ヴィッツ、デリカD:5ら「長寿車」が増える事情と生命線

■デリカD:5は実はマイナーチェンジ

 先ごろ新型デリカD:5が発売された。LEDヘッドランプを装着した個性的なフロントマスクを備えるため、フルモデルチェンジに見える。

 しかし実際は大幅なマイナーチェンジだ。現行デリカD:5は、2007年1月の発売だから、すでに12年以上を経過した。

大幅に変わった外観、エンジン、8ATの導入などフルモデルチェンジのイメージもあるが、実際はビッグマイナーチェンジになる。

 デリカD:5が存続する理由は、マイナーチェンジを受ける前の段階でも、堅調に売れていたからだ。

 2018年(暦年)にデリカD:5は1万3502台が登録され(1か月平均で1125台)、三菱車の中では、設計の新しいエクリプスクロスと同様に販売が堅調だ。

 今の三菱の店舗数は、500店舗を下まわるから(トヨタ4系列は合計4900店舗/日産は2100店舗だから大幅に少ない)、1か月に1000台以上売れれば、販売会社にとって大切な主力商品になる。

 しかもデリカD:5では、先ごろマイナーチェンジを行ったクリーンディーゼルターボを搭載する4WDが主力だ。

 売れ筋の価格帯は、400~430万円に達するから1台当たりの粗利も多い。そしてデリカD:5のユーザーには、何台もデリカD:5を乗り継ぐファンが多い。

 今の三菱にとって欠かせない基幹車種だ。デリカD:5には人気を高めた理由も多い。

大型ディスプレイなどをうまく取り入れたD:5。唯一無二の存在だけに今後しばらくは生き残るはずだ

 SUVに匹敵する悪路走破力、国産ミニバンでは唯一のクリーンディーゼルターボ、全長が4800mm以下のミニバンでは最も広くて快適な3列目シート、高めの着座位置が生み出す見晴らしの良さなどは、いずれもデリカD:5ならではだ。

 先ごろのマイナーチェンジでは、ボディ剛性を高めて走行安定性と乗り心地もを向上させ、エンジンは滑らかで静かになり、エクリプスクロスと同等の緊急自動ブレーキを作動できる安全装備も装着した。

 フルモデルチェンジに近い進化を遂げて設計の古さを払拭させたので、選ぶ価値をさらに高めている。

■ヴィッツの絶え間ない改良が新型に続く

 ヴィッツはトヨタを代表するコンパクトカーで、現行型は2010年12月に登場した。従って8年以上を経過する。

 次期型が新開発のプラットフォームを採用する絡みもあり、現行型は長年にわたって生産を続けている。

ヴィッツは長年愛されるコンパクトカーだが、いよいよ車名が消滅する。ヤリスになるまでのあとわずかの期間は存命だろう

 次期型は2019年中に発売するとされ、車名は海外で使われる「ヤリス」に変わるようだ。アクセラの次期型も、海外と同じく「MAZDA3」を名乗る。

 メーカーの販売戦略で、ヴィッツやアクセラのユーザーには、寂しい思いをさせることになってしまう。

 現行ヴィッツが8年以上売られているのは、次期型を大幅に刷新するためだが、その間には改良が積極的に行われた。

 フロントマスクは2014年と2017年に大幅な変更を受け、ハイブリッド搭載車や緊急自動ブレーキも加えた。特別仕様車も定期的に投入している。

これぞまさに完成形とも思えるコンパクトカーの実用性を極めたヴィッツの内装。ハイブリッドも追加され新型への布石は整ったか?

 そのために2018年の登録台数は、フィットやカローラシリーズと同等で、国内の販売ランキングでは上位グループに入る。

 基本設計が古くても、定期的に改善すれば、売れ行きを維持できる。逆に何もしなければ販売台数が下がり、車名も忘れられて存在感が薄れてしまう。

 販売を続けるなら、ヴィッツやデリカD:5のように商品に愛情を注ぎ続けることが大切だ。その気持ちは必ずユーザーに届く。

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