■ヨーロッパにおけるエネルギー政策における問題とは?
ヨーロッパにおけるエネルギー政策は、ある種のイデオロギー対決みたいな様相を呈している。CO2を排出するものはとにかくすべてが悪で、化石燃料はもってのほか。
水素にもグリーン水素とブルー水素があり、Eフューエル(合成炭化水素燃料)にも精製時のCO2排出量が考慮されるなど、経済的な合理性を犠牲にしても、CO2削減を優先すべきと考える人が少なくない。
こういうイデオロギーに凝り固まった人には、「CO2削減は適材適所。BEVがすべてに万能ではなく、地域や使い方によってベストソリューションはさまざま」と説明しても、すべて「CO2削減に後ろ向き」扱いされてしまう。これが、環境リベラル派にトヨタの評判があまりよろしくない原因だ。
しかし、現実問題としてBEV価格がどんどん上昇してしまえばCO2削減も遠のくわけで、そういう状況の中で、BEVを補完できるほどクリーンでしかも実用性の高い自動車用エネルギーといえば、こりゃもうFCVしかないというのが現実。
じっさい、ヨーロッパでもトヨタ・ミライやヒョンデ・ネッソなど少ないながらFCVは市販されているし、EU主導で主要高速道路150kmごとの水素ステーション設置を目指す計画も進行しているわけで、いくらガチガチのBEV派としても、それは認めざるを得ないところがある。
英国政府としては、ここでトヨタと組んでまずは実績を積み、BEVと同レベルにクリーンなゼロエミッション車が存在することを実証しておく。それがこのプロジェクトの目的といっていいのではないだろうか。
■トヨタの強みを発揮!! なぜハイラックスをFCのベース車にしたのか?
ハイラックスがベースとなっているのは、研究開発用のプロトタイプから少量生産へ発展させるうえで、セダンやSUVより低コストで使い勝手がいいから。
配布されたオフィシャル写真を見ると、ボンネット内にFCスタック、パワーコントローラ、駆動モーターを集中して納め、スペースを食う高圧水素タンクは車体中央の荷台下に3本を配置、客室後部にエネルギー回生用の電池を置くというパッケージレイアウト。
ちょっと興味深いのは、リアにe-アクスルらしきものが装備されていて、どうやらFFベースの4WDという構想らしい。
こうして見ると、FC関連の部品については、ミライやbZ4Xなどすでに量産されているトヨタ車からの流用で行けそうで、それが「最初のプロトタイプ車は 2023年中にバーナストンの TMUK サイトで生産される予定です」というスピード感ある開発スケジュールを可能にしているわけだ。
トヨタの燃料電池スタック(FCスタック)は、本社工場敷地内に建設した専用建屋で生産されている。工場というと巨大な平屋をイメージするが、このFC専用棟は8階建て延べ床面積は約7万m2のビルディング。外観もまるでオフィスビルのようで、クルマの心臓部を生産する工場というイメージとはだいぶ違う。
ここにはFCスタック関連の研究施設も同居していて、まさにトヨタの水素戦略にとってのヘッドクォーター。トヨタはこの施設への総投資額は明らかにしていないが、巨額の開発費が投じられていることは間違いない。水素戦略にトヨタがいかに「本気」であるか。それを象徴するシンボルと言っていい。
そこで開発されたFCスタックは、まず新型ミライに搭載されて世に出たわけだが、現状では乗用車タイプのFCVだけでは巨額の投資に見合うほどの需要がない。そこで、さまざまな業種とコラボレーションして、水素エネルギーの輪を広げてゆこうというのがトヨタの戦略だ。
ミライを手始めに、燃料電池バスのSORA、FCトラックをセブンイレブンの配送に使う実証実験、日野の大型トラックへの応用、中国メーカーとの共同研、JR東日本や日立製作所と共同開発したFC鉄道車両など、これまでさまざまなFCプロジェクトが実施されてきた。
そんな一連のトヨタFCファミリーに、今回は英国政府肝いりでハイラックスFCVが加わったということ。こういう粘り強い普及活動を持続できるのが、やはりトヨタの強み。それを改めて感じさせてくれるニュースでございました。
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コメント
コメントの使い方すでにEVゴリ押しが行き詰まっている欧州では、いかに政府以外(業界や供給や他国など)のせいにして政策転換するかを昨年からずっと進めています
英国はその五指のひとつ。そしてEU他国を出し抜くためなら何でもやる所なので、真っ先に世界に迎合する可能性はあります
しかし忘れてならないのは、EUだけでなく日本も幾らでも利用するし切り捨てる国ということ。winwinを願い過ぎると絞られて終わるでしょう