いつの間にか日本の車はハイブリッドだらけになったものだが、なかでも人気を集めているのが日産のe-POWER。エンジンを発電専用とし、モーターのみで駆動するEV的な走行感覚が受け、今やノートは日本で最も売れている登録車となった。
だが、実はこのe-POWER以上に凝ったシステムを持つのがホンダのハイブリッド「i-MMD」。2019年10月にも発売される新型フィットへの展開も確実視されるホンダの“本命”ハイブリッドは、何が優れているのか? e-POWERとの比較も合わせて解説したい。
文:大音安弘/写真:HONDA、編集部
3つあるホンダのハイブリッド 主流は“2モーター”式に!
2019年3月のジュネーブモーターショー(スイス)で、ホンダは2025年までに欧州で販売する4輪車は全て電動化車を目指すとした。
すでにホンダ全体でも2030年でグローバル販売の3分の2を電動化車とする目標が掲げられている。その主力を担うのは、EVではなく、ハイブリッドの「SPORT HYBRID」シリーズだ。2019年1月~2月の国内販売でも全体の55%がハイブリッド車なのだ。
ホンダのハイブリッドには、3タイプが存在する。フィットなどの小型車に搭載される1モーターにデュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)を組み合わせた「i-DCD」、インサイトやオデッセイなど幅広い車種に搭載される2モーターの「i-MMD」、そして、レジェンドとNSXのホンダフラッグシップ向けの3モーター+DCTの高性能な4WDシステム「SH-AWD」だ。
なかでも、今後、ホンダハイブリッドの主力と目されているのが、2モーターの「i-MMD」なのだ。
それを裏付けるように、ホンダは、2019年2月にi-MMDを主役としたメディア向け勉強会を実施。i-MMDの心臓部となるモーターを生産する静岡・浜松工場の見学では、より高効率化を図ったi-MMD用モーターの生産ラインの増設など、今後の需要増に向けた対応を確認することができた。
さらに、技術ディスカッションなどを通して、ホンダがi-MMDの搭載車に小型車を想定していることも見えてきた。そう、次期フィットへの採用である。
エンジンは発電専用じゃない!! e-POWERと違うi-MMDの作り
まず簡単に「i-MMD」の構造を見ていくと、エンジン、発電用と走行用のふたつのモーター、リチウムイオンバッテリー、制御システムで構成され、トランスミッションを持たないのが特徴だ。
走行モードは、バッテリーからの電力供給による「EVドライブモード」と、エンジンで発電した電力供給による「ハイブリッドモード」を基本とし、エンジンの主な役割は発電だ。
ここまでなら日産のe-POWER同様の“シリーズハイブリッド”となるのだが、i-MMDには、もうひとつの走行モード「エンジンドライブモード」が存在するのが大きな特徴となる。
このモードでは、駆動軸とエンジンをクラッチで直結させ、エンジンが主体で走行する。状況によっては、モーターのアシストも加わるので、パラレル式ハイブリッド車に近い存在でもある。
走行状況をシーン別に紹介すると、発進時や街中はEV走行、加速時などパワーが必要な時はハイブリッド走行、高速巡行では燃費が有利となるエンジン走行と、この3つのモードを巧みに使い分けることで、ハイブリッドシステムの持つ美味しいところを最大限活用しようとしているのだ。
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