ダンプをはじめとするトラックの過積載は、ひと頃に比べてだいぶ減ってきたとはいえ、取り締まりが緩くなるとみるや、またぞろ過積載車両が増えるなど、長年イタチごっこの様相を呈してきた。
最近では、トラック運送事業者やドライバーにも「過積載は悪」とのコンセンサスが醸成されており、「自分さえよければいい」という悪質な業者には仲間内からも厳しい目が向けられている。
そんな中、2023年4月1日から高速道路上や料金所に設置されている自動軸重計を活用した指導取り締まりが始まる。その概要をお伝えしよう。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/フルロード編集部、日本高速道路保有・債務返済機構
「過積載は悪」その理由
積載重量を超過した大型車両の通行は、橋梁をはじめ道路等にダメージを与えると共に、制動性能が著しく低下し、横転事故などの重大事故にも結びつきやすい。
過積載か否かは軸重がひとつの目安になるが、トラックの軸重は1軸10トン以下と決められている(4×2のエアサストラクタの駆動軸重のみ11.5トンに緩和)。
国が実施した実験によると、過積載の軸重20トンの車両1台が道路や橋梁の劣化に与える影響は、定積載の10トン車の約4000台分に相当するという驚くべき結果が出ている。
全走行車両のわずか0.3%(調査時)の軸重超過の大型車両が、道路・橋梁の劣化の約9割以上を引き起こしているというから、まさに「過積載は社会悪」なのだ。
取り締まりの概要
こうしたことから軸重超過は社会経済活動に重大な影響を与えるとし、高速道路管理会社6社(東日本高速道路、中日本高速道路、西日本高速道路、 首都高速道路、阪神高速道路、本州四国連絡高速道路)の高速道路において、従来の料金所等での指導取り締まり(俗に言うカンカン)とあわせて、自動軸重計を用いた指導取り締まりが実施される。
これは高速道路の料金所や本線上にすでに設置されている自動軸重計を活用した取り締まりで、これまでは軸重超過で走行した際には、表示板で「軸重超過」と警告し、繰り返す違反者には「車両制限令違反に係る違反点数通知制度」における「大口・多頻度割引」停止措置が講じられてきたが、4月からはこの違反点数の加算に加え、軸重超過車両に対し段階を経た警告・是正指導が行なわれることになる。
その警告対象となるのは、1回目の警告は軸重20トン超が1カ月のうち2回、軸重20トン以内が2年間のうち20回の違反回数に達した車両(高速道路6社合算)で、2回目以降は20トン以内の違反は変わらないが、20トン超は1カ月に1回で警告・是正指導の対象としている。
さらに4回目の違反では弁明の機会が与えられたのち、悪質であると判断されると日本高速道路保有・債務返済機構(日本の高速道路資産の保有・貸付け、債務返済の実行を行なう独立行政法人)のホームページ等で是正指導内容を公表。
それでも違反が続いた場合(5回目)は「特殊車両通行許可の取消」および「告発」が実行できる内容となっている。
今回の自動取り締まりによる警告は段階的な猶予を与えられたものであるが、対象高速道路を通行するほとんどの車両が取り締まりの対象になることから、過積載防止に効果を発揮しそうだ。
また、軸重超過は車両総重量が制限値以下でも、荷物の積み方が偏っている場合も超過と判定される可能性もある。自動取り締まりが始まれば、これまで以上に積載量厳守、さらに片荷などにも気を配る必要がありそうだ。
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