続々と登場する海外勢のプレミアムコンパクトたち。ゴルフ、アウディA1シトロエンDS4、プジョー308…。そしてここに登場するのがメルセデスベンツ Aクラス(2013年1月17日発売開始)だ。その実力やいかに??(本稿は「ベストカー」2013年3月10日号に掲載した記事の再録版となります)
TEXT/鈴木直也
PHOTO/平野 学
■まずは新しいAクラスの実力を知らなくっちゃ!
新型Aクラスを語る前に、まず1993年のフランクフルトでデビューした“ヴィジョンA93”に始まる「サンドイッチ・フロア・コンセプト」を総括しなくちゃいけないだろう。
ヴィジョンA93から2代目Aクラスまで継承されたこのユニークなボディ構造は、コンパクトカーの衝突安全性やEV/FCVへの適応性など、きわめて野心的なコンセプト。
ただのコンパクトカーではなく、ベンツならではの新しい価値観を提案する試みだった。
ただ、当初の思惑ほどEV/FCVの実用化は進まなかったし、コンパクト・メルセデスとしての市場評価もいまひとつ。
むしろ、Cクラスやそれ以上のラインアップ間に大きなギャップを作る結果となってしまった。
それゆえに、3代目Aクラスは過去のシガラミを捨ててゼロから作り直すことを決断せざるを得なかった。
コンパクト・メルセデスそのものの再構築、それが3代目Aクラスに与えられた役割といえるわけだ。
ゼロからの再構築はプラットフォームを見れば一目瞭然だ。
シングルフロアのコンベンショナルなボディは、全長が40cm伸ばされ、車高は16cmもローダウン。結果として、アウディA3などのライバルとほぼ同等の“普通の”プロポーションが与えられている。
デザインも一気にスタイリッシュ志向にシフトした。
スリーポインテッドスターを中央にドーンと配したアグレッシブなフロントマスクは、メルセデスラインアップの末っ子とは思えない迫力。AMGのオプションパッケージがよく似合っている。
パワートレーンは1.6L直噴ダウンサイズターボ(122ps)+7速DCTが基本となる。
これはBクラスですでにデビューしているものだが、先代Aクラス後期の1.7L+CVTに比べると、走りも燃費も見違えるほど向上しているのはいうまでもない。
コックピットにおさまると、先代のAクラスとはまったく異なるスポーティな感覚にちょっとビックリする。
フロアが低くなったぶんヒップポジションも地面に近くなっているのは当然なのだが、上下にうすいグラスエリアのせいでキャビンに“囲まれ感”があり、全体によりスポーツカーっぽい雰囲気なのだ。
そのいっぽうで、ヘッドレスト一体のハイバックシートを採用したこともあり、後席はちょっと窮屈な印象。ファミリー志向ユーザーはBクラスに任せて、かなり割り切ったキャラクター設定としているようにみえる。
ただし、いったん走り出すと過剰にスポーティなセッティングではなく、ドライバビリティと乗り心地が上質なことに感心させられた。
1.6Lターボは低速域から頼もしいトルクを供給し、7速DCTの歯切れのいいシフトフィールとともに軽快に加速。まずは、この基本的なドライバビリティがすごくいい。
また、ワインディングでちょっと遊んでやろうなんていうときには、パドルを使って小気味いいマニュアルシフトが楽しめるし、高速クルージングでは7速の2300rpmで130km/hというハイギアリングで燃費もかなりの好データが期待できる。
さらに、信号待ちではアイドル停止が賢く作動するなど、最新のパワートレーンとして文句のつけようがない優等生なのだ。
価格的にも、284万円からというエントリープライスはおおいにアグレッシブ。
すべてを一新して攻勢に転じたAクラスは、プレミアムコンパクトクラスに旋風を巻き起こすこと必至だと思ったね。
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