ステーションワゴンはセダンのスタイリングに荷室をつけたもので、車体高も低く、走行安定性も非常に高いのが特徴だ。
かつてここ日本もステーションワゴンが一世を風靡したことがあったが、今やその座はミニバンに奪われて、圧倒的少数派になってしまったステーションワゴン。
しかし、ドイツ車では圧倒的な存在感とともにステーションワゴンがわんさか存在する。
たしかに価格も高いけれど、メルセデスやBMWのミドルクラスまでにはしっかりとステーションワゴンがあるのだ。
なぜこのような現象が起こっているのか。それは販売的な失敗だけが問題ではないようです。
文:清水草一/写真:編集部
■1990年代の日本はステーションワゴン天国だった
思えば日本にも、ワゴンブームが巻き起こった時期があったっけ……。
きっかけは、1989年に発表された初代レガシィ・ツーリングワゴンの大ヒットだった。
それまでは「ライトバン」という呼び名で、商用という認識だったステーションワゴンが、アクティブな生活を実現するオシャレな乗り物になったのだ!
そのブームに乗っかるべく、トヨタはカルディナを、日産はアベニールやステージアを出し、ホンダはアコードワゴンをアメリカから逆輸入。
その下のクラスでも、カペラカーゴ、カローラワゴン、ウイングロードなどがよく売れた。
中でもカローラワゴンは、「カロゴン」という愛称で、手軽で実用的なクルマとして愛されたのでした。これらはすべて90年代の出来事です。
かくいう私も、長年ステーションワゴンを普段の足にしていました。ワゴンは走りはセダンと大差なく、ラゲージが広くて使いやすい分とっても実用的。ワゴンこそ、クルマ好きにとって最適な実用車だと、今でも確信しているのです。
が、21世紀にはいると、ミニバンブームに押され、ワゴンブームは急速にしぼんだ。
ミニバンはワゴンよりはるかに室内が広いし、7人とか8人も乗れる。日本人の興味は、クルマの速さから実用性へ、そして実用以上の広さへと移って行ったのですね。
現在は、セダン同様、国産ワゴンはまったくもって低調。現在、日本国内で売られているワゴンは、以下のモデルだけになった。
<トヨタ>
カローラフィールダー
<ホンダ>
シャトル
<マツダ>
アテンザワゴン
<スバル>
レガシィアウトバック
レヴォーグ
わずか5車種! 不振のセダンよりはるかに少なく、ほとんど絶滅危惧種状態である。しかもこのうち、売れ行きがまあまあなのは、カローラフィールダーとシャトルだけ。
あとは微々たるもので、レヴォーグですら月販1000台を切っている。もはやワゴンは、ほぼマニアための乗り物になった。
■輸入車ワゴンはセダンよりカジュアルでアクティブな存在
いっぽう輸入車では、特にドイツブランドで、ワゴンはまだ主力商品。各社独自の名称を付けて、「セダンよりカジュアルでアクティブな、ちょっと特別なクルマ」的な位置付けとなっている。
●ドイツ各社のワゴンラインナップ
<メルセデスベンツ>
Cクラスステーションワゴン
Eクラスステーションワゴン
<BMW>
3シリーズツーリング
5シリーズツーリング
<アウディ>
A4アバント
A6アバント
<フォルクスワーゲン>
ゴルフヴァリアント
パサートヴァリアント
これらに加えて、メルセデスにはワゴンの派生形とも言うべきシューティングブレークのランナップがあり、アウディはアバントをベースにしたバカッ速ワゴンのRS系を持つ。
ドイツ車では、ワゴンはある種のブランド的価値を保っているのだ!
ドイツ以外では、ボルボが依然としてワゴンに力を入れているが、イタリア勢はゼロ。フランス勢も現状プジョー308SWだけ。
イギリス勢は最近ジャガーが「XFスポーツブレーク」を出したが、他にはない(日本国内で販売されているモデルの場合)。
未だにワゴンが一大勢力を保っているのは、ドイツ勢+ボルボだけという状況になっている。いったいなぜドイツでは、ワゴンが支持され続けているのか?
理由としては、「ドイツ車は、世界の自動車業界における勝ち組だから」というのがあるだろう。
勝ち組=売れている。収益が上がっているということだ。儲かっているから、車種のリストラが必要ない。業績が悪くなると、あまり売れないモデルが真っ先に切られるが、ドイツ車の場合はそれがあまりないのだ!
実際、ドイツブランドでは、モデル数が増える一方だ。何が何だかわからなくなるくらいモデル数が増えている。それだけモデル数を増やしても儲かる。経営体力が強いのである。
ただ、これだけでは説明できない部分がある。
世界には、トヨタのようにドイツ勢以外でも大いに儲かっている自動車メーカーがあるが、トヨタはワゴンのラインナップを大幅に整理した。それはやっぱり売れなくなったから!
いったいなぜドイツ車のワゴンだけが売れ続けているのか? その背景には、アウトバーンの存在がある。
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