アルファード、ヴェルファイアも統合!? 日本の文化である兄弟車はどうなっていくのか⁇

■プリウス全店併売が流れを変えた

 ところがリーマンショックを経て、2009年に先代の3代目プリウスが4系列の全店併売になると(初代はトヨタ店、2代目はトヨタ&トヨペット店だった)流れが変わった。2011年のアクア、2015年のシエンタなど売れ筋車種が軒並み全店併売になり、4系列の区分を急速に形骸化させた。

 これに伴ってトヨタ車の販売格差も拡大している。プリウス、アクア、シエンタといった全店併売の車種が売れ行きを伸ばし、マークX、プレミオ、アリオンなどのセダンは登録台数をさらに下げた。

■トヨタは2022~2025年にかけて全車を全店で併売に移行

 そしてトヨタは2022~2025年にかけて、全店が全車を併売する体制に移行する。これは系列化の実質的な廃止を意味する。

 全店が全車を扱えば、販売系列による店舗の違いも消滅するからだ。トヨタ店には高級セダンのクラウン、ネッツ店にはコンパクトカーのヴィッツという専売車種があるから、店舗の個性化も図れる。全店併売は、系列を維持する上では致命的な痛手だ。

 トヨタの場合、メーカーの資本に頼らない地場資本の販売会社が多いから、4系列がそれぞれ異なる資本で構成されている地域もある。

 同じ地域に併存するトヨタ店とトヨペット店の資本が異なれば、簡単には統合できないが、取り扱い車種が同じであれば真っ向勝負の販売合戦に発展する。

 力の強い販売会社は全車を扱える強みを生かして売れ行きを伸ばし、そうでない販売会社は顧客を減らしてしまう。

 長い歳月を費やして築き上げた販売系列を、全店併売によって廃止に向かわせるねらいのひとつは、この淘汰だ。

 今のトヨタがパートナーとして求めているのは、クルマを売る販売会社ではなく、いろいろな業態に対応できる強い資本なのだろう。全店併売にすれば、生き残りを賭けた厳しい競争にさらされ、必然的に強い資本だけが残る。

 全店併売にする2つ目の目的は、メーカーの都合に基づく車種の削減だ。トヨタは車種数を減らして効率を高めることを考えており、まずは先に述べた兄弟車を廃止したい。そのためには全店併売にすると好都合だ。

 そして全店併売にすれば、兄弟車以外の車種を大幅に減らすことも可能になる。仮に4系列あって、各系列が専売車種を2つ持てば、それだけで8車種が必要になる。そこを全店併売にすれば、4車種とか5車種でも構わない。スバルやマツダは、もともとそういう売り方をしてきた。

 3つ目の目的は店舗の削減だ。取り扱い車種が系列化されていると、例えばトヨタ店を閉鎖すれば、その地域でクラウンやランドクルーザーを販売できなくなる。しかし全店が全車を扱えば、周囲の店舗で補える。

 このようにしてトヨタは車種と店舗数を減らして効率を高め、過当競争を生き抜いてきた強い資本と手を組む。

 地域別の営業体制にするのもそのためで、全店が全車を併売した後は次第に4系列もなくなり、トヨタと組む資本は新車の販売会社のほかにもカーシェアリング、新しいリースなどを幅広く手掛ける。

 この先にあるのが、移動のすべてをまかなえるモビリティカンパニーだ。少子高齢化も視野に入れて車種を減らし、販売系列も撤廃して店舗数も削減する。

 その代わり新しいビジネスも手掛けるから、各地域の資本も従来の販売会社ではなく、時代の変化に柔軟に対応できるモビリティカンパニーでなければダメだ。トヨタは自社がモビリティカンパニーになるだけでなく、地域別の資本にもそれを求めている。この前段階に前述の過当競争がある。

次ページは : ■4月1日からトヨタの東京地区のディーラーは4系列が1系列に統合

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