同じ仕事は二度としたくはない
水野がクルマを開発するというと、GT-Rを凌ぐスーパーカーを作るのか!?と聞かれることが多いけれど、それは心外だと言う。
「ボク自身、同じジャンルの仕事は二度としない」というのが水野の持論。
日産在籍時代にレース活動はやり、成果を挙げた。GT-Rを開発したことでスポーツカーはやり遂げた。もうこの分野の仕事をすることはないだろう。
「GT-Rのモノとしての進化版のようなクルマを作ってもしかたがない。GT-R開発時には全身全霊を込めて世界になかった新ジャンルを創りだしたと自負している。大きなトランクスペースを持ったスーパーカーなんて、今まで世界中にない。
300㎞/hでアウトバーンを巡航して隣の人と会話もできるし、誰が乗っても安全に走らせることができる。GT-Rでは既存のスポーツカーやスーパーカーとは違う、新たなカテゴリーを創りだした。
もしボクがスーパーカーをやるのだったら、GT-Rとは異なるアプローチで一から新ジャンルを構築する。FMフロントミドシップパッケージングを提案したV35スカイラインやZなども同様だ」
では、どんなクルマを作るのか!?
「この中にコンセプト設計書類が詰まっているけれど、まだ見せることはできないよ」
気難しいイメージを持つ人も多いだろうが、水野は親しげな笑みを浮かべて冗談も言う。携えるカバンの中身をチラリと見せて、分厚い書類の束をポンと叩いた。
エンジニアリング開発拠点は日本発
水野の新たなオフィスは神奈川県厚木市にある。ここが華創日本株式会社の本社であり、また、開発の拠点となる。
「華創日本で基盤プラットフォームの開発や商品化プロジェクトの先行開発車を作っていく」
月の半分以上は厚木のオフィスで仕事をすることになると言う。残りの時間は台湾の本社に勤務する。
「コアとなる開発チームは最大でも20人以下で充分」
水野はGT-Rの開発時も、中核となる開発スタッフは15〜20人程度だったという。もちろん実車テストなどでは協力スタッフが数十名必要だし、具体的なエンジン開発やボディ開発などでは多くの専門のスタッフが必要となる。
「台湾の本社には有能な開発スタッフが2000人規模で在籍しているので、具体的な製品作りは彼らに引き継いでやっていく。台中には立派なプルービンググラウンドもあるし、ベンチテスト設備もそろっている。エンジン開発からシャシー開発、クルマ全体の開発まですべて台湾でできる。
だからボクがやるのはその前の過程。どのようなパッケージングで新型車を構築していくのかといった基礎となる部分を作り上げていく。この仕事は、お互いがチームとして和がとれた最大でも20名以下が最適」と水野は考える。
開発の拠点を日本に置くことで、日本や欧米の部品メーカーや協力会社と密接な連携をとりやすいというメリットもある。すでに多くの協力会社が水野の思いに応えるべく動き出している。
《本文中敬称略》
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