「ドライバーは別の仕事を運転中に?」
宇井 自動運転のデモンストレーションでドライバーがまったく他のことをしていましたが、実際そんなことが可能になると思いますか?
西村 技術的には可能だと考えています。ただ、それには電波法の改正や法整備を導入よりも先に行い、受け入れ準備を整えることが大前提です。
宇井 日本でもそうですが、物流を担うトラックドライバーの高齢化や、過重労働などが指摘されていて、この自動運転がそうした問題を解決する大きな社会インフラとして期待されているわけですね。
西村 先進国の多くは超高齢社会への対策が求められています。物流業に対してもそれは同じで、今回の自律自動運転によりドライバーの運転に対する肉体的/精神的疲労度が大幅に軽減されるとともに、運転から解放された車内でタブレットを使った事務作業ができるようになります。
これにより、総労働時間を減らすことができるため、経営者としてもTCO(総所有コスト)の削減が期待できるわけですから、各方面から大きな期待が寄せられるのは当然のことです。
宇井 グループ会社である三菱ふそうもこうしたダイムラーの技術を使い日本で取り組みそうですが……。
西村 日本ではトヨタが「オートメイテッドハイウェイドライビングアシスト」として2010年代半ばに、日産は「トラフィック・ジャム・パイロット」として2016年に、それぞれ高速道路で使用する部分的な自律自動運転を導入したいとしています。
商用車の世界でも実証実験は国総研を通じて長年行われているため、ダイムラーグループである三菱ふそうが、大型トラック「スーパーグレート」の次期型発表と併せて国内商用車初として導入するかもしれませんね。 日本の高速道路はアップダウンの数が多いだけでなく勾配率も大きいため、自律自動運転による運転操作の高効率化によって、熟練ドライバー並の燃費数値を新米プロドライバーがたたき出す、そんな時代になるのではないかと期待しています。
宇井 では、安全で快適な交通システムができるよう、見守りたいと思いますが、最後に大きな課題があるとしたらなんでしょう?
西村 その昔の「ボタンひとつで目的地へ」といった絵空事の世界から、今日の自律自動運転はかなり現実的な答えを持つようになってきました。しかし、運転により生じるあらゆる責任はあくまでもドライバーが負うべきものです。自律自動運転はどこまで技術が進歩しようともサポート技術であり、ドライバーの身体的な拡張機能に留まるべきものだと考えています。
- ※取材協力/ダイムラーAG・三菱ふそうトラックバス
- ※テストの模様はトラック誌「フルロードVol.14」(9月10日発売)でも詳報!
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