ディーゼル先進国の欧州はガソリン回帰
国内クリーンディーゼル市場は空前の活気を示し、政府も普及を後押しする。未来は明るいように見える。
業界では、クリーンディーゼル車の今後について、「さすがに今までのような伸びではなくなると思いますが、確実に増えていくことは間違いないでしょう」(クリーンディーゼル普及促進協議会・山中事務局長)とみている。
それに異論はないし、普及促進に水をさすつもりもないが、いっぽうでこんな見解もある。お馴染み、自動車評論家の鈴木直也氏はこう予想する。
「クリーンディーゼル車の先進国といえるヨーロッパ各国では、ディーゼル普及が一段落し、ガソリンに回帰しつつあります。それが小排気量の過給器、ダウンサイジングです。というのも、排ガス規制がこれ以上厳しくなると、ディーゼルはコスト的に引き合わなくなるからです。新車販売のディーゼル比率が50%を超えているフランスやイタリアなどでも、〝そろそろディーゼルやばくない〟という雰囲気ですね。
実際、ディーゼルの排ガス対策はお金がかかる。マツダのSKYACTIV-Dは希有な例で、規制強化にともなう触媒のコストアップは企業の収益を圧迫しかねない。特に小型車、コンパクトカーにはつらいと思います。日本市場は、石原元都知事のおかげ(?)で、ディーゼルの普及が遅れたから、伸びしろがあります。今後も少しは伸びていくでしょう。
また、ホンダが1・6ℓのクリーンディーゼルを商品化したことは素敵なことで、拍手を送りたいと思います。ただ、世界のトレンドからいえば、もはやディーゼルではなくなっています。
国内でも、トヨタと日産が熱心じゃない。特にトヨタは驚くほどディーゼルにやる気がありません。必要ならBMWから買えばいい、というスタンスでしょう。そうなると、絶対台数が伸びませんから、主流にはならないと思います」
鈴木氏の意見はもっともかもしれないが、ガソリン車をはじめEV、HV、そしてクリーンディーゼルと、消費者が個々のライフスタイルに応じてクルマを選べる、その選択肢が多ければ多いほどすばらしいクルマ社会だともいえる。
大学の基礎研究を国が支援し、自動車メーカーが実現させるというシナリオがあってもいい。その結果、国内のクリーンディーゼル販売が増え、逆に世界に発信することにでもなれば、国産クリーンディーゼル車の競争力アップになるだろう。
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