選択肢が増えてきたZEVトラック
新規制のもと、ラストマイル配送などの民間事業者、州政府や地方自治体の車両、郵便配達などの連邦政府のフリート所有者は、2024年以降、ゼロエミッションに向けた移行を進めなければならない。
規制は大雑把に言うと次の4つに分かれている。
●メーカーに対する販売規制
●ドレージ輸送のZEV規制
●ZEV優先フリート
●州政府・地方自治体に対する規制
民間の物流利用で最も厳しいのは港湾のドレージ輸送(トレーラによる港からの陸送)を行なうトラックで、2023年11月より規制が適用され、対象となるトラックはすべてオンラインシステムに登録しなければならない。翌2024年1月より新規登録はZEVのみとなる。
既存の車両については、最小耐用年数(エンジンのモデルイヤーから13年、車両のモデルイヤーから18年、走行距離80万マイル)以内に限り継続使用を認めるというモデルイヤー計画法に従うが、ドレージ輸送では2035年1月以降のレガシートラックの運行は認められず、フリートの100%をZEVとしなければならない。
ZEV優先フリートは大企業と連邦政府のフリート(郵便配達など)が対象となるもので、ドレージと同様に最小耐用年数によるモデルイヤー計画法でレガシートラックを「フェーズ・アウト」するか、オプションのZEVマイルストーンによってZEVトラックを「フェーズ・イン」するかを選択する。
そのマイルストーン・オプションだが、車両のグループ毎に設定されるマイルストーンに従ってZEVの比率を増やして行く方式となる。車両グループ毎の差異は利用可能な技術と汚染物質の排出量の多い車両をターゲットとすることを考慮したためだ。
たとえば、箱車によるラストマイル配送だと2025年に10%、2028年に25%、2031年に50%、2033年に75%、2035年以降は100%をZEVとするというマイルストーンが設定されている。長距離輸送用のスリーパーキャブは2030年に10%、2036年に50%、2042年以降は100%などとなっている。
州政府や自治体向けの規制では、2024年から購入する新車の50%をZEV、2027年からは100%をZEVとする。ZEV優先フリートと同様のマイルストーン・オプションを選択することもできる。
CARBによると米国では今日、中・大型トラックだけで150車種のZEVが市販されているという。実際、この発表の前後にもトヨタのトラック用新型燃料電池パワートレーンがCARBのゼロエミッションパワートレーンに認定され、これを搭載する大型FCEVトラックが発売された。
厳しい規制ではあるが、市販のZEVも増えてきたので、CARBとしては実現不可能な目標ではないという判断があるのだろう。
2036年に内燃機関トラックの販売を禁止
ACFにはさらにメーカーに対して内燃エンジン(ICE)を搭載するトラックの販売を2036年を持って終了するという規制も盛り込まれた。これは、公的機関によるトラックのゼロエミッションに向けたコミットメント(つまりICEトラックの禁止)として世界初のものとなる。
総重量8500ポンド(約3.9トン)以上の道路輸送用の車両について、2036年(モデルイヤー)からメーカーは州内で販売する車種の100%をZEVとするというもので、一部の緊急車両や軍用車などは対象外だが、米国メーカーに限らず国外メーカーや輸入車も対象となる。
このように当局が規制のロードマップを明確化することで、大型商用車市場の(規制面での)確実性を保証するという側面もある。
調査によると2050年までにカリフォルニアの道路には170万台のZEVトラックが走ると推定される。これを支えるインフラとサービスも必要不可欠で、カリフォルニア州は行政機関横断的にゼロエミッションインフラに関する共同声明にコミットしている。
CARBの他、カリフォルニア州のエネルギー委員会、運輸委員会、カリフォルニア州運輸局、同総務部、州知事の経済・ビジネス開発室などが共同声明に加わっており、充電ネットワークや水素の充填ステーションなど、2045年までのカリフォルニアのゼロエミッション化に向けて基金の計画、展開などを推進する。
また、脱炭素が難しいセクターのために、州内の下水や食品廃棄物に由来するバイオメタンなど化石燃料ではないバイオ燃料の可能性について、2025年末までに当局に報告するように求めており、ZEV移行を完成させるためには更なるアクションも必要となりそうだ。
ちなみに自動車排出ガス基準は連邦政府レベルで決定するものだが、カリフォルニア州及びCARBは、米国環境保護庁(EPA)に対して州の裁量で新しい自動車排出基準を設定する免除を求めており、バイデン政権はこれを認めている。
州は住民によりきれいな空気を提供するための野心的な取り組みは、トラック交通の多い地域に住む人々の暮らしにとって特に重要だとする。これらの地域には所得の低い住人が多く住んでいるが、彼らが公害や気候変動の負担を多く背負っている現状は平等ではないという考え方によるものだ。
運送会社は車両の買い替えなどで短期的には負担が増える。いっぽう、運行・メンテナンスコストの低減が初期費用の高さを相殺することになり、長期的にはフリートオーナーも新規制により利益を享受するとした。
よく言われることだが、燃料費などを含むランニングコストの低さはZEVトラックの利点で、場合によっては州や連邦政府のインセンティブを考慮しなくても、総保有コストがICEトラックに匹敵する可能性がある。