マツダの命運を握る新型車「マツダ3」が2019年5月24日に発売。
日本名をアクセラからマツダ3へ変更し、世界統一車名としたことでも話題だが、もうひとつの注目は、世界初となる新エンジン「SKYACTIV-X(スカイアクティブ-エックス)」の搭載。他グレードから遅れて2019年10月に同エンジン搭載モデルが追加される予定だ。
SKYACTIV-Xは、ディーゼルエンジン並みの燃費性能と優れた動力性能を合わせ持つという画期的な新世代ガソリンエンジン。
となれば、最も気になるのは、やはり「燃費」と「動力性能」だろう。現時点で、日本仕様の燃費やパワー&トルクは未公表だが、ひと足早く欧州仕様のデータが判明!
SKYACTIV-Xは本当に「ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの良いとこ取り」なのか。欧州仕様のデータをもとに解説する。
文:渡辺陽一郎
写真:編集部、MAZDA
注目の燃費はディーゼルを越えているのか?
海外のウェブサイトを見ると、SKYACTIV-XのWLTPモード燃費が掲載されている。走行条件に応じた燃費数値を明らかにしているが、ここでは総合的な複合燃費でチェックしたい。
ファストバック(5ドアハッチバック)のSKYACTIV-Xは、6速ATの2WD車が、6.2L/100kmだ(16インチタイヤ装着車)。欧州では100km当たりの燃料消費量を示しており、日本の1L当たりの燃費表記に換算すれば16.1km/Lになる。
一方、欧州で売られる1.8Lクリーンディーゼルターボは、6速ATの2WDが5.6L/100km(16インチタイヤ装着車)だ。日本の表記なら17.9km/Lになる。
そこで疑問に思うのが「燃費が優秀」とされるSKYACTIV-Xの数値だ。16.1km/Lだから、ディーゼルの17.9km/Lを下回ってしまう。
しかも日本では、ディーゼルの使う軽油はガソリンに比べて1L当たり約20円安い。2019年6月下旬時点で、レギュラーガソリン価格が146円、軽油は127円ほど。
WLTCモードが実用燃費だと仮定すれば、1km当たりの走行単価は、SKYACTIV-Xが9.1円、ディーゼルは7.1円になる。
ディーゼルは1km当たり2円安いから、1万kmを走れば2万円を節約できる。SKYACTIV-Xは燃料代の節約では不利になりそうだ。
動力性能ではSKYACTIV-Xが優勢?
SKYACTIV-Xのメリットとして注目されるのは動力性能だろう。欧州のデータは、最高出力が180馬力(6000回転)、最大トルクは224Nm(22.8kgm/3000回転)となる。
ディーゼルは116馬力(4000回転)・270Nm(27.5kg-m/1600~2600回転)だから、最高出力はSKYACTIV-Xが64馬力上まわる。活発な吹き上がりが特徴だ。
逆に最大トルクは4.7kgm下まわるから、実用回転域の駆動力はディーゼルが強い。
そこでファストバックのSKYACTIV-X搭載車は、6速ATと併せて6速MTも用意した。6速MTであれば、高回転域を積極的に使ってスポーティな走りを満喫できる。
SKYACTIV-Xは、ガソリンとディーゼルエンジンのメリットを併せ持つパワーユニットとされる。圧縮着火方式を併用して、ほぼ全域にわたり希薄燃焼が行える。
さらに、モーター機能を備えた発電機を搭載して、マイルドハイブリッドとしている。減速時を中心に発電を行い、リチウムイオン電池に蓄えて、エンジンの駆動力を支援する。
アイドリングストップ後の再始動も行うからノイズも小さい。最近は軽自動車も、マイルドハイブリッドを搭載して人気を高めている。
このほかSKYACTIV-Xには、エンジンの力を使って過給するスーパーチャージャーも併用されて動力性能を引き上げた。採用するメカニズムの種類が多い。
この動力性能を通常の自然吸気ガソリンエンジンに換算すると、2.4L前後だが、WLTCモード燃費は前述の16.1km/Lに達する。ディーゼルの17.9km/Lには届かないが、燃料代は1.5Lのガソリンと同等か、少し悪い程度で済む。
ガソリンエンジンでは効率が優れ、燃料代が「ディーゼル並み」という表現はできるだろう。
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