■4月1日からトヨタの東京地区のディーラーは4系列が1系列に統合
ちなみに東京地区の東京トヨタ/東京トヨペット/トヨタ東京カローラ/ネッツトヨタ東京の4系列は、2019年4月1日から「トヨタモビリティ東京株式会社」という新会社になった。
今後半年から1年ほどを費やして、店舗の外装も白と赤を基調にしたデザインに変わり、店舗の違いはなくなる。取り扱い車種も変わり、すでに全店が全車を販売している。
これら東京の4つの販売会社は以前からトヨタの直営だったため、トヨタモビリティ東京に統合するのも容易だった。ほかの地場資本の多い地域は事情が異なるが、東京を前例にすることはできる。
今後、トヨタモビリティ東京の運営で生じた問題点を解決していけば、ほかの地域の統合にも生かせるだろう。要はトヨタ直営の東京地区でテスト的な運営を行うわけだ。
問題はユーザーにとって「そういうトヨタの生み出すクルマ社会が楽しいのか?」ということだろう。最近はカーシェアリングが話題になるが、レンタカーと同様、自分で所有するクルマでないから愛着を持ちにくい。
「愛車」として大切に運転したり、洗車をするのは、愛車が自分のためだけに存在するからだろう。
兄弟車と販売系列は、この延長線上にあった。例えば愛車がプレミオであれば、それを扱うトヨペット店は、日頃から愛車の面倒を見てくれる主治医だ。クルマに関する相談相手でもある。
トヨタという大きな枠組みではなく、トヨペット店に落とし込むことで、親しみやすさも沸いてくる。1950年代から1970年代にかけて、トヨタをはじめとする各メーカーの系列化を築いた先輩達は、そういう暖かいカーライフをサポートしながらクルマを確実に販売できる系列を築いた。
それを「系列がなくなれば、全店で全車を買えるから便利」といった見方をするのは、早計であり浅はかに思える。系列を築いた先輩達にも失礼だ。
■軽やコンパクトカーのOEM車、共同開発による兄弟車は今後も残る
以上のような道筋を考えると、アルファード&ヴェルファイア、ヴォクシー&ノア、プレミオ&アリオンといったトヨタの兄弟車は、2022~2025年の全店併売をめざして、兄弟車は消滅していく。
具体的に言うと、現在アルファードはトヨペット店、ヴェルファイアはネッツ店の専売車種だが、これを2020年1月から、アルファードはトヨペット店とトヨタ店、ヴェルファイアはネッツ店とカローラ店という各2系列で併売され、2020年予定のフルモデルチェンジで、1車種に統合される見込みだ。
一方、ヴォクシー/ノアはフルモデルチェンジする2021年頃に1車種に統合される予定。
しかし軽自動車やコンパクトカーを中心にしたOEM車、あるいは共同開発による兄弟車は今後も残る。低価格で主に日本国内向けとなれば、薄利多売でひとつのメーカーだけでは採算が成り立たないからだ。
例えば先ごろ新型にフルモデルチェンジされた日産デイズ&三菱eKシリーズは、基本部分を共通化する兄弟車だが、2つのメーカーで販売するから売れ行きも伸びる。開発費用なども償却しやすいが、1社だけでは成り立たない。
そのためにさらに薄利多売の軽商用車ではOEMが活発だ。日産と三菱は軽商用車の開発を行わず、スズキのエブリイ&キャリイを仕入れて販売している。
マツダも同様だ。そのために製造メーカーのスズキを含めれば、4社が同じ軽商用車を扱う。
自社で開発や製造を行わないなら、取り扱いをやめる判断もあるが、そうなると車検や点検、保険などの業務まで失ってしまう。
またマツダがスクラムバンの販売をやめてユーザーがスズキエブリイに乗り替えると、そのユーザーが併用していたマツダデミオまで、スズキスイフトに変わる可能性が生じる。
スズキのセールスマンが有能なら、デミオもスイフトに乗り替えさせようと考えるのは当然だろう。販売会社は顧客を囲い込む必要があり、そのためにはOEM車が不可欠だ。
ちなみに4月19日から始めるニューヨークショーで発表されるデミオベースのヤリスは北米専用モデルで日本には販売されない。
以上のように兄弟車は、メーカーや販売会社の思惑が錯綜する中で生み出された。同じクルマを違う車名で販売するのは、一見すると商業主義的に見えるが、ユーザーのメリットに結び付くことも多い。
車種構成も販売系列も、シンプルにすれば良いという話ではない。メーカーはお客様が常に販売会社の先にいることを忘れないでもらいたい。
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