2台のプロトタイプ
最初のプロトタイプはドライバーが乗り込むためのキャブを備えた車両で、フュージョン・プロセシングの自動運転システム「CAVstar」による公道での自動運転を行なう。人間のドライバーが安全のためにハンドルを握る。
2台目のプロトタイプではキャブを取り除き、代わりに空力用のフェアリングを取り付ける。この車両の評価は公道ではなくテストコースで行ない、CAVstarシステムを通じて遠隔地の人間のドライバーによるオペレーションも予定している。
これらの二つのプロトタイプで最適化を目指す未来の輸送システムとして、コンソーシアムは次のようなものを想定しているようだ。
まず自動運転モードでハブ(物流拠点)からハブへの移動を行ない、その先(いわゆるラストマイル輸送)は遠隔地にいるドライバーが車両のコントロールを握って最終目的地まで向かうというものだ。
HVSは燃料電池トラックにより道路輸送の脱炭素を実現するだけでなく、ハブ間輸送を革新する技術開発の促進を目指している。
いっぽうフュージョン・プロセシングは自動運転システムの開発でイギリスをリードする。画像認識やAIによるルート計画など最新のCAVstarシステムを高度に車両に統合することで、人間のドライバーに代わる完全自動運転の実現を目指す。
イギリス政府としてはこうした実験的プロジェクトを支援することで市場に投入可能な先進技術の開発を促すとともに、スケーラブルに商業展開することで、グローバルな競争に勝ち抜きたい考えだ。
関係者のコメント
関係者のコメントは次の通り。
HVSのCEOを務めるジャワド・カーシード氏
「イギリスにおいて輸送の革新が起きています。HVSはコンソーシアムとともにイノベーションの最前線にいます。私たちは世界初の自動運転・水素燃料電池による大型トラックを開発しており、流通企業のASDAの協力のもとハブ間の輸送において実証します。輸送の自動化とその可能性が広く認知されることで、安全性の向上や燃料の削減といった効果により新しいビジネスモデルが構築されることを期待しています」。
イギリス政府のビジネス・エネルギー・産業戦略大臣、グラント・シャップス氏
「わずか数年の間に自動運転というビジネスは数百億ポンドの経済効果をもたらす可能性があります。また英国内だけで数万の新しい雇用を生み出します。政府の優先事項は経済を成長させることであり、そのためのまたとない機会です。
我が国の輸送業界やテクノロジー業界が世界的な競争に勝ち抜き、誰よりも早く革新的な商品を市場投入するために、私たちはサポートを惜しみません」。
フュージョン・プロセシングのCEOのジム・ハチンソン氏
「我々の市場分析によれば、輸送セクターなどの商用車は自動運転技術が大規模に展開される最初の市場になります。『ハブ2ハブ』プロジェクトは最新の『CAVstar』自動運転システムをお見せするのに最適な場所だと考えます。SAEレベル4の自動運転とドライバーによる遠隔オペレーションという組み合わせは、商用車にさらなる安全性と効率性をもたらすでしょう」。
ASDAで運行管理を担当するショーン・クリフトン氏
「弊社のフリートによる排出削減はネットゼロに向けた計画の重要な一部です。このため炭素排出を大幅に削減できる自動運転トラクタなどの革新的な技術には常に注目しています。環境へのインパクトを減らすため、今回のように同じ考えを持ったパートナーとの協業を今後も模索して行きます」。