RAV4の復活もC-HRの売れ行きに影響
このほか現行RAV4が2019年4月に登場したことも影響した。C-HRの後席と荷室は少し狭いが、RAV4なら充分な広さがある。しかもRAV4はハリアーに比べると野性的な雰囲気があって価格は割安だ。
以前ならC-HRを買っていたユーザーが、RAV4に移ったこともあるだろう。販売店によると「C-HRを目当てに来店され、車内の広さに不満を持ったお客様がRAV4を買うこともある」という。
以上のように外観の個性的なC-HRは、もともと発売直後に売れ行きが急増して、その後に下がりやすい車だった。
しかもトヨタのSUVにはコンパクトな車種が少なかったため、C-HRを待っているユーザーも多く、2017年に売れ行きが急増して2018年には下がった。2019年に入るとRAV4まで登場したから、落ち込みが一層顕著になっている。
ジワジワ売れて首位浮上! ヴェゼルが人気の理由は?
一方、ヴェゼルは同じコンパクトSUVでも、C-HRとは性格が異なる。外観はC-HRに比べるとオーソドックスで、インパクトは弱いが、見飽きない形状だ。
さらに、フィットやN-BOXと同じく燃料タンクを前席の下に搭載したから、後席はミドルサイズSUV並みに広い。荷室の床も低く、後席をコンパクトに畳むと、フラットで大容量の空間に変更できる。
つまりSUVでありながら、運転しやすいコンパクトなボディに広い室内という、フィットやフリードに似た特徴も持たせた。そのために少しオシャレなファミリーカーが欲しいユーザーにも注目され、息の長い人気を得ている。
(編注:さらに、2019年1月には1.5Lターボエンジン車を追加するなど、ラインナップの強化も行い、販売増に繋げている)
このような実用重視のユーザーは、新型車が発売されても飛び付くように買うことはないが、車検期間の満了に合わせて確実に乗り替える。従って需要が長期間にわたり保たれるのだ。
1993年に発売された初代ワゴンRなどを含めて、実用的な人気車には「熱しにくく冷めにくい」タイプが多い。ヴェゼルはSUVでありながら、N-BOXやフィットのような実用車の性格を併せ持ち、売れ行きにも持続性がある。
さて、落ち込みの目立つC-HRが、今後も販売を保つにはどうすれば良いのか。まずハイブリッドの4WDが欲しい。1.2Lターボの4WDは動力性能が充分とはいえず、燃費値はハイブリッドの約半分にとどまる。
スキー場など積雪地域への長距離移動を頻繁に行うユーザーにとって、ハイブリッドと4WDの組み合わせがあると魅力的だ。
また、1.5Lターボエンジンを搭載するヴェゼル「ツーリング ホンダセンシング」のように、スポーティなエンジンを搭載したイメージリーダー的なグレードを用意する手もある。
C-HRは高重心のSUVながら走行安定性が優れているが、1.2Lターボと1.8Lハイブリッドの動力性能は物足りないからだ。
マイナーチェンジの時に、効果的なバリエーション追加を行うと、前期型のユーザーが後期型に乗り替えることも多い。C-HRの需要は今のところ熱しやすく冷めやすいが、今後の展開次第で息の長い人気車になり得る。
メーカーが手間を費やして育てるクルマは、ユーザーにとっても選ぶ価値が高く、売れ行きを維持できる。数年後に売却する時も有利になり、ユーザーに大きなメリットをもたらす。
コメント
コメントの使い方