最近、「車を買い換えたら、小回りが利かなくなったように感じる」という声をよく聞くようになった。
それもそのはずで、小回り性能の指標としてカタログに記載される「最小回転半径」は、同じ車種同士で比較してもモデルチェンジ毎に拡大傾向にある。
背景には、単に車のボディサイズが大型化しているだけでなく、実は別の要素が変化したことも絡んでいる。なぜ、小回りが利きにくくなったと感じるのか? 過去と現在のデータからその原因を探る。
文:永田恵一
写真:HONDA、DAIHATSU、TOYOTA
小回り性能を左右する3大要素とは?
最小回転半径とは「ハンドルを一杯に切って低速で走行した際に、外側タイヤの接地部中心が描く軌跡の最大半径」である。
測定は意外にも路面の傾斜や滑りやすさ、タイヤの減り具合などのコンディションに左右されるため、実測ではなく国土交通省の定める保安基準の中にある難しい計算式によって弾き出される“理論値”だという。
最小回転半径を左右する大きな要素としては、以下の3つがあげられる。
【1】ホイールベース(前後輪の軸間)を含むボディサイズ
特にホイールベースに関しては、全長と全幅は同じでもホイールベースが短い軽トラックと長い軽バンで全く違うのが分かりやすい。
例えば、軽トラックのスズキ キャリイ(ホイールベース:1905mm)は最小回転半径3.6m、軽バンのスズキ エブリイ(ホイールベース:2430mm)は同4.1mと大きく異なる。
【2】ハンドルを一杯に切った際のタイヤの切れ角の大きさ
切れ角の大きさは、前輪が駆動しない後輪駆動車が有利。
そのため、ボディサイズが大きくてもタイヤの切れ角も大きい車種(FRのベンツやBMWなど)では、「ビッグセダンなのに小回りが利く」と感じることもある。
【3】幅や外径も含むタイヤの大きさ
小回りに関してはタイヤの幅、外径が小さい方が有利だ。
「最近の車は小回りが利かない」と感じる理由としては、タイヤサイズが大きいSUVやクロスオーバーが増えていることも挙げられる。
実際、インプレッサスポーツとそのクロスオーバーとなるXVの最小回転半径を見ると、インプレッサスポーツが全グレードで5.3mなのにに対し、幅と外径が大きいタイヤを履くXVは全グレードで同5.4mと大きい。
同じ車種で小回り性能が異なる場合も!
また、最小回転半径は同じ車種でもタイヤサイズによって大きく違うこともある。
例としてはトヨタ プリウス(後述)、トヨタ ヴィッツ(14・15インチ車/4.5~4.8m、16インチ車/5.6m)、マツダ デミオ(15インチ車/4.7m、16インチ車/4.9m)などがある。
特にヴィッツのように全幅が小さい車ほどタイヤによる最小回転半径の拡大は大きい傾向にある。大径タイヤを履くグレードを買う際には注意が必要だ。
最小回転半径に関しては軽自動車を除くと、5m以下だと「小回りが利く」、5.5mまでが「普通」、5.5m以上だと「小回りが利かないと感じ始める」というのが大まかな感覚といえるだろう。
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