースの世界を知って、出る人が増えて裾野が広げられたら、と思っています。
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