マツダが目指す方向は簡単ではない
モーターショーに展示された“ビジョン・クーペ”コンセプトモデルから想像するに、このクラスの直6FRラグジャリークーペの価格は、どう安く見積もっても最低500万円。おそらく、中心価格帯は700万円台に到達するのではないかと思われる。
このゾーンでは、率直に言ってマツダのブランドステイタスはゼロ。30年前にレクサスが高級車市場に参入した時には、はじめ「大衆車メーカーがなにを身の程知らずに……」と馬鹿にされたものだが、プレミアムブランドとして認知されるまでには、長く苦しい助走期間を覚悟する必要がある。
新たに登場する高級車商品群がきちんと利益をあげられるようになるのはかなり先の話。それまで、相当なやせ我慢を強いられるはずだ。
その苦しい助走期間を支える大黒柱が、新しい“”スモールプラットフォーム”であり、そこに搭載されるスカイアクティブXなどの新技術なのだが、こちらも要求されるハードルはかなり高い。
今後のスモールプラットフォーム車は、予想どおりの販売成績を達成したとしてもそれでは不十分で、同時にこれまで以上の利益率向上が求められる。
マツダの目論見どおり、値引きやインセンティブに頼らずにすむ商品力が備わっていれば問題はないが、世の中そんなに甘いものではない。それでも利益が出せるように、スモール系にはこれまで以上のコストダウン圧力が加わってくるのは不可避だろう。
マツダの新しい2プラットフォーム戦略はクルマ好きにはワクワクするような期待に満ちているが、経営的に見るとリスクの高い選択。ひとつでも歯車が狂い始めると、すべてがガタガタになるような怖さを秘めている。
それでも、こういった夢のある計画をぶち上げてくる自動車メーカーは、やっぱり日本ではマツダしかいない。ぼくら自動車メディアも、マツダのこのチャレンジには全力で声援を送りたいと思います。
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